二年間にわたる欧州・中南米視察ツアーから: 世界の花産業に新しい流れ

世界の花産業は、ヨーロッパを中心に、ダイナミックに変わろうとしている。これまで30年間の主たるプレイヤーは、オランダ人であった。脇役がデンマーク人と英国人であった。いまそこに、ドイツ人とコロンビア人が割って入ろうとしている。やや詳しく論じることにしたい。


(1)花のソーシング(供給の動き)
 オランダ人は、前世紀の末から、自国で花を生産することが経済的にも環境面からも引き合わなくなったために、生産基地をアフリカに移転させてきた。ファッション産業でも、住生活の産業でも起こってきたことで、特別なことではない。
 昔から、ウガンダやジンバブエには、小さな海外生産基地があった。その後、政治的に多少の難点はあったが、環境的に条件が良いケニア、エチオピアに順次に移転していった。熱帯高地の利点を活かした生産基地の移転である。100ヘクタールを越す農場が、10以上も建設された。それは、経済的にも理にかなっていた。
 とくにバラ生産に関して、結果的にオランダの有力な生産者は、国内生産を放棄し始めた。昨年来から訪問した複数のバラ農場では、栽培面積の半分以上(7~8割)をアフリカに直接移している。アフリカの農場に投資した資本は、あくまでもオランダのものである。コロンビア、エクアドルに米国資本が入っていった状態とは、かなり異なる展開である。
 中南米では、初期の頃のカーネーション栽培は別にして、民族系資本の支配が強くなっている。エクアドルも同様である。そのため、あとで述べるように、切り花加工産業が、マイアミからボゴタに移転したのである。
 オランダのバラ農家が国内で作るのは、もはや保険(育種、鮮度、テスト栽培)の位置づけになっている。いずれ切り花は、オランダ国内では生産されなくなるだろう。実際、この5年でオランダ国内のバラ栽培面積は、4分の一になってしまった。育種基地も、続々と海外に移転し始めている。

 農場の海外移転で空っぽになってしまった温室は、鉢ものにシフトしている。輸送が困難な鉢物について、オランダは、ベルギーとデンマークに生産を任せていた。それが、切り花の海外移転がはじまったころから、熱心に国内で生産するようになった。しかも、ミニサイズのものに特化している。
 いま欧州市場(小売店)を見て歩くと、ミニのランやアンスリウムなどの鉢物の売場スペースが増えたことに驚くことになる。鉢物の短距離輸送とそのミニ化は、世界的な傾向である。これは、輸送費用と生活空間の必要的から生まれた、自然な結果である。
 なお、日本の花産業では、切り花だけでなく、鉢物でももっとミニ化を推進すべきである。この方向での市場開拓では、国際的に見てかなり遅れをとっている。また、このトレンドを支えているのは、効率的な物流システムである。輸送効率を高めないと、末端の商品価格を下げることができない。単価が高止まりしているかぎりは、充分な需要を刺激することができないからである。

(2)流通システムの再編成
 花きの流通システムにも、ドラスティックな変化が起こっている。世間一般では、一昨年のアルスメール市場とフローラホランド市場の合併は、トップダウンでたまたま起こったものと見られている。しかし、これは偶然とは言い切れない。
 昨年発表された、ドイツのランドガルト市場とオランダのフローラホランド市場の統合は、この10月に完了する。すべては、欧州統合と同様に、意図的に主体的に起こっていると見るのが自然な解釈である。
 それにしても、日本の市場統合の動きは、あまりに遅い。どうしたことだろうか?世界の基準から見ると、あまりにもスピード感がないのである。

