上海花便り(余禄): 上海ヤマザキ@久光百貨店(「山崎製パン株式会社」の海外事業)

 原稿書きに追われて、上海の山崎製パンの話を書くのを忘れていた。先月初旬に、上海の久光百貨店のデパ地下で、驚愕の光景を見てしまった。「中国人消費者、侮るべからず」である。上海の山崎ベーカリーカフェ@久光百貨店は、中国人の女性やカップルで大賑わいだった。



 山崎製パン株式会社は、事業報告書によると売上高が1兆円弱。年々、売上を増やしているだけでなく、海外展開もかなり積極的に行っていることを知った。アジアをはじめとして、全世界に工場や店舗をもっている。かつては、オランダ人から日本でパンの事業をやりたいと相談を受けたこともあるが、いまや日本の製パン技術の方が優れているのかもしれない。

 さて、5月19日に、上海のデパ地下で「山崎ベーカリーカフェ」(調理パンの販売)に遭遇したことは簡単に報告した。夕方の4時ごろ、短いフィールドワークの結果を報告する。短い時間しかとれなかったのは、本来の目的が花屋さんめぐりだったからだ。
 地下一階のインストアベーカリーは、目測で約20坪(60㎡)。レジ台数は4台。しかし、混雑しているので、ダブルレーン(袋詰めとキャッシャーがペアでレジを受け持つ)である。とにかく来店客が多い。
 ほとんどが複数で買い物をしている。お目当ては、調理パン。店内でオーブンを置いて作っている。これに尽きる。ひとり4~5点で、お手頃なラインの調理パンが一個4~5元(70~90円)、プレミアムラインが一個8~10元(130~160円)。客単価は約30元(500円)。

 日曜日の夕方で、4台のレジが空くことはほとんどない。レジの対応時間は、ひとり約1分。客数は、一時間で240人。1時間当たりの売り上げは12万円で、日販は120万円(10時間営業として)。月商約3000万円。年商約3.5億円である。インストアの20坪で、日本のコンビニの2倍を売り上げている。
 中国上海のコンビニの日販は、日本の約半分(20~25万円)。だから、百貨店内のベーカリーカフェ(山崎)の売上は4倍の効率となる。すさまじい売り上げの要因は、ひとえに、中国人消費者にとって、調理パンがめずらしいからだろう。そして、たぶん実際にもおいしいからだろう。お土産のごちそうとして買われているように見える。 
 一方で、日本企業は中国市場から撤退気味である。しかし、山崎製パンや日比谷花壇の盛況ぶりをみていると、もうしばらく我慢をすれば、そして日中関係が雨からくもりに変われば、日系企業が消費分野で成功する可能性がないわけではない。いや、ビジネスチャンスはまだ無限大で、ようやく市場が開け始めているのかもしれない。そう感じた次第である。

<参考資料> 山崎のHPから(アジア事業)
 
[アジアでの展開]
 ヤマザキの海外進出は、1981年に「香港ヤマザキ」を設立し、フレッシュベーカリー第一号店を開店したことから始まりました。その後、1984年には「タイヤマザキ」、1987年には「台湾ヤマザキ」をそれぞれ設立しました。これらの国や地域では当社の技術による日本スタイルのパンが食文化の壁を越えて受け入れられています。
 現在では香港、タイ、台湾、シンガポール各地にあるセントラル工場で最新技術を使った冷凍生地を生産、これを活用して店舗を展開しています。 1998年にはマレーシアに「サンムーランヤマザキ」を、翌1999年にはシンガポールに「サンムーランヤマザキ・シンガポール」を設立し、フレッシュベーカリーを開店しました。
 さらに2004年には中国本土への第一歩として「上海ヤマザキ」を設立し、上海の久光百貨店にベーカリーカフェを開店しました。中国でもヤマザキの知名度は高く、待望のヤマザキの出店として開店当初から話題となり、その後も順調に売上を伸ばしています。 2006年からはシンガポールの「フォーリーブズ社」の運営に参画しました。