掲載は21面の市況欄、「価格は語る」のコーナー。記事の見出しは、「観葉植物、値上がり加速」。杉山麻衣子記者から、2回ほど確認の電話があった。コロナ禍で観葉植物が値上りしたことを記事にしたもので、重要なポイントは、異業種の衣料品チェーン(ユニクロ、バロック・ジャパン)が植物を扱い始めたことである。
この5年間で、観葉植物は約30%値上がりしている。供給量がそれほど増えていない中での値上がりである。コロナで癒しを求める人間が増えたことが原因だと解説されている。
しかし、根底にあるのは別の要因である。季節感(旬)を求める現代人の生活様式にあるとわたしは見ている。都市化と人間関係の変化である。潜在的なニーズは、ストレスフルな生活から解放にあるのだろう。その媒介薬が、森林や植物(サプリメントP)である。
新聞記事では、ユニクロの切り花の販売(2010年春から)、バロックジャパンの鉢物・観葉植物の取り扱い(2022年専門店オープン)が紹介されている。小川のコメントでは、「季節感を重視するアパレルやインテリアと同様、生活を彩るアイテムとして観葉植物の存在感が増し、無視できなくなった」と指摘している。
残念ながら、杉山記者は、今回は価格問題に興味があったようだ。せっかく紹介したあげた「KOTOHA」(京都府、谷奥社長)の「観葉植物の鮮度保持(十分な光を浴びて栽培期間が長い植物は丈夫に育つ)」のネタには食いついてくれなかった。彼女の次回の記事に期待したい。それにしても、花業界は2010年ごろに、わたしが予言した通りの展開になってきている。
異業種が花産業に最初に参入したのは、1990年の大阪花博がきっかけだった。育種や栽培など技術関連で、ビールメーカーが最初に花事業に興味を示した。サントリー(花壇苗と青いバラ)、キリン(海外の種苗会社買収)、サッポロ(ランの栽培)、JT(種子ビジネスの延長)。三井物産、三菱商事、伊藤忠、丸紅など、商社も花産業に参入しては撤退していった。
この周辺の事情は、1991年に刊行した拙著『世界のフラワービジネス』(にっかん書房)に詳しい。第二次異業者参入ブームは、小売業の新事業分野である。自社の取り扱いカテゴリーの拡大で、異業種からの参入となっている。ただし、自社MDではないので、この先のことははっきりとはわからない。
一つだけ言えることは、花産業は意外にポテンシャルが大きいということである。1兆円産業であることはまちがいない。既存のプレイヤーも、新規事業分野で展開できる可能性を秘めている。