一昨年から研究を続けていた「ソーシャルメディア環境下での情報伝播・拡散のメカニズム分析とシミュレーションモデルの提示」(吉田秀雄記念財団・助成研究)が完成した。全文は、120ページの大作である。3つのメディア(マス、SNS、中間)の相互連携を扱った研究である。ここでは概要をアップする。
代表者: 法政大学経営大学院教授 小川 孔輔
研 究 要 旨
0 研究報告書の構成
本報告書の第1章では、現在のメディア環境下における情報伝播の変化とそれに伴うコンテンツ・ヒットの変化を記し、その後メディア情報の集積・拡散の新たなメディアの場の存在を提示した(図表1-1)。
第2章では、メディア・コミュニケーションにおける先行研究をサーベイし、その知見を一覧表として掲げた。そして、特にインターネット普及後の先行研究と本研究との比較を行いその新規性を示した。第3章では、メディアの現場で実際に情報を受・発信しているメディア・コンテンツの最前線にいる4名を取材して、今の時代の新たなコミュニケーション実態を把握した。先行研究や関係者取材、またプロジェクトメンバーの知見をもとに議論を進め、仮説を導出した。
第4章では、われわれの「環メディア仮説」を提示した。そして、第5章で、近年ヒットした「橋本環奈」と「ふなっしー」の2事例の情報拡散のための検証枠組みを示した。この2例の情報伝播の実態、ソーシャルメディア時代の「スター誕生」の情報伝播のメカニズムを検証した。その後、そこで得た情報伝播の枠組みをもとに、一般消費財であるサントリーの「レモンジーナ」と「ヨーグリーナ」、相模屋食料の「ザクとうふ」の情報伝播とヒットの段階を分析した。
第6章では、定性分析で得た情報が伝播していく仕組みを可視化するためシミュレーションモデルを作成し提示した。そして、第7章では本研究の全体のまとめと今後の課題を示した。
図表 1- 1 本研究の流れ
なお、この研究概要では、原論文の「図表番号」(たとえば、図表5-1)をそのままのナンバー(5-1)で引用してある。
1 新しい概念の発見
(1) 「環メディア」あるいは「台風モデル」
従来のメディア研究では、社会的な情報の伝搬を、「マスメディア」と「SNS」(ソーシャルネットワークサービス)の2分類で説明していた。情報の普及プロセスは、おおむね「バスモデル」(数理モデル)で説明するか、「草の根的なネットワーク」の拡散については、SNSを介しての拡散で現象を説明していた。人々の相互作用による直接的な伝達に、さらにマスメディアが介在してインタラクションを起こすという発想はなかった(第1章、第2章)。
われわれは、両者の中間に位置しながら、マスメディア(テレビや新聞・雑誌)とSNS(個人の情報発信ネットワーク)をつなぐ中間のメディアを同定した。それは、ツイッターやFacebook、LINEなどを介して、マスメディアにまで情報を伝え、商品や社会的関心の対象物(タレントやスター、キャラクターなど)のヒットを瞬間的に増幅させるメディア(YouTube、Yahoo!ランキング、2チャンネル、まとめサイトなど)の存在とその媒介機能などである。
これら中間に位置するメディアは、一般的に「キュレーション・メディア」と呼ばれているが、情報の伝播・拡散プロセスにおける役割は十分には認識されていなかった。われわれは、3つのメディア(マスメディア、SNS、キュレーション・メディア)が相互に作用して、情報を伝達する社会現象を「環メディア現象」と呼び、その動的な特性と実態に対して、仮に「環メディア」(かん・めでぃあ)という名前を与えてみた。その動作特性は、まるで、南太平洋の洋上で強力な勢力を持った台風が発生する過程に似ている(第4章:図表4-1、図表4-2)。
図表4-1に示すように、マスメディアとSNSとの間に情報集積・拡散の場が発生し、その「共創の場」がマスとソーシャルそれぞれのメディアを巻き込み、幾重にもつなぐ役割をしている。その中では、従来とは異なるメディア間の反芻や共創作用が働いている。これを「環メディア」(環メディア現象)と名づけたわけである。コンテンツのヒットに、このメディアが大きな役割を果たしているのではないかとの仮説を立てた。
