「格安ホテルの秘密」『Big tomorrow』連載第20回(2010年3月号)

 4000円代で快適に泊まれると、出張族に人気のビジネスホテルがある。その名もスーパーホテル。宿泊客には常連やリピーターが多い。「また来たい」と思わせる理由は、いったいどこにあるのか?


スーパーホテルは、宿泊料金が安いのになぜ満足度が高いのか?
 ビジネスホテルというと、昔は“安かろう悪かろう”の印象が強かった。
 だが、最近は事情が変わってきている。
「1泊数万円のシティホテルよりも顧客満足度が高いビジネスホテルがある、という調査報告があるんです」
 そう解説するのは、小川孔輔先生。
 たとえば、全国に93店舗を展開するスーパーホテル。朝食は無料で食べられ、1泊4980円~。低料金ながら、シティホテル以上の評価を得ている。

フロントがたった1人でも受付業務には支障ゼロ!
 そもそもスーパーホテルは、どうやって低料金を実現しているのか?
「ホテルの宿泊料金は、土地代と人件費で決まります。ビジネスホテルは駅から近い便利さが魅力ですが、スーパーホテルは若干離れたところにあります。駅から3分離れただけでも、土地代はかなり安くなるからです」
 低料金のもう1つの秘密が人件費の抑制。
「スーパーホテルでは、フロント係を介さずにチェックインできるよう、自動チェックイン機を設置しています。お金を投入すると、キーではなく、部屋の暗証番号が記された紙が出てきて、暗証番号でドアの開閉する仕組みになっています。また、部屋には電話が設置されていないため、電話取次や清算業務の人員がいりません。そのため、通常は2人必要なフロント係も、1人いれば十分なのです」
 フロント係1人の給料を月30万だとすると、約100店舗で3億6000万円。このぶんのコストが抑えられているのだ。

顧客満足度を高めるためのキーワードとはいったい…
 だが、単に安くしただけではシティホテルを上回る評価は得られないはず…。
「じつは、コスト抑制と顧客満足度アップを両立させるために、“LOHAS”をコンセプトの1つにしています」
 バスタブにはお湯の入れ過ぎに注意する節水ラインが引いてあり、シャワーヘッドも節水仕様で水圧が低め。ひげそりやハブラシなどのアメニティも最小限しか置いていない。
「資源のムダ使いをなくすことはコストダウンに直結しますが、それを“LOHAS”と銘打てば、むしろ、お客さんは環境に貢献している気分になれる。また、コストダウンしたぶんは、宿泊客が自由に選べる枕を選べるサービスに充当。それが満足度の高さにつながっているんです」
 チープさを感じさせないイメージ戦略は、自動チェックイン機にも当てはまる。
「本来は人件費の削減が目的であっても、お客さんには『チェックアウト時に清算なしですぐ帰れる』とアピールすれば、便利な気がしますよね。コスト削減による低料金を前面に押し出すとチープな印象を与えますが、視点を変えてアピールすれば、ホテルのイメージアップなるんです」
 ストレートに“安さ”だけを強調しない、この巧みな表現力も、お客の心をくすぐるのかもしれない。デフレだからといって、やたらと“安さ”をアピールしようとしているあなたの会社も、見習ってはいかが?