「JAL SKY NEXT」(羽田~福岡:5月28日就航)は、スターフライヤーから顧客を奪うことができるか?

 JALのHPを見て愕然とした。トップ画面で、B777の座席シートは漆黒の革張り。ゆったりしたフットレストは、国内長距離輸送サービスで4年連続CSナンバーワンの「スターフライヤー」のコンセプトそのものではないか!アシスタントの青木が、「先生、これってコピー?」と思わず叫んでしまったほどだ。



 昨年来、日本航空や全日空に対して、長距離輸送の国際線部門で、従来型のマスサービス(Economy)から脱して、「プレミアムブランド」(たとえば、「ANA+」や「JALプレミアム」)を作るべきだと提案してきた。
 そうなのだが、JALの新路線のコンセプトは、まるでスターフライヤーの「サービスコンセプト」(ハイブリッドエアライン)を、そのままコピーしたように見える。
 両社(JALとスターフライヤー)のちがいは、同じ区間での運行密度(3便対10便)とターゲティングのやり方である。そのことを反映して、「JAL SKY NEXT」のCMキャラクターは「嵐」(トップページに登場)になっている。
 スターフライヤーのメインターゲットは、ビジネスパースンである。HPや機内誌を見るとそれがわかる。JALの嵐CMから察するに、JAL(SKY NEXT)は一般旅行客を対象顧客にしているだろう。

 さて、当面(5月28日就航)、「JAL SKY NEXT」は、羽田~福岡間で往復3便。午後便が多いのが目立つ。具体的には、往路の「東京(羽田) → 福岡」は、出発時刻と到着時刻が、
 JAL 303  7:25発 →  9:15着、
 JAL 315 12:25発  → 14:15着
 JAL 325 17:25発  → 19:15着
の三便となっている(「福岡→東京(羽田)」も毎日3便)。そして、この3便を含んで、通常の機体と内装(B社製)で飛んでいるJAL福岡行きは、全部で毎日18便ある。

 それとは対照的に、スターフライヤーのほうは、「羽田→福岡」の路線に毎日往復10便。早朝深夜帯の利用を考えた運航スケジュールになっている。具体的には、「東京(羽田) → 福岡」で、出発時刻と到着時刻が、
 SFJ 41 06:40発 → 08:30着
 SFJ 43 08:05発 → 09:55着
 SFJ 45 09:10発 → 11:00着
 SFJ 47 10:15発 → 12:05着
 SFJ 49 12:15発 → 14:05着
 SFJ 51 13:55発 → 15:45着 
 SFJ 53 15:50発 → 17:40着
 SFJ 55 17:45発 → 19:35着
 SFJ 57 18:40発 → 20:30着
 SFJ 59 20:05発 → 21:55着
となっている。
 なお、同じ方面の路線としては、SFJには、「東京(羽田) → 北九州」が、往復12便(福岡市内までバスで約1時間)。もっとも早い便は、SFJ 73 07:40発 → 09:20着で、もっとも遅い便は、SFJ 95 22:55発 → 00:35着である。
 運賃体系は、ほとんど同じである。「東京(羽田)→福岡」のノーマル運賃は、SFJが27,500円(通常期)、JALは、37,990円。ただし、4週間前の割引(特割など)で買えば、両社の値段はほとんど変わらない(片道12,000円前後)。

 ここで、ビジネス思考のための練習問題である。

<Q1> JALの新コンセプト(「JAL SKY NEXT」)は、スターフライヤーから顧客を奪うことになるだろうか?
<Q2> スターフライヤーは、なんらかの対抗処置をとるべきだろうか?
<Q3> ANAは、両社の戦いに対してどのように対応すべきか?
 *ANAは、「羽田(東京)→福岡」に、毎日往復28便を就航しているが、そのうちの10便はスターフライヤーとの共同運航便(コードシェア便、スターフライヤーの機体)である。ノーマル料金も、JALと同じ片道37,990円である。

<Q4>
(1)JALの新コンセプトは、他の路線に拡張できるだろうか?また、
(2)そもそも、「JAL SKY NEXT」は、現状では「特定路線に向けた特別な内装」を持つ機体サービスを指しているが、「サービス」の差別化に対しては、HPを読む限りでは特別なコメントがなされていない。
 新ブランドとして実験と位置づけるならば、JALとしては「サービスの差別化」も同時に目指すべきだろうか?また、JALにとって、それは有効な方策だと言えるだろうか?

 このような問題は、3か月もすれば、結果が出てしまう。みなさんは、どのように予測するだろうか?