書評:堀ミチヨ(2009)『女湯に浮かんでみれば』新宿書房(★★★)

男ならば一度は覗いてみたい、女湯の話である。しかし、この本を読み終えて思ったのは、「(、、、)やめておいた方がいい」であった。筆者が二年間滞在したチュニジアから、いまお住まいの神楽坂まで、スーパー銭湯に押されて、日本からしだに消え去ろうとしている銭湯のなかで繰り広げられる、女どもの戦いが記されている。


朝日新聞か日経新聞で書評を読んで、ずいぶんと長い間、持ち運んでいた本である。電車の中で読むには、ちと恥ずかしいタイトルであった。中身の内容(劇)もすざましい。やはり読まれる方は、ブックカバーをしたほうがよいだろう。
 著者の堀ミチヨさんは、神楽坂にお住まいのようだ。飯田橋の高層マンションには、同僚の竹内淑恵先生が住んでいらっしゃる、その坂の下にある「コナミスポーツクラブ飯田橋」に、わたしは20年近くも通っていた。神楽坂のどこかで、著者とすれちがっていることは間違いない。
 都内にある銭湯が、本書で紹介されていた。麹町の銭湯(パンドゥーシュ)があることは、皇居を走るランナーとして知っていた。しかし、神楽坂の「熱海湯」は知らなかった。先日、法政大学のマーケティング研究会(土葉会)の忘年会でも、千代田区、新宿区の銭湯のことが話題にのぼった。わたしたちの世代にとっては、風呂上がりのコーヒー牛乳とアップルジュースが銭湯の象徴だった。みなさん、「うん」との合意を得た。共同幻想である。

 本書に注文をつけるとすれば、「もくじ」に、銭湯の一覧がほしいことである。首都圏ならば、地図があったりするとなおうれしい。わたしならそうする。筆者推奨の「銭湯散策マップ」とか、、、巻末に協会などのURLが参照できるようになってはいるが、それはまた別の情報である。
 年明けには、弟子の酒井麻衣子(多摩大学准教授)さんたちと、東京の銭湯巡りをすることになりそうだ。女湯を覗くつもりはないが、お風呂上がりに、堀ミチヨさん張りに、千代田区の麹町界隈で、皆さんとビールを飲もう!皇居の周辺を走る企画が、それにおまけにつくと、もっと盛り上がれるかな。