「歯医者の麻酔が好きな患者さんって、聞いたことがないなあ」(オリオン歯科で)

 担当の歯科医師さんに笑われた。4年前に治療した虫歯が悪化しているらしく、左の奥歯に痛みが走るようになっていた。アフリカ旅行のときに、虫歯の様子がさらに悪くなった。ところが、帰国後もなかなか休みが取れない。


そのままで放置しておくわけにもいかず、電話で予約を入れた。患者さんで行列ができているらしかった。なかなか、予約がうまく入らない。昨日、ようやく虫歯治療の予約が取れた。
 10時半、悪いところの歯の位置と症状を告げた。食べ物が、左側の歯で、うまくかめないのだ。とりあえず、レントゲンを撮ることになった。
 問診・所見では、やはり、左上の奥歯に虫歯菌が浸入しているらしい。むかし塞いだ詰め物の樹脂をはがして、虫歯菌が侵食している患部を削りとることになった。
 局部麻酔をかけないと、ドリルが当たって神経に障るかもしれない。たぶん痛いので、麻酔をかけることになった。願ってもないことだ。

 男性の歯科医師が、やさしく声をかけてくれた。「麻酔で痛くなりますけど、我慢してくださいね」。
 この病院(オリオン歯科)は、櫻田院長さんをはじめとして、男性の歯医者さんたちの言葉使いが丁寧だ。ちと気持ちが悪くなるくらいに、馬鹿ていねいなのだ。
 最初は、オカマの歯科医師集団かなと思った。ごめんなさい。櫻田院長! 実際は、おかまではないとの噂を聞きました
 若い歯科衛生士(技工士)さんたちの腕は、ちょっといまいちだ。歯石を削るときに、血が飛び散ってしまう。うまいひとは、絶対に痛くないはずだ。この技術レベルじゃ、困るよな。
 衛生士さんは、ピンクのユニフォームを着ていて、とてもかわいい。でも、血を見るのは絶対にいやだ。それと、歯科衛生さんたちの話し方は、例外なく馬鹿っぽいなあ。だいたい、歯科衛生士さんで、頭がよさそうな子を見たことがない。失礼します。
 
 先生が麻酔をかけ始めたときに、正直に言った。「いやー、麻酔って、気持ちがいいんですよねえ」。若い技工士の先生だろうか?
 くすくす笑いがはじまった。胃カメラを呑むときには、舌と喉の奥に、麻酔用のゼリーを塗りこむ。あの苦いゼリーを押し込まれると、気が遠くなって気持ちがいいのだ。きっと、コカインを飲んだときも、あんな風にいい気持ちになるんだろうな。
 わたしは、麻酔が好きだ。明らかに、麻酔フェチである。きっと、手近に大麻やコカインがあれば、常用するようになるだろう。たぶん危ないと思う。周囲に、麻薬所持者がいなくて助かるなあ。  若い先生のくすくす笑いはとまらなかった。めったに、そんなフェチはいないらしい。

 虫歯治療では、局部麻酔をかけるために、歯茎にちくちく麻酔針を刺す。 「注射針が怖くて痛くて、泣きそうになる大人の(男性)患者さんもいらっしゃるんですよ」 いい年のおじさんには、怖いのだろうが。あのチクチク感覚が、わたしには気持ちがいいのだ。
 だからではないが、ドリルで虫歯を削る治療は、ものの数分で終わった。詰め物のコンクリート?は、仮のものだ。「一週間後に、また来てくださいよ。今度は、本物のをかぶせますから」で、無罪放免になった。

 虫歯の治療のあと、千葉の田舎から都心に出た。夕方からの約束で、表参道(レストランANO)で、客員講師の平石さんとチェコ料理を食べることになっていた。相談事があったからだが。ブランボラークもソーセージも、問題なく食すことができた。奥の歯からは、もう痛みが消えてしまっていた。
 奥歯で、固めの食物を噛み切ることができた。たぶん大丈夫なのだろう。神経の近くまでドリルが当たっていた。レントゲン写真で確認したので、それがわかった。
 どうやら、元通りの食生活に復帰できそうだ。しかし、歯医者さんの麻酔と注射は、やはり気持ちがよいよなあ。麻酔フェチの楽しい一日でした。