 今回訪問したエッセンのIPM(国際花き見本市;1月28日)で、「ライン・マース市場」(両社の合併市場@ヘロンゲン)の担当者(アーツ氏)と話すことができた。同市場は、「7月に完成予定だったが、大雪などの影響で10月から稼動を始める」(アーツ氏)。
 これまで2箇所に分かれていたドイツ国内の鉢物と切り花の市場が、一箇所(ヘロンゲンの新しい建屋)に統合される。「セリ時計は6台から8台に増設されるが、フローラホランドとはセリが完全に統合されるわけではない」とのこと。
 ドイツのランドガルト市場は、オランダと同様に生産者が組織する市場(3000農家から構成)である。いまだに、ドイツの花き生産者が元気なことを知って驚いたものである。わたしは、昨年のIPMの訪問でその存在をはじめて知った。
 「ブレーメ2000」(ドイツ最大の花店チェーン)の販売データを見ると、30%以上が鉢物・花壇苗である。切り花の売上構成比は、わずか37%である。日本やイギリスとは大違いである。ドイツの花の需要構造は、花きの国内市場の生存にプラスに作用している。
 ドイツの生産者の半分以上は、鉢物と花壇苗、花木類の農家である。切り花では、草花類(サマーフラワー、球根切り花類)の生産者たちである。しかも、ドイツの花加工産業は、この会社が握っている。大手のディスカウントストア、アルディのバックには、ランドガルトの花束加工会社が控えている。
 将来的にも、国際花産業の中で、オランダが主役であり続けるのだろう? 花きでも、EU統合が実現するわけである。そのヘゲモニーは、もしかするとドイツの市場が握るのではないかとも噂されている。

 欧州の流通システムの変化は、フローラホランド市場が、自国内の7つのオークションを完全統合しただけでは終わらない。最近の特筆すべき動きは、「TFA」(アフリカ産切り花の専門オークション:テレフラワーオークション)のフローラホランダによる買収劇である(山本清子さんからの情報:昨日)。
 この事実が示すところは、重大である。オランダのフローラホランド市場は、もはや生産者が組織する市場ではなくなりつつあるということである。この動きが、最終的にオランダにとって吉と出るか凶と出るかはわからない。
 しかし、同市場の経営陣は、フローラホランド市場をグローバルな「花のマーケティング・カンパニー」に変貌させようとしていることは明らかである。アフリカの産地を、オランダ市場の傘下に統合しようとする意図である。いまのところは、スイスとフランスは、オランダの卸加工会社の影響下にあると考えてよいだろう。独蘭間でのセリ機能の統合は、これまでと同様に、オランダにとって最大の市場であるドイツを、引き続き影響下に置くことができるかどうかにかかっている。
 問題は、生産者のオークションから出て、国際的な花の商社になろうとしたときに、フローラホランド市場がその強みを発揮できるかどうかである。対抗軸には、各国の小売りチェーン(英国、フランス、ドイツ)と花加工会社(ほとんどはオランダ資本)の存在がある。国内よりも寡占状態がはげしい。鉢物では、デンマークとドイツのガザ(鉢物組合)が立ちふさがる。
 また、コロンビアの花産業が、欧州でプレゼンスが目だってきている。例えば、フランスのランジス花市場では、コロンビア産の花が、オランダを経由せずに、直接中卸に入っている。英国でもフランスでも、スイスでも、同じような花の流れが観察できた。
 フローラホランドが流通のハブに居ることは確かだが、切り花の国際調達が進めば進むほど、他方では、流通の中抜きが進行することになる。流通加工機能が、産地と消費地に分散してきているので、物流・商流のハブとしての役割は次第に低下する。
 オランダの支配が及ぶアフリカの農場は、花束の加工機能をもっていない。単品種に特化したモノカルチャー型のバラ農場だからである。それに対して、コロンビアは、栽培と加工の機能を同時に保有している。取り扱う花の種類も豊富である。国際的な産地・加工基地の役割を担っている。コロンビアは、いまや世界最大の切り花生産国である(1200億円+)。
 将来的に、育種はどこで行われるのだろう?世界の育種基地は、オランダであり続けるのだろか?この点が、花産業の未来を思考するヒントになる。 

