日本経済新聞出版社のマネジメントシリーズに新刊がまた一冊、追加された。シリーズはいま8冊になった。あと二冊で二桁になる。書店で、シリーズとして棚をとりやすくなったのではないか。
ベンチャーマネジメント入門は、長谷川さんという早稲田大学の先生だ。早稲田の先生達は、一般的には、あまりアカデミックな論文を発表しない。しかし、松田修一先生をはじめとして、実務との間に橋を架けている研究者はいる。本書の構成や内容も、そうした学風を反映したものになっている。
良い点をあげる。事業創造の手順がわかりやすくかかれていて、事例がみじかである。ケースが新しい。とってつけたような事例はない。
悪い点は、データやケースの背景についての解説があまり深くないことだ。読者にあまり考え方させる内容になっていない。もともと起業に関する本だから、理屈で説明するのはむずかしいのだが、それでも理論武装がほしいとおもうところが多い。データの解説だけでは意味がない(例えば、第二部の5~7章の表の解説)。
第一部で、起業のステージ別にベンチャーを時間軸でわけて解説したあとで、二部で事業の拡大に必要な機能に分けてあるのは、本書を読みやすくしている。願わくば、第三部として、事業構想と実行のための知恵(法則と留意)、がまとめてほしいかな。構成がややフラットだ。あっさりしている。
そのせいか、読者として対象者としているひとのイメージがつかみにくい。本当は、学部生か大学院で学んでいる社会人MBAが、ターゲットである。はしがきにも、だれでもを狙わず、絞り込んだと、割り切って書いたほうがよかったのではないか。そうであれば、構成も変わったかもしれない。やや厳しいことをいえば、事例やコラムの引用はきちんとすべきと思う。出典無しが多すぎるのではないだろうか。
でも、★は4つである。わたしの総合評価は、わりに高い。なかなか書けるひとがいない類の本ではある。さすがに、内容は筆者の経験に裏打ちされている。