図表 4-1「環メディア」の存在とその役割
図表 4-2 各メディアの効果、役割、カタチ
(2)「コクーン・ブレイク」という現象
「橋本環奈」と「ふなっしー」の事例(第5章、2~3節)では、両者がヒット(ブレイク)するにいたるプロセスの最初に、コアなファン層が存在していた。マニアックな関心層(クラスター)のことを、われわれは「コクーン」と名づけることにした。
大きなヒットに至るには、ニッチなファン層(「類似関心層」とも呼ぶ)を飛び越えて、一般に情報が拡散していかなければならない。そのためには、2つの条件が必要になる。1つは、類似した関心をもつグループに情報が伝搬することである。きっかけはさまざまであるが、なんらかのイベントが情報の一般への拡散を促進する導火線の役割を果たしていることが多い。また、橋本環奈がブレイクしたきっかけは、ネット上を駆け巡った1枚の写真だった。
また、情報発信の促進役として著名人が登場して、対象者に「お墨付き」を与えることもある。橋本環奈の松井玲奈(当時SKE48)、ザクとうふの池田秀一氏(シャア・アズナブル役の声優)、ふなっしーの加藤浩次(相撲対決)などの事例でも同じことが起こっている。
いったんコクーンが破れて、その存在が一般に知られるようになると、マスメディアが関心を持つことになる。番組やニュースで大々的に宣伝してくれる。ただし、そこに至るまでの過程では、2チャンネルやYahoo!やYouTubeなどが、ツイッターやGoogle検索ランキングなどから情報を拾い出し、ランキング露出を通して人気度を発信する。マスメディアは、番組の制作・編集過程で、キュレーションされた編集情報を頼りにしていることが確認されている(第3章、3節)。
(3) 地ならし期、発芽期(点)、成長期
取り上げたすべてのケースで、コクーンが破裂するに至るまでには、ある程度の時間が必要であった。その期間(地ならし期)に、のちにブレイクする対象(キャラクターや商品)に対する情報が蓄積されている。これは、花粉症が発症するまでのアレルゲンの「限界蓄積量」や、チューリップの休眠打破に必要な「累積低温量」などのアナロジーとして論じることができる(第5章、1節)。
こうしたヒットのプロセスは、定性的に分析されただけではない。定量的な複数の時系列データ(ツイート数、番組への登場回数など)を集計して分析した結果である。なお、サントリーや相模屋食料の商品に関しては、販売データ、GRP(延べ視聴率)、インターネットのインプレッション数なども分析対象にされている。
1つの具体例として、橋本環奈のブレイク期間(11月2日~19日)で、情報がどのように拡散したのかを例示してみる。Twitter投稿数、Google検索ボリュームの推移、ならびにマスメディアへの露出がグラフ化されている(第5章、3節、図表5-2)。
図表 5-2 「橋本環奈」のTwitter投稿数とGoogle検索ボリュームの推移
(4) 事例を分析する枠組み
事例を分析するにあたっては、共通の枠組みを設定した。5段階(「地ならし期」「発芽期」「成長期」「開花・満開期」「落葉期」)での普及モデルを想定している(第5章、1節)。5つの事例(橋本環奈~ザクとうふ)に関して、段階ごとに共通項を抽出したのが、図表5-1である。
図表 5-1 事例検証の枠組みと露出メディア
2 消費財への一般化
(1) サントリーのレモンジーナ、ヨーグリーナ
発芽した植物(球根や花)が、大きく成長していけるかどうかは、周囲の環境条件によって決まる。ヒット商品の場合は、中間に位置するキュレーション・メディアが、両者をどのように橋渡しできるにかかっている。また、ヒットの成否は、対象に関してある程度の長期にわたって蓄積された情報の蓄積(量と質)に依存して決まる。