(3)チェーン小売業の展開
 数日前の欧州旅行記でも記したように、世界の花小売チェーンでは、英米型の「セルフサービス方式」の売場展開が主流だった。それに加えて、仏・独・スイスで見たような「フルサービス方式」の店舗が増えてきている。これは世界的な傾向かもしれない。日本はまだ、典型を見出せないでいる。
 チェーン小売業では、ある販売規模(日販10万円)を超えたところで、人的販売の売場が成立可能になる。米国でも、プレミアムSMでは、有人で花を販売していた。実際に、テキサスの「セントラルマーケット」(HEBのプレミアムSM)では、有人で花を販売していた。なお、日持ち保証を実施している本体のHEBでは、セルフ販売であった。
 ある条件を満たせば、フルサービスの売場が量販店でも主流になるかもしれないのである。有人店舗の優位は、言うまでもないことであるが、発注権限を店舗側に持たせていることである。ローカルなニーズへの対応、主体的な仕事への取り組み、ロス率の管理(インストア加工)で、有人売場のほうが有利である。
 もっとも、ブレーメ2000のように、有人販売ではあるが、店側に発注権限がないパターンもある。わたしが、欧州旅行中に「花屋のしまむら」と呼んだゆえんである。店側には発注権限を持たせず、販売と店舗の忠実なオペレーション(低コスト経営)に徹するようにシステムを設計している。ギフト用の作業は受けない。受注を店舗で受けて、ベルリンの加工センターから花束を発送する。
 ドイツ人は、コスト意識が強い。これについては、アルディの花販売の件で、別途に議論してみることにする。(別のブログで)

 日本では、セルフ売場(とくに委託販売方式)が圧倒的に有利と考えられている。わたしもセルフの売場を主体に物事を考えていた。しかし、規模の経済性が働くならば(平均日販10万円以上の売場構成)、SMでも販売員ありの売場つくりが理屈にあっているかもしれない。
 従来から、花売場を惣菜売場や鮮魚売場のアナロジーで考えると、インストア加工ニーズへの対応は、有人販売になる。どちらを選ぶかの選択は、効率と効果のトレードオフである。どのような条件でも、単一の答えはないのかもしれない。
 この点に関しては、わたし自身もまだ、明確な答えを用意できていない。ただし、チェーン小売業で、高い効率を達成するには、3つの条件が必要だと考えている。
 ①200店舗以上の店が必要なこと(出店地域が集中していれば100店舗でもOK)、
 ②ドミナントで店舗を展開すること(加工と物流効率のため)、
 ③花の販売が店舗売上の1%を超えること(できれば1.5%)、
が条件である。
 標準的なローカルの食品SMでは、一店舗あたりの売上が20億円(15~30億円)である(一日の来店客数が5千人前後)。1%は年商2000万円(日販6万円)、1.5%は年商3000万円(日販9万円)。これをどのように実現していくかである。
 また、ブルーメ2000の販売組織を、日本のチェーン店経営にアイデア移転すると、標準的なコンビ二の半分の店舗面積(15坪、50㎡)で花を販売する方式が成り立つことになる。これは、(6)で詳しく述べることにする。

(4)消費者ニーズ
 欧州の小売店チェーンを、2年間見て歩いていた。英国のSMにはじまり、オランダ、ドイツ、フランス、スイス。そして、米国のスーパーマーケットの3種類のパターン(プレミアムとレギュラー、ディスカウンター)である。どの国を見ても、花の種類は、欧米よりも日本のほうが豊富である。専門店も量販店もである。
 そこで見間違えていけないのは、欧州より日本のほうが「花店の品揃えは豊富で」「消費者を喜ばせている」と短絡的に結論づけてしまうことである。結果は、それとは逆なのではないかと思う。「定番の単品をもっと安く販売すること」が、より消費者から求められているのではないだろうか?
 品揃えの豊富さは、日本の自然が与えてくれたものである。われわれ人間の創意工夫から生まれたものではない。何のイノベーションもそこには見当たらない。単純な売場でありながら、価格的に人々の満足度が高められる。それでいて、ミグロのように季節性(旬)を取り入れ、気持ちを飽きさせることが無い。そんな売場がほしいものである。
 日本の植物相の豊かさに、日本の業界人は目を奪われている。感性でものを考えるべき場面と、経済的に冷静に判断すべき側面を仕分けすべきである。きちんとした品質の低価格な花を提供する機会と義務について、もっとわれわれは深刻に考えるべきである。
 花業界あげてのプロモーションに取り組むことも大切である。だが、それ以上に優先すべきは、価格と物流コストを引き下げることである。同時に、品質管理をきちんとすることではないのかと思う。

