【インタビュー記事】「コンビニ業界の常識に反する施策を成功に導いた「社風」」『プレジデント』(2025年7月18日号)

 経営者向けの雑誌『プレジデント』(2025年6月末発売)で、拙著『ローソン』(PHP研究所)刊行直後にインタビューを受けました。「著者インタビュー」というコーナーです。わたしのプロフィール(経営学者、法政大学名誉教授)も紹介されていました。懐かしい本『マクドナルド失敗の本質』(東洋経済新報社)が引用されていました。


【タイトル】インタビュー(小川孔輔 『ローソン』)
【見出し】コンビニ業界の常識に反する施策を成功に導いた「社風」 
【プロフィール】経営学者、有限会社オフィス11 わん代表取締役。1974年 東京大学経済学部卒業、同大学院進学。86年法政大学経営学部教授、2022年同名誉教授。『マクドナルド 失敗の本質―賞味期限切れのビジネスモデル』(東洋経済新報社)など著書多数。
【クレジット】インタビュー・文=佐藤隼秀 撮影=宇佐美雅浩

 コンビニのローソンは、2025年6月14日に創業50周年を迎えた。25年2月期連結決算は、売上高と各利益項目が過去最高を更新。物価高で消費が減退するなか活況なのはなぜか。本書をめくれば、その要因が垣間見える。著者の小川孔輔氏はこれまで小売業や流通業を中心にビジネス書を50冊以上手がけてきた。本作はローソンの業績が上向きになる以前から執筆を構想していたが、改めて題材に据えた経緯を振り返る。
 
 「ローソンには優れた商材やサービスが溢れているのに、世の中にはあまり認知されていない。いちファンとして、ローソンの魅力を伝えたいと考えたのが始まりです」
 小川氏が考えるローソンの魅力とは、風通しの良い社風のもと、様々なプロジェクトを展開してきた点にある。その好例が値引き制度の実施だ。
 「ローソンは食品廃棄に対する世間のネガティブな声をいち早く汲み取り、賞味期限が近い商品の値下げ実験を行ってきました。竹増貞信社長は、従来コンビニの禁じ手である値引きを現場に任せることに。発注システムの改良に成功したこともあり、竹増社長の試みは成功。経営を合理化したうえ、フードロス削減も実現しました」

 昨年はライバルチェーンで弁当などの〝上げ底〟が取り沙汰された一方、ローソンが〝盛りすぎチャレンジ〟を敢行したことは記憶に新しい。「物価高なのに増量という攻めの施策に踏み切ったのは、好反応で、消費者にも高揚感や満足感を与 えられると考えたから。顧客が何を求めているかに重きを置く姿勢が、結果的に増収に結びついている」
 社内で試作品を共有した際に好反応で、消費者にも高揚感や満足感を与えられると考えたから。顧客が何を求めているかに重きを置く姿勢が、結果的に増収に結びついている」

 またローソンは、良品計画やトーハン、農家をはじめ多方面との提携が目立つ。長期的に他社との協業が続くのも、企業文化が良好な証左であり、コンビニの枠組みを超えたプロジェクト展開につながっていると見る。
 「ローソンではドローンの配送や農場の運営、人手不足を補うアバターの接客などを通じて、過疎地域への出店に意欲的です。いわばコンビニが地域のハブになる構想を掲げ、新しい付加価値を追求している。少子高齢化が進む中、今後コンビニは単なる物売りではなく、サービス提供者の側面が求められていく。こうした新しいコンビニのあり方に最も近いのがローソンです」
 一過性の広告やマーケティング施策に捉われず、顧客や社会のニーズを読み、ボトムアップでアイデアを落とし込む。本書には従来の小売の在り方を変革し、増収増益を生み出した〝ローソン流〟経営エッセンスが山盛りだ。

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