海外のバラ栽培 現状の報告(オランダの専門誌から)

原典は、VAK BLAD VOOR DE BLOEMISTERIJ 50(2008)です。オランダ駐在の山本清子さんが翻訳し、小川が一部修正したものです。オランダ語がわからないので、技術的な部分で一部は不明です。お許しください。ある種のデータ集と見て、お読みください。この記事からは、バラの栽培面積の傾向がわかります。 


オランダのバラ栽培面積は、経営者の高齢化、倒産、経費の高騰、売り上げが伸びない等の理由で縮小した。オランダでは、主に赤と白色の大輪のバラが500ヘクタール栽培されている。「LTO GROEISERVICE」の会合で専門家によって、世界におけるバラの重要な栽培国の状況についての説明があった。それぞれの国においても、すべてがバラ色で太陽が燦燦と降り注いでいるばかりの状況ではないようである。

<要約>
 外国におけるバラ栽培面積は伸びているが、生産者にとっていまの事態は容易ではない。労働賃金、輸送費、肥料経費、農薬等が高騰している。輸入国にとっては、現状の為替格差(注:ドルやユーロの下落)が不利に働いている。良い品種選択、有能なマネジメントが、以前よりも事業成功のために重要なポイントとなっている。

<エクアドル>
バラ栽培面積:2700ヘクタール
品種:極めて大輪

この国は、最近栽培を始めたが、1990年の半ば頃に、爆発的に耕作面積を拡大した。21世紀に入ってから発生した為替問題で多くの農場が倒産した。銀行が農家を買収したが、投資はほとんどしなかった。そのために、全ての温室より最高の品質のバラが収穫される状況ではないが、数社は、最高の品質の物を作りヨーロッパ市場、特にロシア市場を獲得する事に成功した。
日照量が多く、日中が温かく夜の温度が低く、土壌が清潔であるため、バラ栽培において、輪が大きく発色の良い鮮やかなバラを作ることができる。
バイカラーのバラが多く栽培されているが、エクアドルのバラ栽培者間では、赤色、白色、黄色を積極的に栽培している。総じて、一品種当たりの耕作面積は狭い。
少数の果敢な生産者だけが、1品種を1-1,5ヘクタール作付けしている。この様な事情により、特定品質の量産は無い。会社の大部分は、コロンビア人、ヨーロッパ人といった外国人が所有している。エクアドルのバラは、大輪で高品質である。色についても、オランダの生産者が注目している。オランダのバラ生産者にとっては、アフリカのバラより競合すると見られている。オランダの「アヴァランチェ+」?は、エクアドルのバラの競合相手である。このタイプのバラは、オランダでは充分な色が出ないのでバイヤーは買わない。
コロンビアのように、エクアドルでは暖房費が必要ない。ほとんどが、土耕である。雨で、暗い気候の時期は、生産量も急落する。南アメリカ諸国の生産性は比較的低い。1m2 80-90本が普通である。生産者は、この収穫量で充分に採算が取れている。販売値は、1本50から60セントである。荒っぽく推計すると、エクアドルでの生産経費は、空港までで1本につき20セントで、航空輸送料が1本に付き20セントである。彼らは、オークションを大型の賭博場と見ている。
この国の事業者にとっては、政治の不安定が困難な要素である。それが、突然の経費高騰につながる。エクアドルのバラの強い点は、高品質の他に、質の良い共同のプロモーション組織があることである。1つのトレードマークとなっており、収穫後の段階で、生産者が競合相手との差をつけることができる。

<コロンビア>
バラ栽培面積:3000ヘクタール
品種:大輪

コロンビアは、昔より幅広く花の種類を栽培している。バラは、気候条件の関係でエクアドルほど輪が大きいわけではない。各方面よりの情報によると、コロンビアにおけるバラ栽培は、大きな問題に直面しているとのことである。再成長するためには、栽培面積の削減が必要と考えているひともいる。
ペソが高くなったことと、バラの決済が弱いドルで行われていることで、強度の金融問題がある。北米の国が約90%のバラを購入しているので、北米市場が縮小しているので、販売をヨーロッパに向けようとしている。コロンビアは、マーケティングに長じており、販売ルートを熟知している。場合によっては、従来の輸送方法を変えて、(FEDEXのような)書類郵便で顧客に送るとバイヤーが話している。コロンビアのある会社では、既にオランダに事務所を開設している。これはまだ例外的ではある。資金不足が多くの会社にとっての喫緊の問題となっている。将来、多くの会社が裕福な投資者の所有になると予想されている。
80年代、90年代と豊かな時期が続いていた。今は急に全てを秩序立て建て直していかなければならない状況となった。豊かな時期に甘んじて、会社は安閑と居眠りをしてしまい、その間に競合対策やマネジメントの点で、あるいは、品質の点においても。優れたエクアドルに追い抜かれてしまった。