 春先(1~2月)に欧州の市場を見て歩くと、チューリップの価格の安さにびっくりする。専門店で一束10本入りで3ユーロ(450円)、スーパーならば2ユーロ(300円)である。日本だと切り花1本が球根の値段である。日本の卸価格が、欧州の小売価格である。バラも同じである。一本単価は、輸入品だからだろうか、チューリップと比べて大してかわらない。
 彼我の差はどこから生まれてくるのだろうか? 答えは案外と単純である。売れ筋商品のサイズの問題である。欧米のバラは、中心が40センチである。場合によっては30センチの輸入品もある。生産コストも物流費用(積載効率と販売効率)も、丈が短ければ短いほど安くできる。生産、物流コストは、人件費が高いのに日本の半分である。
 大分メルヘンローズの小畑社長によると、例えば、キクのサイズを半分にしてしまえば、生産コストを現在の半分にすることができる。30~40センチのキクを販売できればの話ではある。バラも同じである。柳井ダイヤモンドローズの中田さんから、小畑さんと同じ話を聞いた。そのためには、育種と栽培の方式を変えないといけない。不可能なことではない。
 バラもカーネーションもキクも、消費者目線からは、30~40センチで充分である。自宅用に、5本立ちの鉢物のランは不要である。小さな家のリビングでは、置く場所も無い。事務所でも同じである。小さく作れば、インテリア小物として使えるし、切り花感覚で購入できる。欧州のように、一鉢980円~1480円で、一ヶ月は持つ商品が求められている。

(5)スーパーマーケットの標準モデル
  小売りの課題は、価格と品質のトレードオフにある。欧州視察で確信したのは、小さなサイズで花を作って、値段をさらに25%程度下げることである(現状では1本100円)。小売りで1本75円。これでも、欧米の量販店よりは単価が50%ほど高い。スイス・ミグロの水準である。3本束で240円、5本束で380円。5本束3パックで千円の値付けが可能になれば、理想である。商品の中心は、産地パックの単品束でよい。
 農家の取り分は、これまでとほとんど変わらない。むしろ利益幅は多くなる。短径多収の切り花を栽培することで、生産コストは低減できるからである。ある程度、品種を絞り込んだほうが、栽培効率は高くなる。ただし、年間を通しての栽培品目を増やしたほうがよいだろう。
 とくに消費地に近い首都圏近郊では、年間を通して、複数品目での「単品栽培ローテーション」が有利になる。この栽培体系で組むほうが、リスク管理が楽になる。小売業のMDに連動がしやすいはずである。種子系ではとくに、あいた温室を使いまわすのである。
 販売数量は50%増加するので、農家収入は25%ほど増える。こうした栽培方式は、すでに、野菜の根菜類や葉物類で実現している。量販店の売場は、農家のFCシステムが支えている。花でも同じ形態がありうるだろう。レタスと水菜を栽培する大規模農家が、カットパックの野菜サラダを作っている。ごぼうとニンジンを栽培する農家が、合同でキンピラごぼうの加工場を運営している。皆知っているlことであるが、花束でも擬似的な垂直統合はできる。
 その前提は、小売り段階で、来店客の3%(欧州は4~5%)が花を購入してくれることである。平日の来店客数が3000人(平日)であれば90人、土日が5000人であれば150人が買上人数になる。花部門の客単価が500円(週末600円)で、平日の日販は4、5万円。土日は9万円。これならば、有人でも売場を運営できる。
 余分な説明であるが、来店客の購買単価が1500~1800円であれば、花のバスケットシェアは30%である。約3%の人が花を購入すると、全店では約1%が花の売上になる。目標PI値(100人あたりの買上点数)は、5~6前後になる(現状は、2~3である)。
 商品の回転があがると、自然にロス率は減る。そして、取扱量が増えて物流の効率が高まる。この良き循環を作ることこそが、日本の花産業に関わる人に求められていることである。