こうした「発芽現象」(コクーン・ブレイクモデル)は、タレントのブレイク(橋本環奈)やキャラクターの人気上昇(ふなっしー)という現象を説明できるだけではない(第5章、2~3節)。われわれは、情報伝播のモデル(コクーン・ブレイク)とその方法論(環メディア)は、一般消費財にも拡張して適応できると考えた。その具体的な事例として、最近話題になった2つの商品に着目した。サントリーのレモンジーナとヨーグリーナである(第5章、4~5節)。
どちらの商品も、発売直後にSNSを介して話題が沸騰し、瞬く間に店頭在庫が欠品してしまった。そして、どちらの商品にも親ブランドが存在している(レモンジーナにはオランジーナ、ヨーグリーナには南アルプスの天然水)。商品ブランドに対する一定のファン層をベースに、新商品が発売されるらしいという話題がネット広告とSNSを通して短期間に火がついた。
サントリーの2つの事例は、自然発生的に商品の人気に火が付いただけではなかった。明らかに、企業側からの仕掛けが存在していた。仕掛けた痕跡は、インターネット広告への出稿と商品の事前サンプリングである。なお、レモンジーナの場合は、SNSでの「コピー合戦」(キーワードは「土の味」)でブレイクしたと考えらえる 具体例として、ここでは「レモンジーナ」で取り上げたデータをグラフで例示する(第5章、4節、図表 5-14)。
図表 5-14 レモンジーナ発売前後のTV番組世帯GRP、TV番組露出秒数とTwitter投稿数などの推移(2015.3.20~2015.4.19)
(2)相模屋食料のザクとうふ
サントリーの2ブランドとザクとうふの違いは、後者の事例では、マスメディアがほとんど関与していないことである。それでも、ガンダムをモデルにしたザクとうふは大ヒットしている。
ザクとうふのアイデアは、相模屋食料の鳥越淳司社長の個人的な趣味(ガンダムファン)からスタートしている。商品がブレイクしたのは、秋葉原で開催された「商品発表会」のイベントだった。イベント会場に、池田氏(声優)が登場して、会場を盛り上げたことがすべての始まりだった。会場でのイベントの様子や商品の画像が、SNSを介してガンダムファンに浸透していった。ファンの顧客が殺到したため、発売から1週間でザクとうふは品切れになった。
ヒットのもうひとつの要因は、とうふでジオラマを作って遊ぶなど、商品とキャラクターが「二次創作がしやすい」対象だったからと思われる。SNSでの拡散で重要なことは、関心層の消費者が「祭り」に参加がしやすいことである。画像や動画を自分で制作しやすいことが大切である。ザクとうふのヒットのプロセスも、ごく短期間で発生したものである。具体的なデータを示してみる(第5章、6節、図表5-32)
図表 5- 32 「ザクとうふ」発売前後のTwitter投稿数と商品出荷数量の推移(2012.3.21~2012.5.20)
3 モデルシミュレーション
(1) 環メディアとコクーン・ブレイクの再現
ここまでの5つの事例で分析した現象(環メディアとコクーン・ブレイク)の振る舞いを、正確に数値モデルとして再現することはむずかしい。そこで、Bチーム(情報伝播シミュレーションモデルチーム)が取り組んだのが、情報拡散(発芽期からのあとのステップ)の実態を、ダイナミックな動きとして模擬することだった。
このアプローチは、具体的には、①2段階ヒットの現象、②SNSがコクーンをはじけさせる様子、③マスメディアがSNSと相互作用して拡散を助長する姿、④過去の情報蓄積が第2段階目の成長を加速するダイナミズムなどであった。方法的には、エージェントシミュレーションの手法を用いている(第6章)。
そこでは、消費者(エージェント)とそのつながり(リンク)、中間メディアとマスメディア存在と情報の蓄積倉庫(アーカイブ)を想定して、段階的にシミュレーションを行った。結果的には、われわれが想定した基本コンセプト(モジュール)の組み合わせから、事例で取り上げたときの特徴的な情報拡散のモデルを再現することに成功した。
(2) 段階的なシミュレーション実験
