【推薦図書】 西岡健一・南知恵子(2017)『製造業のサービス戦略』中央経済社(★★★★)、杉原淳一・染原睦美(2017)『誰がアパレルを殺すのか』日経BP社(★★★★)

 最近読んだ本で、推薦できる二冊を紹介します。まず後者は、ユニクロ柳井社長の「もう、”散弾銃商法”は通用しない」の箴言で話題になった本。10月度のゼミ課題図書に指定したが、学生たちからも、自らの経験に照らして賛同意見が多かった。

 

 書名の『誰がアパレルを殺すのか』は、センセーショナルなタイトルだが、内容はいたって真面目。衣料品不況の実態とその背景の解説している。そして、「それでも未来は真っ暗ではない」との事例が複数紹介されていた。

 学生たちからも、倒産した老舗アパレルの後継経営者が興した「TOKYO BASE」(谷社長)の取り組みなどが好感を持たれている。

 海外にも、「エバーレーン」などお手本になる成功モデルがないわけではない。流通と加工を透明にして、消費者の価格に対する不信を取り戻す。信頼性回復と真の意味の製品の差別化が、アパレル復活のキーになるのだろう。

 

 後者の『製造業のサービス化戦略』は、著者の南知恵子先生から献本していただいた著作。どちらかといえば、技術オリエンテッドな内容なので、中心部分は、共著者の西岡さんが書いたのだと思われる。

 B2B企業を対象に、「製造業がサービス化に向かう道筋」を理論的に説明している。西岡さんはNTT出身でITCが専門なだけに、インタネット社会出現の背景を要領よく解説してくれている。個人的にはとても勉強になった。

 本書が提示されている興味深い概念(SSP,SSC,PSSなど)が、どのくらい独自性をもっているのか。一度読んだだけなので、確信をもって宣言はできない。ただし、サービス化することで単なるモノづくり製品が付加価値を生み出すロジックは理解できた。再読して、いずれもうすこしきちんとしたコメントをしてみたい。