(6)専門店チェーンの標準モデル
 専門店チェーン店では、元々が有人である。スーパーでの公式は、つぎのように変更すると良いだろう。
 店前の通行人数を、来店客数に置き換えてみる。通常は、繁華な場所で1~2万人、普通の通りでは、一日の通行人、5000人~1万人の間である。一時間あたりでは、200人~400人。人口密度が高い日本でもそんな程度である。
 ブルーメ2000の計測データ(もっとも売れている20店舗)では、店前通行客の4~5%が店内に入ってきていた。一日の来店客が800~1000人で、客単価が650円。日本のコンビ二と、ほぼ同じ来店の構造である。日販は約50万円。
 日本の花屋(チェーン)では、通行人の0.5~2%しか入店しない(平均が1%)。だから、店前の通行人が一日1~2万人の繁華な場所(エキナカや一等立地)でしか、花のチェーン小売業は成り立たない。ところが、値ごろ感にある標準的な花束(一本80円)が提供できたならば、通行客の3~4%が入店する可能性がある。ブルーメ2000やSCに入っているテスコでは、4~5%がノルム値である。
 計算してみよう。駅前商店街や近隣型ショッピングセンターの前を、何人の人が通るだろうか?場所によるが、平日で5000人~1万人である。その3%が入店するとしたら、一日の来店客は150~300人。客単価は、コンビ二並に650円とする。普通の立地で、花が手軽に買えることが条件である。平日の売上は、10~20万円。年商で4000~5000万円。
 有人で贈り物ギフトもあつかうならば、客単価は1200円である。店舗コンセプトと立地によっては、20万~40万円。年商は、7000万円~1億4千万円。現在の青山フラワーマーケットに近い数値である。しかし、青フラの入店率は、繁華な場所で1%前後である。それが、ふつうの駅前立地(一日の乗降客で3万人)か、一日の来店客が約1万人のNSC(近隣型SC)で実現できるという計算である。
 結論ははっきりしている。かつて、西葛西のフラワーカワイや花良品の藤沢店では、平日でも30万円以上を売る店があった。年商ベースで1億円を超えていた。それほど特殊な立地ではなく、価格が手ごろで入店率が高かったからである。
 その条件は、いまでも変わってはいない。供給条件は、当時よりも改善されている。システム的に物事を仕込むことができる経営者があれわれたならば。その局面は変わりそうである。

(7)日本における市場統合
 大都市にある中央卸売市場は、少なくとも同じロケーションにある荷受会社同士は、政策的に合併することが望ましい。地方市場との市場間連携は、緩やかなものであってもよいが、すくなくとも物流システムは合理化すべである。
 国内の物流費が高すぎるのである。地方の高速道路が無料化されることと、産業用のトラック輸送で価格に上限が設けられることは、農家と市場にとっては朗報である。政権交代の賜物である。自給率を高めるために、輸送インフラに政府は投資をすべきである。
 これまで、わたしが何度も述べてきたように、地方市場は、地域の花農家を組織するか、地方小売チェーンの加工センターに特化するかの選択をするしかない。
 とくに大規模な農協の集出荷センターは、コロンビアのように加工施設を持つことを考えるべきである。そうでないと、国際競争に耐えられない。成田や関空では、輸入商社が加工センターを運営しはじめている。コロンビアからは、輸入花束が持ち込まれる気配もある。量販店向けの1500億円市場(将来は3000億円)を制するのは、海外組になってしまう。
 そのとき、国産花きの自給率は、限りなく下限値の50%に落ちていく(3割は鉢物である)。スイスのデータが参考になるだろう。切り花では、草花類の20%が国産の下限値であった。地方市場と農協が踏み留まらないと、輸入品が切り花では80%までになってしまうということである。
 輸入品が5割を超えると、セリ市場の存続はむずかしくなる。量販店と専門店チェーンへの直流ルートができあがってしまう。具体例として、水産品の流通を見たらよいだろう。魚の卸市場は、専門商社と量販店が支配している。
  
 欧米の花産業を、2年間にわたり仔細に観察してきた。そうした観察から言えることは、国内の市場への希望と提案である。日本の花市場(荷受会社)は、国内の産地とともに生きる道を考えて欲しい。とくに大手市場は、国内産地を巻き込んだ「マーケティング・カンパニー」に脱皮しないと、国際競争で敗れてしまう。
 国内産地が販売先を確保するために、さらに踏み込んだ施策を提案してほしい。例えば、産地加工の推進、量販店のMD委託、加工販売会社の設立などである。地方に支店を作るよりも、もっと優先すべき仕事がある。
 別の選択肢は、フローラホランドのように、国際的なプレイヤーになることである。アジアの産地(輸入商社)を、オランダ式に買収することも視野に入れるべきである。本来は、海外に踏み出すべき市場が、現状では、国内ばかりを見すぎているのではないだろうか?