「HCのPBはブランドたり得るか」講演記録
■ブランドとは何か
ブランドには、ナショナルブランド(NB)とプライベートブランド(PB)がありますが、最初にNB、メーカーブランドの定義を確認しておきたいと思います。
ブランドという言葉は「Burned」から来ています。焼き印を押す、刻印を入れるという意味です。中世ではスコッチウイスキーをイギリスから輸出するときに、樽にスコッチのブランド名の焼き印を押したというのが起源といわれています。出所を明示する、あるいは中身が偽物でないことを保証するのが目的で、ブランド、あるいはブランディングという行為が発生しました。それが現代社会では所有権をきちんと主張するという意味と同時にマークやロゴ、名前、音や色が顧客に対するコミュニケーション手段という役割も担っています。
メーカーブランドは、アメリカ・マーケティング協会の定義で「自社商品を他メーカーから区別するためのシンボル、マーク、デザイン、名前」とされています。
商品のブランド化とは、「競合商品に対して自社ブランドに差別的優位性を与えるための長期的なイメージ創造活動」です。ポイントは3つあります。一つは、自社ブランドと競合商品の明確な識別性・差別性があるということ、かつ優位性がないといけないということです。二つ目は、短期ではなくて長期的だということです。もう一つ重要なことはイメージをつくる活動だということです。したがって、ホームセンターでもPBあるいはブランディングという行為をされていると思いますが、この3つにきちんと該当しているかどうかをまず考えていただきたいのです。この条件が満たされてなければ、それはブランドとはいいません。
ブランドは所有形態によって3つに分かれます。メーカーブランドとストアブランド、そしてサービスブランドです。これら3つに共通して、自社商品や自社サービスに対して固有の長期的イメージを創造する活動がブランディングの活動ということになります。ただ、メーカーブランドと流通ブランドには違いがあります。メーカーの場合、基本的には他のメーカーが競合になりますが、流通ブランドの場合は、競合相手は2組あります。一つはNBで、もう一つは他の流通業あるいはサービス業のプライベートブランド(PB)です。
サンアドという広告代理店の若林さんは、よいブランドの条件を3つ挙げています。まず顔がよいことで、店舗や商品パッケージを指しています。それから、名前が魅力的であることで、聴覚と視覚が重要になります。もう一つ、中身が素晴らしいことです。
■着物の“やまと”に見るブランドづくりの本質
“やまと”という会社は着物屋で、2003年の売上高が341億円、全国に146店舗で、ショッピングセンターやデパートに入っています。
この会社の商売の基本は、全て自社のスペックで発注した開発PB商品を扱うことで、NBは一つもないことです。やまとでは4年ほど前から、伝統的な着物の商売を何とか革新しようとして2つのことに取り組んできました。一つは、新規事業としての「たんす屋」です。これは古い着物を引き取って、それをきれいに細工して仕立てて再販売するといういわゆる中古屋ビジネスです。着物文化を再興するために、まずこれに着手しました。現在FCで26店舗、全店舗で76店舗です。売上高が2004年の見込みで36億円です。もう一つは「なでしこ」という若い人を対象にした着物屋です。現在、1店舗あります。ホームセンターのお客さんは50歳以上、場合によっては60歳以上という話がありました。着物業界も同じで、ほとんどが60歳以上です。これはあまりいいことではないと思いますが、それを打開するためにチャレンジしたのが「なでしこ」という業態です。呉服屋さんがもともと持っていたターゲットではなく、全く違う新しいターゲット、つまり20~30代までの女性をターゲットにしています。着物というのは帯から何から全部揃えようとすると50~60万円かかりますが、この業態は全部で20~30万円でおさまるようにしています。先ほどホームセンターのお客さんの年齢にもありましたが、こういう業態がホームセンターの中から出てこないとホームセンターという業態が活性化しないと思います。
なでしこの店内の陳列は若い人が好みそうなレイアウトになっています。それから、着物というのは組み合わせで提供しますが、そういう細かいところには全くこだわらずに、若い人が選びやすいように、レイアウト、商品の展示をしています。