これまでに説明してきたコンテンツ・ヒットの3要素は、①「コクーン」、②「環メディア」、③「アーカイブ化と検察」だった。これら3つの要素を盛り込んだシミュレーションを実施するために、単純なモデルから出発して、①~③の要素を順次に取り込んで、段階的にシミュレーションを高度化していくことにした。3つの要素を再定義すると、図表6-1のようになる。
図表 6- 1 コンテンツ・ヒットの3要素のシミュレーションモデル化
コンテンツ・ヒットの要素 シミュレーションモデル化の方針
① コクーン 「均質的」から「個性的」へ
② 環メディア 「メディアなし」から「メディアあり」へ
③ アーカイブ化と情報検索 「1つの情報」から「情報の検索」へ
これ以降では、3つの段階に分けてシミュレーションを実施する。これらの構成要素を、コクーンと情報を中心として再配置したものが図表6-2である。
図表 6-2 コクーンの存在、環メディア、アーカイブズと検索
この図では、コクーン内に留まっていた情報がある時期を境に隣のコクーンに飛び火し(コクーン・ブレイク)、それを検知したメディアが当該情報のみならず、アーカイブから検索された関連情報を巻き込んで広域に拡散させる様子を示した。
コンテンツ・ヒット現象を、コンピュータ・シミュレーションで再現を試みる。モデル構築のプロセスにおいて、コンテンツ・ヒット現象に特有な現象及び必須の構造は何かを考察する。
① コクーン・ブレイクのモデル化
特定の興味関心領域を持つ集団(コクーン)は、その中で頻繁に情報をやりとりする。「特定の興味関心領域」という軸について相互の距離を設定する。また、興味関心領域の軸が複数存在することも想定する。関心領域が異なる複数のコクーンは緩やかに繋がっている。コクーン・ブレイクのモデルとは、「均質的」であった消費者を「個性的」にすることである。
② 環メディアのモデル化
環メディアは、マスメディアとソーシャルメディアとを繋ぐ共創の場である。キュレーション・メディアの機能は、「盛り上がっている情報を検知し、それを編集過程で取り上げて拡散する作用」である。一部のコクーンで盛り上がっている情報が、その盛り上がりに着目した別のキュレーション・メディアに検知され、それが拡散される。2段階目での中間メディアの導入は、「メディアなし」だった場を、「メディアあり」の状態にすることである。
③ アーカイブ化と情報検索
最終段階で、アーカイブ化と検索をモデル化する。この場合、シミュレーションの中で伝播する情報は複数個であると想定する。接触・拡散経路で検索される情報に興味を持った消費者(メディア)が、別の類似情報をアーカイブズから拾い上げてくる。1人が複数の情報について関心を持つ状態を許容し、情報がストックされている場所(=アーカイブズ)を構築する(図表6-5)。
図表 6-5 アーカイブ化された蓄積情報の機能(拡散と伝播の機能)
(3) シミュレーションの進め方
モデル化された3要素を順にモデルに投入し、シミュレーションのプロセスを観察していく枠組みが、図表6-6に示されている。モデルの基本になっているのが、バスモデルと石井モデルである。
図表 6-6 シミュレーションへの要素の追加、及び既存モデルとの関係
① 基本形(同質性と中間メディアなし)
最初に、シミュレーションモデルの基本形(2節)を構成して、そのシミュレーション結果が示される。最初のモデル(6.2)は、普及モデルとして知られている「バスモデル」とほぼ同等である。
② 複数の関心領域(コクーンの導入)
次に(3節)では、消費者に異質性を導入して、興味関心領域を複数に増やしていく。また、シミュレーションの結果として、2つのピークが表れることが観察できる。
③ 環境メディアの導入
第2段階(4節)では、環メディア(中間メディア)を導入する。これによって、メディアに新たな拡散作用が生まれる。なお、この段階でモデルにおいて興味関心領域を1つに絞った場合には、石井モデルと類似のモデルとなる。石井モデルでは、クチコミ等の直接コミュニケーションに加えて、「間接コミュニケーション」を表現したモデルである。
