米米談義: 中国産米は食べるに値するか?

 スーパーの西友が、中国産米を輸入して販売していることが話題になっている。品切れ続出と報道されているが、よく聞いてみると圧倒的に安いというわけでもなさそうだ。そんなときに、上海交通大学の花き研究所教授(所長)に就任した西村潤さんにお会いした。昨夜は、市ヶ谷のイタリアンで米談義に花が咲いた。



 西村さんは、元キリンアグリバイオカンパニーに所属していた植物博士である。中国駐在が長く、語学が堪能であることから、上海でもトップクラスの有名大学である上海交通大学(日本でいえば、東京工業大学?)の教授として招へいされた。
 上り調子の中国の大学では、研究費がふんだんに使えるらしい。要求すれば、億単位の金が簡単に転がり込んでくるらしい。不動産バブルどころか、研究費バブルである。どこからそんなお金が湧き出てくるのか。
 でも、日本がいつか来た道を中国も歩いているらしい。良い時の山が高い分、きっとコケルときは瀕死の重傷を負いそうだ。わたしたちもそうだった。

 さて、昨夜の会話の途中のことである。わたしがコメの生産性や流通コスト構造を調べているという話をしたら、西村さんは、中国産米の味についてコメントをしはじめた。
 中国産米は韓国が大量に輸入して、マッコリの原材料にもなっている。値段は、国産の約5~10分の一である。飲料メーカーのサントリーなどが、韓国産のマッコリを輸入している。販売額も半端ではない。
 2011年の実績では、日本のマッコリ消費市場は約80億円と推定されている(大学院生の川村君調べ)。だから、日本人の呑み助たちは、間接的にアルコール飲料として中国産米を「食べている」ことになる。
 西村さんいわく、「(でも、)中国のコメって、洗っても洗っても白くならないんだよね。日本のコメは、3回水でとげば、透き通って透明になる」。中国産米は、10回洗っても白くはならないらしい。
 西村教授の解説によると、日本産米は炭水化物の含有量が多い。そのように品種改良されていて、日本の米農家もそのようなコメの作り方をする。それに対して、中国産米は成分としてはタンパク質をより多く含んでいる。だから、何度洗っても白くはならない。ということは、うまみの成分が根本からちがうのである。

 この先は、わたしの推論である。
 中国産米は、国産米に比べて2~3割は値段が安い。スーパーや外食産業は、将来的には、もっと輸入量を増やして販売したいと言いだしそうである。ちなみに、生産コストは10分の一で、現状では圧倒的な開きがある。ほとんどが輸入課徴金であるから、TPPが日本の農家に対して脅威になる。だから、一見すると、中国産米を使用したり、販売したりする機会は増えそうなのだが。
 しかし、西村仮説が正しいとすると、中国産米は日本人の味覚には不適合ということになる。いまはまだめずらしいので、マスコミも外国産米を持ち上げている。食味テストの結果として、「消費者は中国産米はおいしいと言ってます」と報道している。

 現実はどうなのだろうか。多量に出回り始めれば、かつてのタイ米(長粒米)と同じことになるのではないか。日本人は安いからといって、自分たちの味覚にあわないコメを食べようとはしないだろう。タイ産米の緊急輸入時に、わたしたちが経験したことである。
 日本人は、一年間に約60KG(1俵)のコメを食べている。むかし(江戸時代)は、150KG(2俵半)を食べていたらしい。所得が増えて、消費量が減っているのだから、ますますコメの味にはうるさくなってきている。1俵のお値段は、銘柄にもよるが1万5千円前後である。365日で割れば、わずか約40円である。

 結論と推論は、明らかである。たぶん、中国産米が大量に流通することはないだろう。
 なお、韓国のマッコリと同様に、日本酒の原材料としても、中国産米を使用するというアイデアは、これで否定的になる。
 おいしい日本酒を造るためには、たとえば、純米酒では3割のコメを削っている(利用率70%)。大吟醸では、それが7割にもなる(3割しかコメを使わない)。純粋な炭水化物(でんぷん質)でお酒を造るためである。