【映画評】 ケン・ローチ監督「天使の分け前」(★★★★★)

 連休の5月4日、銀座テアトルシネマでロードショウ上映中の「天使の分け前」(Angel’s Share)を見た。ケン・ローチ監督作品のイギリス映画である。美しくも寒々としたスコットランドの原野と街並み、ウイスキーの醸造所が舞台になっている。見て泣いて笑ってのハートフル・コメディである。



 タイトルの「天使の分け前」とは、ウイスキーやブランデーなどが樽の中で熟成されている間に蒸発し、中身が減っていく減少分のことをいう。樽の中で熟成していくウイスキーは、分量が年間で約2%ずつ減っていくらしい。この「天使に取られしまう分」があるからこそ、ウイスキーの中身が凝縮され、時間を経るごとにますます美味しくなっていく。
 映画のラストシーンで、この言葉(Angel’s Share)が大きな意味を持ってくる。それは、映画を見てからのお楽しみである。
 この映画を見て、何に感動するのか? それは、人生に苦闘する若者(ロビー)が、自らの未来に希望を見出し、同時に親たちの世代(ハリー)が自分たちを見守ってくれていたことに感謝の気持ちを抱くとき。心温まるその瞬間をみることができることだろう。

 あらすじを紹介する。

 映画の舞台は、スコッチ・ウイスキーの故郷スコットランド。 家族のしがらみからケンカ沙汰の絶えない青年ロビーは、またもトラブルを起こすが、恋人との間にもうすぐ子供が生まれることに免じて刑務所送りを免れ、社会奉仕活動を命じられる。そこで出会った指導者のハリーにウイスキーの奥深さを教わったロビーは、テイスティングの才能に目覚め始め…(「天使の分け前」公式HPから>

 最後に、無事に父親となって更生した主人公ロビーが、ウイスキー醸造所でその後どのような人生を送るのか気になるところではある。個人的な感想である。いずれにしても、ストーリー展開など、脚本がよくできている。2012年カンヌ映画祭審査員賞受賞作は、納得である。

 このところ、「エデン」「横道世乃介」「天使の分け前」と、★5つの映画が3本続いている。実は、鑑賞失敗作(★2や★3)も中間にはあるのだが、それは本ブログでは紹介していない。映画館で見ている作品がすべて「当たり!」(★4や★5)というわけではない。
 打率は高いほうだと思うが、それほど映画のセレクション(内容識別能力)は完璧ではない。

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<公式HPから抜粋>

監督:ケン・ローチ
出演者:ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショウ、ロジャー・アラム、ガリー・メイトランド。
2012年カンヌ映画祭審査員賞受賞作 銀座テアトルシネマクロージング作品

これまでも『ケス』『SWEET SIXTEEN』などで、厳しい現実から抜け出そうとしてもがく若者を描いてきたケン・ローチ監督だが、 本作は、行き場のない若者が師や仲間との出会いによって、自らの手で<人生の大逆転>を手繰り寄せようとする、これまででいちばん痛快で感動的なヒューマン・コメディ。 スコットランドの有名な蒸留所も登場し、美しいハイランドの風景や名物“キルトスカート”の魅力もたっぷりに楽しめ、泣いて笑って、ラストには、この「天使の分け前」という言葉が大きな意味を持ち、爽やかな温かさで胸がいっぱいになる最高に感動的な一本。
イギリスではケン・ローチ作品史上最大のヒットとなった本作に、どうぞご期待下さい!