9月27日(土)に開かれた「ブランドマネジメント研究部会(JIMS)」の拡大版セッション「広告の今とこれから」から、「ソーシャルメディア時代におけるキャラクターのテレビCM活用効果」(野澤智行氏、㈱アサツーディ・ケイ 朴 正洙氏、関東学院大学)の講演録をアップする。
日本マーケティング・サイエンス学会(JIMS)
ブランドマネジメント研究部会・拡大版セッション
「広告の今とこれから」
「ソーシャルメディア時代における
キャラクターのテレビCM活用効果」
株式会社アサツー ディ・ケイ
野 澤 智 行 氏
関東学院大学 朴 正 洙 氏
日時:2013年9月27 日15時45分~16 時15分
於:法政大学経営大学院IM研究科101教室
講 演 要 旨
1.最近の広告トレンド
私(野澤氏)は、現在、アサツー ディ・ケイのマーケティング関連部署(正式名称はストラテジック・プランニング本部)で、キャラクターを使ったマーケティング活動の研究やコミュニケーションプランの提案をしています。
朴先生は、今年度4月に早稲田大学から関東学院大学に移られました。
これからの広告の方向性についてというテーマですが、方向性として、大きく分けて2つあると思います。一つがビッグデータなどを用いたデータベース活用による、コミュニケーション機会の創出手法の進化です。これが行き過ぎると、マイノリティ・リポート的な管理社会に転化する可能性もあります。もう一つは、消費者の心を動かすクリエイティブ手法の進化です。
テレビは、現在でも、中高年世代にとって話題の情報源です。つい最近も、半沢直樹やあまちゃんが、おじさんたちの間で盛り上がったばかりです。こうした人気番組は、テレビ全盛期の1980年前後にキッズやティーンだった40~50代の世代です。彼らが、SNSで盛り上がっているわけです。今年話題になったのは、宇宙戦艦ヤマト2199です。一方、実写で若者向けに映画化されましたが、ふるわなかった邦画もあります。
では、最近のTVCMはどうかというと、プッシュ型の広告として、テレビCMの効果と効率は、やはり高いわけです。メディアとしては、テレビ、ポータルサイト、テレビCM、友人の話、新聞、折込チラシなどいろいろあり、広告以外のところからも大量の情報が入っています。ADKで調査したところ、TYCMは企業や商品名を話題にしたり、新商品の発売を知るきっかけになっています。また、手軽に欲しい情報が入手できるのは検索サイトです。調査は69歳までということもあって、信頼が高いのは新聞、そして口コミです。
日本の広告費は下がってきています。メディア別の構成比では、まだまだTVCMが多いですが、シェアとしては他のメディアが増えています。韓国では、ケーブルテレビが15%、ネットは22%と、地上波テレビ以外のものが強いようです。JAA(日本広告学会)2011年の岸志津江先生の発表では、広告主が重視する取り組みとして2012年に予想されているのは、商品販売と直結するコミュニケーション、企業ブランドの価値向上などです。
2.有名人広告とキャラクター広告
(1)有名人広告
私(朴氏)は、2013年2月に有名人広告の実態調査を行いました。有名人が頻繁に起用されるのが日本の広告の特徴ですが、日本での研究が少ないので、私が自分で始めることにしました。
19~64歳の東京在住者を対象に、有名人起用広告のブランド再生率を調査したところ、出演企業数と再生率の負の相関関係が明らかになりました。放送回数とブランド再生の相関関係を見ると、例えば、(いろいろな広告に出ている)人気女性タレントなど、ほとんど再生率と無相関な感じです。タレントが売れることと、商品が売れることとは、別の話だと思います。
ですから、好感度が高いタレントを起用しても、それだけで消費者の購買につながるわけではありません。また、タレント活用だと、コスト的にも、ウェブなどの他の接点での使い勝手という点でも、問題があります。
(2)キャラクター広告:概要
有名人広告の調査結果を前提に、これからキャラクターの話をします。
日本人は、キャラクター好きが7割近くにのぼります。キャラクターを使うことの効果として、楽しい気分になりたい、癒されたい、元気になりたいという気持ちや、家族との共通の話題などが期待されています。注目度と企業好感度のアップも見込めます。また、目に留まりやすくなる、意識しなくても視野に入る、キャラクターを見ると企業や商品広告を思い出しやすくなるという効果があります。
まとめますと、性別、世代、国籍を超えて、キャラクターはメディアや接点をつなげ、消費者の共感や参加を促します。ということで、今の時代のキャラクター使用を考えてみたいと思います。
