東アジアのマーケティング(#3): コンビニエンス・ストア業界(3)、韓国編

東アジアシリーズ、コンビニエンス・ストア業界の3回目は、韓国編である。韓国は例外的に、アジアの国ではファミリマートが強い国である。出店規制の隙間を縫って、コンビ二がミニスーパー的に発展した点でも、日本の20年前と事情が類似している。経営効率指標は、台湾と同様に日本の3分の一である。


<韓国のコンビ二市場>
・2007年の韓国におけるコンビニの売上高は、5兆ウォンに達している(1ウォン=0.1026円として、約5220億円)。店舗数は10,200店、1店当たり人口は4,827人で、台湾のほぼ2倍である。韓国のグローサリー小売業態の中でコンビニの占める割合は8.9 % (2007年)とみられる。(”Convenience Stores–South Korea”, Euromonitor International, 16 April 2008(データベース)、 ”Retali–South Korea”,  Euromonitor International, 16 April 2008(データベース)より算出)

<コンビ二の経営指標>
・韓国のコンビニの1店舗当たり年商は約5億ウォン、5,130万円(日本は2007年1.8億円、参考:韓国の1人当たりGDP(PPP)は2万4,600ドル)。台湾もそうであるが、経営効率指標は、アジアの新興国が日本の約3分の1になっている。
・取扱品目数は2,773品目(2004年のデータ、以下同)で、1年間の新商品導入率は53.9%と新陳代謝が活発である。ほぼすべてのコンビニで酒、タバコを扱い、これらの売上構成率は酒8.2%(マージン率31.5%)、たばこ37.0%(マージン率11.5%)にのぼる。一方、ファストフード類の売上比率は5.7%(マージン率34.8%)と、日本のコンビニの4分の1に過ぎない。平均来客数は1日あたり584人、客単価は264.8円と、日本の半分以下。(『韓国の流通・外食産業 2005年版』アジア産業研究所、2006年参照)

<コンビ二のチェーン>
・韓国のコンビニでは、「ファミリーマート」が業界トップである。2007年、3,700店(FCがほとんど)、売上高16億3,800ウォン(約1,681億円)、市場シェア(売上高)32%。店舗当たり年商は約4,670万円程度とみられ、業界平均より低い。次いで、「GS20」2,800店、売上高1,566億円、シェア30%、「セブン-イレブン」は1,750店で697億円である。「サンクス」と業務提携していた「By the way」1,020店は499億円で、「ミニストップ」は1,012店で425億円と続く。(Euromonitor International, ”Convenience Stores–Taiwan”, May 2008 (GMIDデータベース)および企業のHPセブン-イレブンのデータは日本のセブン-イレブンの発表値 Euromonitor社は1,610店としている 上記のシェア・売上高データはあくまで目安)。
・「セブン-イレブン」のエリア契約は、米セブン-イレブンとロッテ系の「コリア7」間でなされたが、経営技術の移転にはイトーヨーカドーが関わった。2001年に「ローソン」の店舗を買収している。直営比率が高い。
・日本のイオン系「ミニストップ」は、1990年に韓国進出。人材養成を優先、日本的なサービス研修を行い、顧客満足度を上げる戦略をとった。店舗数は、2007年2月期末969店、2008年2月期末は1,012店。 

<韓国におけるコンビニの位置づけ>
・韓国小売市場の自由化は1989年から段階的に行われ、1996年に完全自由化された。売場面積や店舗数の制限がなくなった。1997年には外国人の土地所有も可能になった。一連の自由化を先取りしたのはコンビニであった。コンビニは、百貨店と在来市場など零細な生活維持型小売業の中間の市場にうまくはまった。1989年、米国の「サークルK」が開店して以来(提携)、「セブンーイレブン」、日系の「ローソン」や「ファミリーマート」が参入、韓国へコンビニ業態を移転した。(金亨洙「海外コンビニエンス・ストア産業における小売技術の国際移転に関する一考察」『久留米大学商学研究』、2005年6月号、第11巻第1号、27-58頁)
・韓国では、李朝の両班(やんばん)の教養重視・小売業蔑視の文化的背景があり、コンビニ加盟店希望者が増えず、1998年まで2,000店程度で停滞していた。しかし、韓国のIMF危機でリストラされた人材が小売業に向かい、コンビニ店舗数が急増、2001年には4,000店近くと倍増した。日本のコンビニは中食市場開拓など市場への対応で成長したが、韓国ではオーナーの事情がコンビニの成長を支えてきた経緯がある。加工食品・飲料やタバコを売る「よろずや」(「韓国スーパー」「クモンカゲ」)との差異化や、オリジナル商品開発など、韓国のコンビニはまだ多くの課題を抱えている。(川端基夫「第4章 韓国の流通市場」『アジア市場のコンテキスト–受容のしくみと地域暗黙知. 東アジア編』、新評論、2006年)