<タンザニア>
バラの栽培面積;150ヘクタール(うち1年未満は50ヘクタール)
品種:現在、急速に小輪から中輪に変化

タンザニアは、アフリカのバラを栽培している国のうちであまり知られていない国のうちの1つである。合計園芸栽培面積は、500ヘクタールである。オーストリアの会社MAUNT MERUFLOWERが、4年前に元バラ生産者であるTon Verheul氏の協力により設立した。現在は、15ヘクタールの面積にバラが栽培されている。品種は「中間層?」と呼ばれる、例えば、「レッド リボン ベルローズ」が多量に栽培されている。
タンザニアの土壌は砂質なので、培養土が必要である。「MAUNT MERUFLOWER」では、空気が作物の下に入るようにバラは、台に設置されている。VERHEUL氏によると、これが、かびの病原菌を押さえるとともに,農薬が能率的に散布できるので、作物保護にもっと効果がある。ヨーロッパ的な培養土での栽培方法は、1㎡付き€3-€4の余分な投資が必要である。(注:このパラグラフは、生産技術がわからない小川には意味不明でした)
タンザニアでは、質の良い潅水設備が無く、ハダニが一番の害虫である。VERHEUL氏によると、アグロバクテリア?による損傷がばら栽培においての大きな問題である。作物が、少しでもストレス状態に陥ると、アグロバクテリアが発生する。アフリカではこれが致命的な結果をもたらす。タンザニア政府は、園芸を補助金と土地提供(借地として)でサポートしている。
オランダ政府も、事業家を現地でサポートしている。そのため、数年来、バラ栽培施設に多額の投資がなされてきた。優秀な経営が全ての会社でなされているではないので、全く収穫が出来ない場合や、低い収穫率になることもある。
航空貨物便の手配が容易でなく、時には、適切な航空便に乗せるために、長時間のトラック輸送が必要になる。タンザニアのばらの90%は、オランダに輸出されている。花の栽培は、特に北部地域のARUSHAとKILIMANJAROで行われている。南部地域のMBEYAとIRINGAも、気候的には花栽培に適している。

<ロシア>
バラ栽培面積:100ヘクタール
品種:モダーンな品種(主に大輪)

この数年来、バラの栽培面積が伸びてきたことを、バラの元生産者でコンサルタントのHENNY BROCKHOFF氏が自信を持って話している。彼は、マーケティング顧問として頻繁にロシアに来ているが、経済状況が難しいために各種の計画が留まっているとも付け加えた。
BROCKHOFF氏は、一区画が3ヘクタールで、近代的で補光設備が整った大規模施設がスタートしたのを見学した。ほとんどの施設は、富豪のロシア人のものであるが、外国の銀行の参入も活発である。オランダの銀行も投資に加わっている。
ロシア政府の補助対象は、野菜のプロジェクトのみである。特に輸送費が高いので、ロシアでの事業設立経費はオランダより高い。また、利息は14%である。ガス代は、1立米4-6セントであるが、徐々に高くなっている。と彼が話す。
モスクワ近辺の労働者は、月に€600稼ぐ。町より100キロ離れたところでは、此れが半額になる。ところが、ロシア人は勤勉に働くので、1ヘクタールに6、7人で充分である。特に優秀なるマネジメントを、ロシアでは必要とすると説く。大半の栽培技術は、オランダから来ている。
品種は新しい。赤バラのレッドナオミは、オランダでは12ヘクタールの規模で定植されている。ロシアの面積では、9ヘクタールである。「私どもまだ全部を売り切っていない」とSCHREURS(ガーベラ、バラ育種会社)の代表者が話す。
「1平米の生産量はオランダより20%低く。とくに乾燥した気候がマイナス要素になる」とBROCKHOFF氏が言う。ロシアは低湿度なので、うどん粉病はそれほど問題にならない。ハダニは、乾燥を好むので、発生すると事態を難しくさせる。ロシアのバラの強いところは、商品が1日以内に卸売商のところに届くことである。
オランダのバラは、3-4日輸送にかかる。それでも、卸商のところでオランダのバラは良い地位を維持している。ロシアで販売されるバラの30%は、オランダから来ている。60%は、エクアドル、コロンビア、20%はアフリカ産である。
ロシア産のバラは、店売りされているエクアドルの競合相手となるとみられる。エクアドルのトップクラスのバラは、そこでは売られていない。ロシアでは、店頭販売がまだ確立されていない。

