冷凍ケーキの真実: 常識を疑ってみよう!クリスマスの冷凍ケーキは、ほんとうにまずいのか?

 東洋経済オンラインで、「9月に作る!? 切ない「Xmasケーキ」の裏側」(12月22日)という記事が流れている。明日がクリスマスだからだろうが、「冷凍だからまずい」は神話である。ネタとしてはおもしろいが、近頃は冷凍技術が進化している。冷凍ケーキも十分においしいと思った方が正解だろう。



 こうした記事は、ひとびとの常識を根拠にしている。記事が示すように、たしかに、クリスマスケーキのほとんどは秋口(9~11月)に工場で生産されている。各社の冷凍庫に長い間、クリスマスケーキは在庫として眠っている。それは、集中的に生産ができないという企業側の都合でそうなっている。
 たしかに事実認識としては正しいのだが、「冷蔵されたケーキだからまずい」という証明はどこにもない。「冷凍ケーキ=まずい」という調査結果など、これまで見たことがない。その判断は、「そのまま長く置いておくと、一般的に生の食品は腐敗してしまう」という常識を拠りどころにしている。
 だから、「9月に作る!? 切ない「Xmasケーキ」の裏側」というタイトルは、誤解を生みやすい表現なのだ。ほんとうに、「9月に作るから切ないのか?」を科学的に検証してみる必要はないだろうか? きちんと冷凍しておいたケーキのほうが、町のケーキ屋さんが、忙しくして作るケーキよりもおいしいことだってありうるのではないか?
 常識は疑ってかかるほうがよい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 記事を引用してみる。
 
 次ページで解説しますが、ケーキは12月が1年の中でも突出して売れます。その理由はクリスマスケーキにあるわけですが、だからこそ、そこに思わぬ「裏側」が潜んでいます。
 みなさんがクリスマスに食べるケーキ、子どもたちがおいしそうにほおばるケーキ、それが3カ月前に作ったものだとしたら、どう思うでしょうか? 法律上、問題はなくても、どこか「違和感」はないでしょうか? そして、ちょっとした見分け方の「コツ」を知ることで、「おいしいケーキ」を選ぶことができるとしたら、どうでしょう?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 法律的におかしいのではなく、科学的にこの主張が証明できるかどうかである。
 おかしいと思うのは、「冷蔵だからおいしくない」の根拠である。食品の劣化が進むのは、常温の状態で食材の分解が進むからである。発酵過程のような感覚なのだろう。
 わたしの関与している花業界でも、母の日のカーネーションは、いまや約半分が冷蔵品である。母の日のほぼ一か月前に、中南米のコロンビアかエクアドルの農場で採花されたものである。船便で日本に向けて出荷される。庫内が0.2~2.0℃の冷蔵コンテナの中で仮死状態になったまま日本の港に到着する。
 植物(花)が老化して萎縮するのは、エチレンの放散が原因であることが知られている。だから、温度を下げて呼吸を止めておけば、植物の劣化は進まないものなのだ。そのことは、すでに科学的に明らかにされている。だから、食品の場合でも、ミイラ状態で冷凍しておけば、いつまで経っても「まるで生きているように」生体を維持できるのである。

 わたしは食品の専門家ではないが、花と同じことが、たぶん食品についても言えるだろう。下手に常温の状態で早く食べさせるより、瞬間的に冷凍したものを解凍してから食べる方がおいしいことだってあるのだ。冷凍状態では、材料の分解(酸化、発酵)が進まないからだ。
 お正月に食べるエビやカニは、ほとんどが冷凍である。だからと言って、世の中のひとから文句が出たことなど聞いたことがない。遠洋漁業の船上で、マグロやカニ、エビは瞬間的に冷凍される。その技術は、昔とは比べものにならないくらいに進んでいる。
 冷凍品のクリスマスケーキをバカにしてはいけない。きちんと作って冷凍保管しておいたケーキは、もしかすると、今晩から明朝にかけて(12月23日~24日)、ケーキ屋さんで作られている生のケーキとそん色がない可能性が高い。もしわたしの主張を疑うのなら、明日は町のケーキ屋さんと近くの食品スーパーに行って、トナカイと苺が乗ったデコレーションケーキを二つ購入してみるとよい。
 X’マスケーキを買う前に、「このケーキは、いつどこで作られたのですか?」と「冷凍ですか?それとも生ですか?」と聞くことを忘れないこと。そして、食べ比べるときには、二種類のケーキのボックスを見ないことだ。ブラインド(目隠し)でテストしたときに、冷凍ケーキの真実が明らかになるだろう。