6月17日(火)に、わたしどもJFMA主催の国際セミナーが開催された。いつものことながら、国際セミナーの準備には苦労が多い。たしかにそうなのだが、今回は、JFMA創設以来、最大の参加者を集めることができた。企画の良さと組織力によるところが大である。やはり集客は、講演の中身と事前告知の良し悪しにかかっている。
午後14時から、千代田区にある法政大学本校(ボアソナードタワー26F)のスカイホールには、われわれの予想と期待をはるかに上回る151名の聴衆が参集した。2人のドイツ人講師(ブルメ2000)と4人の日本人パネラー(海下氏など日本人講演者を含む)が壇上で紹介された。会長としてのわたしの挨拶は、およそ次のようなものであったと記憶している。
このように、これまでで最大の聴衆を集められたのは、海下氏(常務理事:クリザール・ジャパン、代表取締役社長)の企画力の勝利であること。今までに最高の出席を確保できた要因としては、日本の花業界のニーズに的確に応える企画であった。今回はそのスイートスポットをヒットしたテーマであった。なお、わたし個人は、休みの日曜日を返上して、ドイツの二人と食事をすることにしたが、事前の取材がパネルディスカッションの運営には大いに役立った。
さて、セミナーの内容である。わたしの挨拶に、海下展也氏(クリザール・ジャパン㈱ 代表取締役社長)「ドイツで高級花店が挑戦している「鮮度・ボリューム保証販売」。それに続いて、「ブレメ 2000 の消費者戦略と顧客満足度保証販売」(ブレメ 2000社長、エリック・シェックマン氏、社長 アレキサンダー・ゾーン氏)であった。
わたしの印象では、お二人の講演を伺って、ドイツと日本は消費形態などの点で非常に良く似ていると感じた。ただし、ブルーメのような成功例は、日本では多くはない。聞いたところでは、200店舗まで拡張して、ネット販売も順調な「ブルメ2000」は、オンリーワン企業である。両業態で成功した花店は、ドイツでも存在していない。そうした意味で今日は興味深い講演であった。
驚いたことは、ドイツ人が花を購入する理由の80%が自分のため(ホームユーズ)だったことである。日本人は、ギフトと業務需要が主流である。ただし、流通者のシェアでは、日本とドイツはスーパーが15~20%でほぼ接近している。専門花店が50%を切ろうとしていることも類似点ではあった。もちろん、ドイツのバラに対して、日本は35%が仏花などのキク需要である。
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講演が終わって、16時15分からは、時間が短いながらもパネル討議の時間を設定した。日本で始めてMPS-Q(生産者の品質管理)の認証を受けた「新潟、花プラン」の富樫君が参加してくれた。彼の意見は、ブルメ2000に対して、「インターネットを否定するつもりはないが、生産者の立場から言うともっと温かみのある売り方もあると思う」であった。カタログ通販「ディノス」の川口さんは、花の通信販売、配達。全国2200の加盟店を持っている。「需要を喚起していくのが重要。通信販売、通信配達も厳しい状況だが、皆様と需要喚起を一緒に考えていきたい」と意見を表明してくれた。
わたしは、ブルメ2000の特徴は、マーケティングの基本に忠実であること。ベーシックなことを着実に実行していると感じた。それに対して、青山フラワーマーケットの井上社長は、「ネットは伸びている。5月には240%に伸びた。母の日前には、商品がなくなって注文をとるのを止めた」。また、「ワインと花を一緒にもらうと嬉しい。花にこだわらないで、花を添えるでも良いとの感覚でも良いのでは?」
ドイツ人のセミナー講師mアレキサンダーとエリックからは、「日本のお客さんは、もっとも高いものを買ってくれるはず」との意見をいただいた。世界中で一番高いブランドを購入する消費者がたくさんいるかららしい。
これは「日本人神話」なのではないか?その背景にはギフト需要があるような気がする。たしかに、日本の消費者は豊かであるし、品質要求も高い。しかし、日本の花業界の課題は、「花を贈る文化と花に触れるふつうの日常生活」にあるのではないか。
今回のセミナーで、わたしが驚愕したことがひとつあった。わたしは、ドイツのディスカウンター(例えば、アルディ)は、絶対に儲かっていないと思っていた。ゲスト講師に尋ねると、「いやアルディは利益を出している。ドイツ最大の花販売業者であって、それなりに繁盛している」と言うのである。そう、あのレベルの花(あまり品質はよろしくない!)を販売して、本当に儲かっているのか?いまだに、信じがたいところではある。
アレキサンダーによると、ALDIは成功している。お客様は1.99€しか払う用意がなされていない。マージンは低いが、仕入も安いからそれで十分利益は出ている。何度も欧州でディスカウントスーパーのアルディは見ていたが、花で利益が出ているなど、信じがたい言葉であった。「市場シェアを伸ばしている!」と聞いたときは、耳を疑ってしまった。そして、さまざまな可能性を考えさせられた。先入観で商売をしてはいけない。心しなければと・・・