「何かが変わった! 花業界の2008年を振り返る」(JFMAニューズ2008年12月25日号)

 2008年度は、一年間の研究休暇をいただいた。この期間を利用して、海外・国内ともに、たくさんの花の現場を見て歩くことができた。体験からの直感である。日本の花業界で、急激に主要なプレイヤーが変わっていく予感がする。世界の花産業でも、主役の交替がはじまっているのだろう。そう感じる理由を、イベントの順番に整理してみる。


4月に欧州と中国(北京)を訪問した。欧州はそのころから不況がはじまっていた。オランダの市場統合は、海外への生産基地のシフトによるものである。米国の自動車産業を見てもわかるように、ものづくりの力が衰えると、消費産業もいずれは衰退する。イギリスの花加工産業はいまだ健在ではあるが、テスコをはじめとして、花束の単価が下がり始めていた。3000~5000円くらいの「ファイン」と呼ばれる花束の週末の売上が苦戦のようだった。
 欧州旅行の帰りに、中国の花き展示会を視察した。北京オリンピックを前に中国市場は勢いを失っていた。オランダから持ち込んだ提案が、すでに底をついた感じがする。知的所有権をきちんと守らないので、世界の種苗会社が中国から撤退気味である。日本のIFEX(国際フラワーエキスポ)がその恩恵を受けている。もっともオランダ本国はそれどころではなくなってきているのだろう。
 夏休み(8月)以降は、10年ぶりで「フラワービジネス公開講座」を再開した。JFMA編『お花屋さんマニュアル』をテキストに使いながら、毎回30人以上の受講者を集めた。座学にとどまらず、講座終了後は、新宿(小田急フロリスト)や川越(青山フラワーマーケット、ヤオコー)、町田(カインズ)、湘南台(IY、ゼントクコーポレーション)の店舗とい売場とお客さんを見るために町に出た。現場での調査研修を実施した。わたし自身は、その後も、関東圏と関西圏の量販店と専門店チェーンの花売場を観察している。
 専門店(フラワーショップ)の苦戦に対して、量販店はようやく花に取り組む姿勢を強めている。利益は別にして、少なくとも売上は対前年比で5~10%ほど増えている。花を購入する場所が、量販店にシフトしてきている。まだ量販店の売場に輸入花が大量に出回っているわけではない。しかし、そのタイミングがすぐそこまで来ていると思う。
 秋の南米訪問(12年ぶり)からは、実に鮮烈な印象を受けた。コロンビアの花産業の成熟には本当にショックを受けた。米国市場は、品質・情報・物流面で、コロンビアが完全に制圧してしまった。そして、コロンビアの花産業は、オランダの対抗勢力になりうる可能性が出てきた。そのことにおどろきを覚えた。日本はいったい何をしてきたのか?大きな自国消費市場にあぐらをかいてきたのではないかと。
 2009年は、さらに厳しい年になりそうだ。しかし、楽しみの芽も育っている。MPSに参加した花農家は、苦しい不況の中で、コストダウンと品質改善と経営力向上に努力している。MPSトレードを取得した市場や仲卸・加工業者は、業務改善や品質・鮮度保持に新しいアプローチをしている。地方の有力食品スーパーやホームセンターが、本格的に切り花を取り扱う姿勢を見せ始めている。新しく専門店チェーンや農業生産に参入する異業種企業も登場するだろう。
 メインプレイヤーが交代する中で、JFMAは引き続き、日本の花業界に対して新しい価値提案をしていかなければならない。「IFEXとMPSのJFMA!」ではあるが、いまは次に来るものを模索している。