<エチオピア>
バラ栽培面積:700ヘクタール(そのうち500ヘクタールで生産)
品種:特に中輪で各種の色

この6年来、エチオピアのバラ栽培が確立された。しかも、いまだに、面積と生産量においての成長が続いている。ある市場担当者の予想では、エチオピアのバラの85%がオランダに輸送されているとのことである。
販売については、現状での航空輸送経路の関係で、最初の頃は、ドイツに着荷していた。しかし、充分に量が確保できるようになったので、いまや直接オランダに送られるようになった。
問題は、旧共産党の組織が、航空貨物に利権を持っていることである。ある関係者の話によると、輸送の能力と信用度はまだ成熟していない。オランダに着くバラの4分の3は、オークション市場を通して販売されている。
20%以下のエチオピアの生産者が、売り上げの80%確得している。それらの生産は、オークションのメンバーである。フロラホーランドのマネジャーであるPETER BOUMAが、そのようにセミナーで語っている。
生産者で直接販売をするのは、希望すればそれができるからである。一部の生産者がセリでの販売を避けるのは、品質が良くないためである。エチオピアの政府は、バラ栽培を立ち上げることは限界に達していることを理解している。
だから、彼らは有利な貸付金と借地制度で実業家を援助する。全くバラの栽培知識が無く、幸運のみを探すためにバラ栽培に参加するのではない。あるビジネスマンは、政府よりバラの施設を始めるように任命された。エチオピアの経済発展のためには、強い外国通貨が必要である。
ZIWAYでのGERRIT BARNHOORN氏のSHERプロジェクトは、規模が最大で、一番有名でもある、これは、エチオピアで、どのようにバラ栽培が開発されているかを示す代表的なプロジェクトである。数ヘクタールを短期間に生産にこぎつけたが、悪い例としては、施設でバラがまだ定植されていない。施設でバラが定植されているもので既に売りに出ている施設もある。優秀なマネジメントと栽培技術が充分に無い事が、そこではマイナスになる。密なるコミュニケーションと品質に関しての鋭い目配りが、必須である。エチオピアに栽培圃場を持っているオランダの生産者が語る。そして、ある種のことまでしか、遠隔指導は出来ないとの事である。
新しい品種も開発されているが、色で白や赤はアフリカの生産者にとっては難しい色である。

<ケニア>
栽培面積:2300ヘクタール
品種:主に中輪であるが、小輪大輪も栽培している。

エチオピアと同じように、ケニアも新規の生産者は少ない。規模拡大は、現存の生産農家だけである。バラの栽培事業に、多くの外国の資本が投入されている。エチオピアとの違いは、質の良くない生産農家は既になくなっていることである。この数年で、100ヘクタール生産面積が増加する予定である。改良された栽培知識とよい品種の選択により、1m2あたりの生産量も増えている。概算では、250-300ヘクタールが,改植すべき状態にある。
品種の選択は、更に困難になっている。生産者は、広範囲にわたるテストの後に安全な品種を選ぶ。とくに、豪華で卸売りに適した品種に人気がある。しかし、常にコスト計算に注意していなくてはならない。生産量も大切であるが、航空輸送料金が高いので、ボリュームや重量も考慮する必要がある。全般的に、ケニアでは、新規の開発に厳しい逆風が吹いている。
為替で利益が吹き飛んだだけではない。ある生産者は、ユーロとドルの為替格差で利益を上げられると考えているが、これは賢明なことではない。経費が随分高くなり(1本につき約25%高)、銀行が融資に対して厳しくなり、購入者は支払期間を延ばし、1本に対する利益も減少している。
インフレーションの率(20%)も高く、英国への直接販売も減少した。英国向けの荷物は、ケニアの空港を出るバラの本数の30%である。ケニアからの花き輸出の中で、バラは80%を占めている。ケニアのバラの3分の2は、オランダに来るが、オークション市場の支払保証方式により、この状態は急速に変化することはないであろう。
ところが、生産者は、ケニアからオランダ以外の国への販売ルートを発見しはじめている。ケニアにある商社の支店が、これに貢献している。フロラホーランドのPETER BOUMA氏は、ケニアよりロシアへの直接取引が、500万本より8000万本に増加した事実を伝えた。BOUMA氏によると、ケニアの大半の生産者は、英国の量販店が強制する事により、花持ち保証制度を確立している。この保証制度は、ある商業チェ-ンにおいてはプラスになる。