キャラクター活用の最近のトレンドの確認、キャラクターのTVCM活用効果として、CM好感度が高い素材や、商品喚起度が高いものを調べました。
広告会社としては、メディアの広告枠を確保することが仕事の一つです。キャラクタービジネスの市場規模は2兆円で、近年は減少傾向にあります。有名キャラクターが低調な一方、スマホアプリ(なめこ)や、「くまモン」のようなゆるキャラが出ています。コンビニのコラボ商品やタイアップキャンペーンも増えてきました。
プロダクトプレイスメントで、例えばアニメの番組の中に、企業の製品を埋め込むというようなことも行われています。「TIGER & BUNNY」では、牛角など複数企業が組んでいます。こうなると、どこからアニメ、どこから広告がわからないくらいです。また、ソーシャルメディアのアイコンとして注目される企業キャラや、ご当地キャラのイベントは、もう日常化しています。「くまモン」は、2010年に九州新幹線全線開業に向けた「くまもとサプライズ」キャンペーンで誕生しました。2012年には293億円の利用商品売上額が報告されています。
最近有名になっている「ふなっしー」は、船橋市在住の一個人がデザインしたキャラクターです。2012年に着ぐるみが登場して以来、今やツイッターのフォロワーは、27万人(9/27時点)にものぼります。それまでも、すごいキャラだと知る人は知るという存在だったのですが、アサヒ十六茶のTVCMに抜擢されて2013年2月に放送開始したことをきっかけに、しゃべって飛び跳ねるキャラとして、時代の寵児になりました。2013年の日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」では、480のキャラクターから、トップに輝きました。一方で、地元の船橋では、船橋産梨のカクテルの宣伝や、市立船橋高校サッカー部への差し入れなど、地味な貢献活動を重ねています。最近私も、マーケティングホライズン2013 VOL.9で、「ふなっしー」について記事を書きました。「ふなっしー」は、「ご当地キャラ総選挙」のイベント出演だけでも、広告費換算で10億円くらいの露出効果がありました。
(3)CM好意度
近年の広告CMトレンドとして、いろいろなキャラが、たくさん出ていることが挙げられます。ビデオリサーチ社のテレビコマーシャルカルテから、ウィンドウズ98発売前後の1997~98年と、直近(2012-13年)の視聴者好意度上位CMを比較してみました。
1997~98年のデータを見ると、CM好意度上位一覧に、小錦が出ていたサントリーのウィスキーのCM、とんねるずのモルツCMなどが上がっています。CM好意度の上位を占めるのは、タレント起用のシリーズCMです。キャラクターでは、サントリーのペプシマンが、7位につけています。
一方、最近1年間のデータを見ますと、ロトセブンのCMや、サントリーの伊右衛門、ソフトバンクの犬のお父さんなどが好感度上位にいます。タレントを起用している場合でも、キャラクターっぽい感じの人が多いようです。日清食品のチキンラーメン、ディズニーランド、アフラックなども、上位に入っています。
(4)キャラクターCMの好意度
ビデオリサーチ社のテレビコマーシャルカルテによると、キャラクター使用CMは好意度が高めです。キャラクター使用CMは、ストーリーや音楽が印象的で、面白さや親しみなどの点で評価されることが多いようです。
(5)まとめ
まとめとして、ネットの普及前も現在も、人気タレントのシリーズCMが好意度上位を占める点は、共通しています。最近では、人気タレントとキャラクターの共演も増えています。今後は、企業オリジナルキャラやご当地キャラの活用効果、タレントとキャラの共演の成功・失敗パターンなどについても、要因を探ってみたいと思っています。
質疑応答
(小川教授)高橋さんは、キャラクターCMも作っていらっしゃるのですか?
(高橋氏=クリエーター)僕は、ドラマ系の仕事が多いです。情緒系のキャラはなかなかないです。
(小川教授)最近、キャラクターとタレントのコラボが増えているというお話でしたが、それはなぜですか?
(野澤氏)両者の相乗効果だと思います。わかりやすく作ろうとした結果で、特に戦略というほどのものではないと思います。とりあえず視聴者に注目させるだけなら、人気タレントや旬のタレントを起用した方が、キャラクターよりいいでしょう。
(岩崎)地域キャラが増えていますが、実際に、地域とキャラクターは、結びついて認識されていますか?
(野澤氏)消費者は、「くまモン」は知っていても、熊本の名物は知らなかったりします。今は、地域キャラは、本来の目的である地域PRや活性化などよりも、イロモノといいますか、安く使えるという理由で、ニュースや広告で取り上げられていることが多い感じがします。