「小川先生のマーケティング講座 -見た目で勝負!ビジュアルマーチャンダイジング- 」『PRESIDENT NEXT Vol.6』(2015年8月15日発売)『プレジデントネクスト』

『プレジデントネクスト』 2015年9月号を掲載する


商品を包むパッケージにはさまざまな種類がある。たとえば今回取りあげたファミリーマートの「とろけるチョコクッキー」は、一枚ずつのバラ売りで、丁寧に一つ一つパッケージされている。最近はこのような〝個包〟がトレンドになっているが、その狙いは何なのか。法政大学大学院の小川孔輔教授は次のように解説する。

 「複数個をまとめて包装すると、食べきれずに開封後に保存の必要が生じたときに鮮度が落ちるおそれがあります。しかし、少量ごとに個包してあれば毎回、鮮度のいいものを食べられます。また、少量でバラ売りすると単価が低くなり、手に取りやすいこともメリットといえるでしょう」

 「とろけるチョコクッキー」のパッケージは透明で、商品がそのまま見えることも特徴の一つだ。これも何か狙いがあるのだろうか。
 「一般論ですが、透明のパッケージは商品の形や大きさを確認できるので、初めて見たときに安心してお試しできます。また、透明だと商品のリアルなシズル感(食品のおいしそうな感じ)をアピールしやすいという利点もあります。クッキーは質感が大事なので、透明パッケージは向いているかもしれませんね」

 一方、似たような商品なのに、中が見えないパッケージを使用しているものもある。「ドーナツ(FAMIMA CAFE)」のパッケージは透明ではなく、表に商品写真が印刷されている。中身を直接確認できる透明パッケージのメリットを捨てて、あえて不透明にする意図は何か。小川教授は、「店頭のカラーコントロールが目的ではないか」と分析する。

 ビジュアルマーチャンダイジングの概念が発達している欧米のチェーンストアでは、色ごとに陳列するカラーコントロールが普及している。イメージしやすいのはイケアなどの家具店だ。家具店ではさまざまなインテリアを扱っているが、ベッドなどの種類ごとに陳列するパターンの他に、赤なら赤、青なら青というように同系色でコーディネートしたコーナーをつくっている。そのほうが顧客にとってわかりやすく、購買につながりやすいからだ。

 「カラーコントロールしたほうがいいのは、コンビニの店頭も同じです。ただ、中身が見えるパッケージでは、味によって色が異なるドーナツ系商品をカラーコントロールするのは難しい。そこで、中が見えないパッケージを使って、カフェ空間を想起させるダークブラウンを基調にしたデザインで統一。それらを面で陳列することで、ドーナツ系商品の統一感を演出したのでしょう」

 中身がわかる安心感やシズル感を重視して透明なパッケージを使うのか。それとも他の商品と合わせてカラーコントロールしやすいように、中の見えないパッケージを使ってデザインに凝るのか。商品の特徴に合わせてうまく使い分けたいところだ。

マーケのヒント

・中身がわかる安心感重視なら透明パッケージ
・カラーコントロール重視なら不透明パッケージ