大学院特別奨学金: 「被災地復興支援事業プロジェクト」の開発に対する奨学金

 昨日は、JFMAの会合で、復興支援プロジェクトについて議論していた。被災地のために、花業界としてできるアイデアを検討していた。結論に到達できなかったが、方向性は得られたと思っている。その席で、自分が校長を務めているIM研究科で、被災地復興のために何かできることがないかを考えていた。以下は、わたしの思いつきである。



 日本国としては、政府が特別な組織を作って、復興支援のプロジェクトを立ちあげている。しかし、たとえば、花の業界などを見渡してみると、復興支援の枠組み作りは散発的に見える。
 この先、復興作業は、3~5年は続くことになるだろう。息の長いプロジェクトである。その組織を運営していくために、出てきたアイデアや事業組織を経済的に支援するための枠組みがいまのところ十分には見えない。全体を統合する、民間の具体的な枠組みが見当たらないのである。
 ボランティア活動にしても、個人の純粋な思いや申し出を、役務と資金の提供でつなぐ枠組みに限定されている。思うに、もしかすると、今後必要になってくるのは、ボランティア活動ではなく、被災地を経済的に潤すための事業を構想したり、そのアイデアを具体的に実行に移すための組織(民間企業やNPO活動)かもしれない。

 そのように考えた時に、あるアイデアが思い浮かんだ。同じようなことを、現役のビジネススクールの院生がどこかで話していたようにも思う。
 法政大学の経営大学院(IM研究科)では、学生を教育する方法として、「プロジェクト・メソッド」というプログラムを持っている。一年間をかけて、社会的に役に立つ、革新的な事業アイデアを構想する。しかも、それを実現するために努力せよ! そのような教育プログラムを中心に大学院を運営している。

 会社から派遣された学生(年間5~6人)は、自社の新規事業をプロジェクトで構想することが多い。
 後継者として地方から出て来ている学生(同、4~5人)は、父親の会社をどのようにさらに事業展開していくべきかを、一年間をかけてリサーチする。出身地の北海道や福岡などに戻ってから、実際に研究して練りあげた事業を具体化している。
 中小企業診断士MBAコースには、毎年20人前後の学生が入学してくる。彼ら、彼女たちは、例えば、診断士の事務所を開設するにあたって、新規の事業計画を立案していくケースが多い。

 そうであるならば、法政大学のビジネススクールで、学生が一年間をかけて計画するプロジェクトの中に、「東日本大震災の復興を支援するプロジェクト」があってもよいだろう。ふと、そう思ったわけである。
 もちろん来年度、(1)新たに入学して来る学生が、そうした復興支援プロジェクトを独自に構想することもよいだろう。しかし、どうせならば、(2)東北地方出身者の学生や、(3)被災地に縁のある学生で、東北地方の復興支援に役に立つようなプロジェクトを提案した場合、その入学者に特別に奨学金を支払うというアイデアである。
 仮称で、「震災復興プロジェクト支援奨学金」とでもしておこう。その場合、法政大学が入学金を免除して、授業料については、民間から募金を募る。もちろん校長のわたしなども、奨学金のいくばくかは、そのための資金を拠出するのである。
 
 復興プロジェクトの具体的なイメージを、いくつかあげてみる。
 たとえば、昨日の花業界の集まりで出たアイデアは、「東北の被災地に桜や松を植えることで、自然景観を取り戻すプロジェクト」である。この場合、ポータルサイト(マッチングサイト)を作って、復興していく被災地の町に、桜の木を植える。街並みを桜やケヤキのような植物で埋めていく。

 たとえば、陸前高田市の××町〇丁目の△番地に、国や県の復興支援プロジェクトで桜並木を作ることにしたとしよう。あるいは、同市の海岸に、松林を作るとしたとしよう。作りたい側/樹木がほしい側が、植樹や花壇の想定図面を、ネット上で公開する。樹木の種類と植える番地つきである。
 その場所の樹木(桜や松)を、地元の植木業者が供給する。材料は有償で、役務も対しては、「ボランディア植樹の権利」を、一般から募集する。自分が陸算高田市に行って植樹してもよい。それを地元の業者やボランディア人材に任せてもよい。
 それは「善意」の相対取引(BIDDING)である。自分の気持ちの「認定証」(プレート)は、現地の街並みに、永遠に残されることになる。その場所を、何年後かに訪問してもよい。宿泊客が増えて、いつの日にか地元の観光にプラスに作用するだろう。松島(宮城県)や松川浦(福島県)の、海岸線の景観を取り戻せるかもしれない。
 地元の業者(植木業者や花店)にとっても、無償行為ではない。仕事とお金が入るので、経済的に潤うことになる。善意が経済的な資源を生み出す形である。

 このようなアイデアは、植樹だけではなく、水産や温泉などでも可能だろう。プロっジェクトを推進するための時間と構想に対して、大学院が奨学金を出すのである。実現が可能な仕組みではないだろうか?