生涯48冊目になる書籍『サービスエクセレンス』(生産性出版)のお礼状が、研究者仲間や経営者たちから届き始めている。年に最低一冊は本を出することを、自分に対する義務にしている。コロナの感染が拡大した昨年も、『(インタビューで綴る)花産業の戦後史(1945年~2020年)』を刊行できている。本を書き続けることは、ある種の強迫観念になっている。
出版を継続することの最大の効用は、新本に託して、友人や知人・弟子たちにメッセージを送ることができることである。わたしが書籍に込めている思いは、「わたしの存在を忘れないでくださいね」「いまだ元気で仕事をしています」というポジティブな生き方を伝えることである。
電子メールや書面で、友人や研究者仲間から返事が戻ってくる。わたしにとっての効用は、彼ら・彼女たちの存在を確認できることである。人間は何かしらの問題を抱えているものである。そんなときに、しばし忘れかけていた知り合いから、不意打ちのように、赤色を基調にした420ページの本が届く。
このところ、2~3年の間、音沙汰がなかった知人から贈られてきた書籍は、二人の関係性を確認するためのきっかけを与えてくれる。彼らの返信から知ることがある。実は仲間が大きな手術をしていたり、しばらく病に臥せていたことがわかったりする。それは今回、実際に起こったことだった。あるいは、彼女が住処を変えていたり、家族関係に変化が起こっていたりする。
新刊本を出し続けるもうひとつの効用は、若い友人や弟子たちを鼓舞するというメッセージ性である。わたしの好きな言葉に、「Publish! Or perish?」という金言がある。「本を出し続けないと、世の中から忘れられてしまうぞ」という意味である。わたしは、マグロやブリのような回遊魚のごとく、仕事をし続けないと死んでしまう性格である。
ベテランの学者が出版にこだわる姿を、この先も仲間や後進たちに示し続けたいと思っている。それは、わたし自身の存在証明でもあるが、若い人たちに希望とプレッシャーを与える意味も含んでいる。自身が元気でいることで救える弟子や仲間たちもいるのではなかろうか?