本格化しつつある中国資生堂の直営店展開

 資生堂が中国本土で展開している直営店(チェーンストア)事業が加速している。本日、前田親造取締役と中国事業部の高森竜臣部長から、本格化してきた直営店事業のお話をうかがった。


メディアで報じられているように、資生堂の直営店(チェーン)は2008年で5000店、売上高一千億円を目標にしている。
 いくら好調とはいえ、中国事業の現状は200億円弱である。中国の流通事情を知るものとして、また、2年前に中国上海で梅鎮楼伊勢丹、太平洋百貨店など百貨店内の事業を調査したものとして(「チェーンストアエイジ」2003年5月15日号、6月15日号に掲載)、大胆な数値は単なる努力目標ではないかと感じていた。しかし、取材後の感想としては、実績(半年超で300店)を見ると実現不可能ではないと考えるようになった。
 詳細の記述は拙著に譲るが、このまま年率40~50%の成長率で直営店の売り上げが伸びていけば、北京オリンピックまでには、日本と中国の事業規模が並んでしまうことになりそうな気配である。それが可能な理由は、以下の通りである。

(1)中国には、各省都から100~300km離れたところに、百貨店が無い人口300~600万人の大都市(衛星都市)が10箇所くらい存在している。
(2)そうした都市には、資生堂の化粧品を購入できる需要層(工場つとめの20~30代の女性)が数十万人規模で存在している。
(3)そうした大都市には商店街があって、非正規品や横流しではないかと思われる化粧品(正規品が入手できない?)を取り扱う「化粧品店」が数百軒単位で存在している。正規品の化粧品を販売するインフラができあがっている。
(4)百貨店がある大都市部で、資生堂(中国ブランドのオプレ)のブランドイメージが極めて高い。インストアシェア・ナンバー・ワンは、たいてい資生堂(オプレ)である。

 第二次大戦後すぐに、欧米を見習いながら化粧文化の普及が日本でもはじまった。そのときに資生堂が経験したチェーン店の展開ノウハウが、いま中国の地方都市で活かされはじめている。こうしたチャネル開発の仕組みを、欧米企業は持っていない。顧客データの管理技術、店頭でのカウンセリング手た法、店舗デザインのノウハウなどが、現在の資生堂中国事業独走の要因である。
 百貨店内での競争は激化しているが、直営店(ボランタリーチェーン)の経営では、資生堂が欧米化粧品メーカーに対して、持続的な優位性を持っている。