④ アーカイブ化と検察
最後に(5節)、取り扱う情報を1つから複数個にする。シミュレーションモデルの中で、情報をアーカイブ化して、情報を検索する機能を導入する。これにより、情報の検索とその再投入によって生じる変化が観察できることになる。
(4) エージェントの設定とシミュレーションの方法
第6章で展開されるエージェントシミュレーションは、シミュレーションツールの「NetLogo」を用いて実施された。エージェント群(図表6-7)とその関係性のリンクを設置し、各エージェントの時間的な発展を行う。時間的な展開の様子を表現している(初期配置)が、図表6-8である。
図表 6-8 NetLogoによるエージェントシミュレーションの様子(初期配置)
白い小点は「消費者」を、少し大きな白点は「メディア」を示している。また、赤い点は「アーカイブズ」である。消費者間に張られている線(=リンク)は、「クチコミリンク」であり、メディアから消費者へと張られているリンクは、メディアのもつ拡散相手のリストを可視化したものである。図中には消費者がクチコミリンクによって寄り集まったいくつかのコミュニティ(「コクーン」)が観察される。これは、興味関心領域の数を複数で設定した場合に生じる現象である。図表6-9は、情報伝播を表現している。小さい赤点が情報エージェントで、黄線及び緑線は消費者と情報との間に張られたリンクである。
図表 6-9 NetLogoによるエージェントシミュレーションの様子(情報伝播)
図表6-10は、関心量をクチコミ由来の関心量、メディア由来の関心量及びその和でグラフ化してある。
図表 6-10 シミュレータからの出力:関心量推移
(5) エージェントシミュレーションの結果
シミュレーションは3段階に分けて、実施された。すなわち、①コクーンの投入、②環メディアの投入、③アーカイブの追加投入である。詳細は、報告書に譲るが、1例だけ事例を挙げておくことにする。
①「コクーン」の投入で、ヒットの二段階現象(第1波と第2波)の普及が説明できる(図表6-17)。推移の様子は、第5章で観察したヨーグリーナのTwitter投稿数推移に似た推移を示す(図表 6-18)このケースでは、最初にウェブニュース等で拡散された第1波と、その後販売再開でTwitter投稿数が大きく増加した第2波とに分けられる。第1波がウェブでニュースウォッチをするコクーンでの拡散、大きな第2波はより一般に商品を消費する消費者での拡散とのアナロジーと捉えることができる。
図表 6- 17 複数の興味関心領域にまたがる情報を流通させたときの様子
図表 6-18 ヨーグリーナ販売再開前後のTV番組世帯GRP、Twitter投稿数と商品購入個数の推移(2015.6.24~2015.7.31)(第5章図表5-26の再掲)
4 議論と残された課題
本研究では、 マスメディアとSNSの中間に位置する「キュレーション・メディア」の役割を明確にし、情報拡散のモデル(環メディア現象)により、現代のヒットの様相を説明することができた。概念モデルは直接的には実証することができなかったが、ヒットに至るまでのシステム全体の振る舞いは、シミュレーション実験によって再現することができた。
ただし、シミュレーションの方法は、厳密な意味での普及過程の再現ではない。ある意味で、キャラクターや商品の普及パターンを「疑似的に」再現したものである。時系列的な情報の伝播は、マスメディアとSNSの相互作用から生じている。それゆえ、ヒットが起った後の消費者全体の動きが、そのまま継続していくのか、それとも収束してしまうのかを説明できればよいはずである。ある意味で、数量的なモデルアプローチを採用しながら、その最終アウトプットは、「定性的な振る舞いを同定したこと」になる。
われわれは、こうしたアプローチに新規性があると考えている。しかし、この方法論は、単なる定性的な分析だと判定する立場もあるだろう。われわれの採用した方法が、「科学」といえるかどうかは、従来からある厳密な科学者から批判の対象にはなるだろう。