年末からの風邪が悪化して、自宅待機である。熱はないので寝込むほどではないが、本日の米沢行は見送ることにした。山形プレミアム弁当の「試作品(春バージョン)」が完成している。学生たちは評価会のために、山形新幹線つばさ号に乗っているはずである。
風邪をこじらせてから、これで一週間になる。これほどしつこい風邪はひさしぶりである。原因はいくつか考えられる。
(1)寒い中、毎日の忘年会(全部で14回)。来年は控えめにしよう!
(2)年末の朝帰り。GRCの打ち上げでカラオケ三昧のあと、セブンイレブンでおでんを買って中川亭に沈没。
(3)年末の走りすぎ。距離を稼ぐために、寒い中を無理やり走った。焦りすぎだった。
そんなわけで、自宅蟄居である。書き終わっていない「DIY白書(2011年度版)」に手を付けないと。しかし、体調が悪いので、着手にはあまり気がのらない。
昨夜は、そんな体調不良の中、院生の指導が終わってから、有楽町の読売ホールに出かけた。「MY WAY: 12000キロの真実」の試写会である。これも、体には悪かったかもしれない。苦しい弁明ではある。
映画の評論は、あまり得意分野でもない。以下は、素人の映画批評である。的外れの評価ならば、専門家の方にはお許しいただきたい。
マラソンの話だというので、ふだんはあまり行くことがない試写会に出かけてみた。だが、わたしの評価は「B」(悪くはないが、ひとによっては時間の無駄)である。最近は、劇団四季の「美女と野獣」にしても、あまり外していなかった。この評価結果(たぶんわたしの主観なのだが)は、とても残念だった。
この作品は、興業的にはあまり成功しないだろう。金をかけた割りには、シナリオの作り方がいまいちなのだ。戦争に対する目が反日的にすぎて、日本人の観客には後味の悪さが残る作品である。
マラソンが主題である。そうであるならば、ノモンハン国境からロシア抑留生活など、戦争の場面ばかり(1930年代後半~40年代)をスペクタクルに映すべきではない。映像の半分は、マラソンなどの挿話にした方がよいだろう。あるいは、戦前の平城(ソウル)市民の日常生活をもっと丁寧に描くべきである。
わたしがシナリオライターならば、主人公(日・韓のマラソンランナー好敵手)の競走場面やトレーニングの姿にもっと多くの時間を割り振るだろう。戦闘場面ではない、ふつうの生活シーンを増やす。戦争と日常の対比が、この映画にはもっと必要である。日本映画の「人間の条件」(仲代達也主演)のほうが、その点では出来栄えがよかった印象がある。
まぼろしの東京オリンピック(1940年)の選抜に至るまでのストーリーは、あまりにも単純すぎる。スポーツの良さは、レースに到達するまでの緊張感や訓練のきびしさの中にある。わたしはランナーである。なので、監督もシナリオライターも、マラソンを走ったことがないことがわかってしまう。
長谷川(オダギリジョー)がゴールに向かって走っていく、ロンドンマラソンの映像は不自然である。箱根マラソンを見たばかりのランナーとしては、走る姿のリアリティの欠如を感じる。がっかりしたのは、わたしだけではないはず。
スポーツ競技を通した友情を描くのであれば、日本人の視点と韓国人の視点を対比させる工夫がほしいかったように思う。カメラが追いかけているのは、占領政策によって苦汁をなめている韓国人の目線である。それだけである。抑圧している日本人の側にも、一瞥を与える瞬間がほしかった。
物語の進行に厚みが欠けているのは、歴史認識と思想性にこだわりすぎたせいだろう。ふたりの主人公、長谷川辰雄(オダギリジョー)とキム・ジュンシク(=チャン・ドンコン)の演技は素晴らしさ。しかし、戦争を激しく描こうとするあまりに、二人の演技の良さを帳消しにしてしまっている。オダギリもキムも上手で美しい役者なのだが、彼らの置かれた設定に真実味が乏しいのだ。演じようとしている人間像が、少なくともわたしの心の奥深くには突き刺さらなかった。
平和(スポーツ)と戦争(非日常)という対比がうまく描けていないのは、シナリオのせいではないかと思う。ふたりが戦場を生き延びていく設定にも無理がある。行定監督は一流なのに、である。どうしたことだろうか。
参考:
物語のあらすじ(「マイウェイ」の公式HPから)
1928年日本占領下の朝鮮で日本人と朝鮮人の少年が出会った。境遇は全く違うが、走る事が好きな二人はマラソンでオリンピック出場を夢見た。しかし、時代は国籍の違う彼らの友情を許さなかった。運命のいたずらにより、彼らは日本・ソ連・ドイツ3つの軍服を着て戦うことになる。アジアからノルマンディーまで12,000キロにも及ぶ戦いの中、全てを失っても生きる道を選んだのは何故か?そこには衝撃の事実と感動のドラマが隠されていた。
監督・脚本・製作 : カン・ジェギュ 『シュリ』『ブラザーフッド』
出演 : オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビン他