【研修ツアー報告書】「JFMA韓国研修ツアーレポート2025」(6月24日~27日)

「JFMA韓国研修ツアーレポート2025」(6月24日~27日)   V2:2025年6月28日
 文・小川孔輔(JFMA会長)
 
0 はじめに
 このレポートは、研修ツアー中にわたしが手書きでメモしたものを、一部ですが文章化したものです。データに関しては、公式の生産出荷データは、@韓国農水省(オークション)で入手したものだけです。小川の推計によるものですので、あくまでも参考です。
 韓国花産業の課題は、「ソウル市中心の小さな消費産業をどのように伸ばせるのか?」
ちなみに、「Korea Wave」というサイトで、韓国の1人当たり花消費が1500円となっています。韓国の人口は、5121万人(首都ソウル、964万人)。単純計算で、切り花消費額は、768億円(2024年、推定)です。国内生産(268億円)と輸入(112億円)を合わせると、出荷額はその半分の380億円程度と推計できます。輸入比率は、約30%となります。
以下のデータは、この数値とほぼ整合的です。

1 高速バスターミナルビル(仲卸店ビル)
① 500社の切り花仲卸店(従業員2人〜3人)
 日販10万円(一店舗当たり、年商約3000万円)
 バスターミナル全体で、花の取扱高(卸出荷ベース)は約150億円
 (輸入の転送品も含まれている、国産は8割、輸入が2割? 目視)
② ソウル市内の仲卸ビル全体
 国内産切り花の年商120億円(そのうち、輸入30億円?)
③ 手数料15%(仲卸の取り分)
④ ターミナルからバス便で地方の花店に配送
 物流の結節点として、ソウルの役割が大きい
 (人口の集中度は、ソウル市内2割だが、郊外も入れると4割近いのでは?)
 
2 国産切り花市場(農水省統計)
① オークション1991年開設(ソウル市場)
 2022年で、全国160億円
原則として、輸入切り花は扱わない(仲卸エリアでは扱っていた)
② 全国7ヵ所のオークション
 ソウル卸市場が62%でダントツ(約100億円)
③ 家庭消費は小さく、イベント需要がほとんど
 市場外流通が75%(推定=170+α/270) (αは、その他の直送分)
 ソウル市内に入ってくる花の流通金額は、だけを見ると、ターミナル120億円(市場外)、
 輸入50億円(市場外)、オークション100億円(市場流通)。
 輸入比率30%(伸びている)
④ 韓国の花市場の特徴
 オークション手数料7%
 束売り中心、D2C&B
 国内生産出荷額は、約400億円?
⑤ソウル市内、輸入品70億円
 国産切り花100億円(オークション)
 +180億円(ターミナル)=350億円 
 
3 輸入切り花
① WORLD FLORA
 会社の年商22億円(2024年)
 輸入金額、7.2億円
 社員数70名、デザイナー多数
② 事業領域
 ・ホテル、ブライダル事業(2002年〜)
 ・花店向けオンラインビジネス(2018年〜)
 ・国内50%、輸入品50%
③ 韓国の輸入切り花(2024年)
 ・112億円(マム29%、カーネ23%、アジサイ22%、バラ16%など)
 ・品目の上位集中度が高い(市場が未成熟、ビジネスユースが主体)
 ・コロンビア40%、中国22%、ベトナム17%(マムと現地束作り)、 
  オランダ9%、エチオピア5%
④ 日本からの輸入
 ・1億円(WORLD flora2千万円)
 ・スイートピー,ラナンキュラス,バラ
  流行に流されやすいことの証拠?
⑤ 物流システム
 ・午後9時で受注締め
  夜間配送、早朝着荷,配送料が安い、
 ・配送費260円(BOX) 安い!!
  国土が狭いことが、幸いしている(夜間配送、早朝着荷、物流2024年問題がない!)
⑥ 日本への輸出(バラの事例)
 ・2015年、補助金でオランダ式温室建設
   3千万本を輸出(主として、日本?)
 ・2024年、2百万本を輸出(激減している)
  
4 Kukka(花のEC企業)
① デジタル&カフェフラワーショップ
 年商15億円(2024年)
② 顧客ベース
 ・オンライン100万人(全部が顧客とは思えない)
 ・EC60%、サブスク30%、その他10%(フラワーカフェ&教育)
③ 価格
 1本100円、配送料260円
 全国どこへでも配送
④ 母の日、5千束から7千束
 ベトナムでパッケージング、輸入品比率40%
⑤ 1.5万トラフィック、コンバージョンレイト8.5%
  
5 総括
① 種苗会社(果川市)の苦戦を見てもわかるように、韓国は相対的に人口が少ないこと(国内市場が小さいこと)と、伝統的に家庭需要がほとんどなかったので、花の産業が未成熟である。発展途上なのか?それは苦戦の証なのか?
② 近年、SNS(インスタ)やEC(花贈りのファッション)もあって、若い人の間で花消費が増えているようだ。しかし、輸入商社(ワールドフローラ)やKukka(ECサブスク)の事業をみてもわかるように、単独で輸入やECがビジネスとして成立しているわけではない。ブライダルやカフェ事業、サブスクが複合的に全体の花事業を支えている。
③ 花の生産については、日本以上に深刻な問題を抱えている。コスト増、人手不足、輸出競争力の減退など、「花産業フルセット」の日本やオランダと比べると、どこに新しい切り口を見出すかが、不透明である。ただし、物流については恵まれている。
④ 専門花店を訪問したチーム(卸市場、青フラさん、林さん)の写真を見ると、デパートやホテルの花は、まずまずのクオリティではあるが、「(美味しいカニに比べて)驚くような発見はなかった」(青フラの井上社長)というのが偽らざる感想のようだった。
⑤ 世界遺産の宮殿を見て、自然環境に恵まれた「秋の韓国(ソウル)」を見たい気持ちになった。秋は寒暖差が激しそうなので、紅葉の頃が楽しみである。植物に対する好みは、本当のところはどうなのだろうか? 韓国のファッションやコスメは素晴らしいが、世界を覆っている自然志向のトレンドとどのように折り合いをつけていけるのか? それが、花に対する嗜好でいえば、この国の課題のように思う。

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