「文学史に残る不朽の名訳で読む華麗なる王朝絵巻」(文庫本の帯)。瀬戸内さんは好きな作家だが、この文体はどうなのだろうか?「すべての恋する人に贈る最高のラブストリー」。学生時代は古文が不得意な科目だった。現代語訳だからと、夏休みにぽっかり空いた時間を使って読んでみた。
2年前に全巻を揃えておいた、文庫本の源氏物語の第一巻。いつか読まねばと、7巻をすべて揃えておいた。しかし、なぜか第一巻が見つからないまま、本棚には2~7巻がこちらをじっと見ていた。
今年の春に、大学院の授業時間にこのことを学生に吐露したら、一人の女子学生が、「先生、どうぞ!」と文庫本の第一巻を目の前に差し出してくれた。
ありがたいことに、わたしへのプレゼントだった。返礼に、お昼に土手のカレーをごちそうした。結局は、(笑)物々交換になったのだが。
さて、わたしにとって、源氏物語は手ごわすぎる内容だったらしい。文章というより、物語(ファンタジー)を受け入れる感性の問題なのだろう。帯の最後には、「巻1では、光源氏の誕生から、夕顔とのはかない逢瀬、若紫との出会いまでを収録」とある。人物の相関図や瀬戸内さんによる巻末の解説もある。その先の2巻以降の展開が、第一巻ですべて鳥瞰できるようになっている。
とはいえ、約1000年前の時代設定ときらびやかな王朝の生活が、そうは見えてこない。わたしにはどうも作り物の世界が腑に落ちないのだ。王朝の恋愛物語(結局は、おおむね不倫)とは、かくもふしだらなものなのだ。そうしたストーリー展開は、女子目線からだと「それは、シンデレラの世界でファンタジーだから、、、」となるのだろう。
現実主義者のわたしには、どうも最後まで光源氏を主人公とする王朝物語にはのめり込めなかった。まだしも、現代版のLGBT話の「おっさんずラブ」のほうが、リアリティを感じるくらいだ。テレビドラマの再放送が話題になっているが、あの続編を見に行きたくなる。
というわけで、働き者のわたしには、朝帰りが常態の光源氏は尊敬できないのでした。「光源氏って、いつ働いているの?」というわたしの問いかけは、かみさんには完全に無視されてしまった。そんな野暮な疑問は、シンデレラストーリーを期待する女子連にはありえない視点なのだろう。
第一巻はひまに任せて完読はできた。しかし、第二巻以降は、一階リビングの本棚でほこりをかぶったままになるのだろう。すいません。感想文にもなっていない書評を書いてしまったようです。
時間を無駄にしたとは思っておらず、瀬戸内さんらしい現代語訳と解説はとても参考になりました。しかし、この物語を今の人が読む価値が本当にあるのだろうか?そんなわけで、めずらしく★3にしてしまいました。
サンフランシスコに行く前に、源氏の書評は書いておかねば。夏休みの宿題でした。