着物のやまとでは100%がPBでした。もともとSPA志向で、全部自社のPBで販売していたのですが、なでしこという若い人をターゲットにしたお店を展開するにあたっては、全品PBというポリシーを下ろしました。その理由はシーズン・シアターにあります。なでしこは年に8回店頭に変化を持たせます。PBではこれに対応できず、セレクトショップ志向に変更せざるを得ないのです。また、若いお客さんを呼び込んで、しかもいろいろな品揃えをしようとすると、全品PBではやり切れないのです。
ここで、ブランドが提供する消費者ベネフィットとは一体どういうものがあるのでしょうか。一つは機能的ベネフィットで、素材のよさ、品質のよさ、ある種の技術です。これは品質保証という意味でブランドマークが存在する大きな理由です。二つ目は情緒的ベネフィットで、心地よさ、楽しさといったものです。これは色や柄、デザインだったりします。三つ目は自己表現ベネフィットで、生活の中に入り込んで、ある種のスタイルを演出するということです。よくいわれている話ですが、GAPとユニクロを比較すると機能的ベネフィットや情緒的なベネフィットではおそらくユニクロが上かもしれません。しかしGAPが勝るのは洋服の着方、ある種のスタイルだと思います。
やまとの矢島社長は次のようなことを考えてブランドづくりをしています。それを「流通業者の責任」という言葉で話しています。1番目は発注と支払いの責任を持つ、つまり売れるものを発注するということです。2番目に、ロスなく売り切ることで利益を確保することです。そういう状況のもとでだけ発注する、つまりPB化するということです。3番目に適正な市場をつくる責任があるということです。あるカテゴリーのある商品については、狭くて高いマーケット、広くて高いマーケットがあります。下も大きくて中も大きくて、上にプレミアムブランドが乗っている、そういう構造を持ったマーケットをつくることが確信できたときに初めて産地に出ていくということです。この「産地」を皆さんは海外というふうに置きかえてもらえればと思います。広くて高い市場ができるとき、つまり適正な市場をつくる責任が流通業者にはあるのです。
4番目ですが、海外からの輸入は5%で、95%が国内だそうです。日本国内にはいろいろな着物の産地がありますが、産地間を連携させること、それらをうまくつないで一つの商品カテゴリーをつくっていく、売り場をつくっていくという努力をしています。
■ホームセンターにおける海外調達品
「Diamond Home Center」(2000年10、11月号)で「海外商品の力」という特集が組まれ、どういう商品カテゴリーを海外調達するかという話が載っていました。DIY用品中心の例としてジョイフル本田が、日雑・家庭用品中心の例としてホーマックが挙がっています。2つのタイプの調達の仕方があるとまとめられていました。
他方、価格を訴求するか、それともオリジナリティ創造かという分類があります。これは低価格訴求のPBとプレミアムPBという2つの方法があります。1999年当時の平均海外調達率は5%前後で、2002年には7~8%、高いところで18%になりました。PB比率は高いところで20%を超えています。
その特集では海外調達に関して3つの課題があると書かれていました。一つは商品調達力、つまりバイイングパワーの強化です。2番目にシステム開発力で、物流・情報収集機能の確立です。そして3つ目の課題は生活提案力、発掘センスのあるバイヤーの養成です。
それに対して大山社長がホームセンターが海外調達商品で克服すべき問題点は、過剰在庫、ストア・ロイヤリティの悪化とご指摘しています。加えて売れ過ぎた場合のヒット商品の欠品対策、ライフサイクルの短縮化に対応する商品開発力が必要だとしています。
2002年の実績を見ると、ホームセンター業界では海外調達率が一般に上昇しています。ケーヨー、コメリ、ホーマックが代表例です。逆にPB比率は下落している企業もあります。コーナン商事は2003年の161億円から138億円と下がっています。
当時、海外調達率の各社の目標は平均20~30%ということでした。それによる値入れ10%改善で粗利2%上昇というのが目標でした。しかし、2003年になるとどういう状況になったかというのは大山社長のお話の通りです。
ここで、PB商品をホームセンターで導入するときのねらいは何なのでしょうか。一つは、値入れを改善して粗利を改善する、そのための手段として低価格PB商品の開発が挙げられます。つまり収益性が一つの目標になっています。ただ、収益性を高めるためにもう一つ方向性があります。それは低価格ではなく、特色のあるプレミアムブランド商品を開発するという方向性です。海外ではもう答えが出ていまして、低価格PBではなく、プレミアムPBに移行しています。
二つ目が差別性です。自社でしか手に入らない商品を消費者に対して売るというのがもともとの差別化の目的ですから、引き金になっているのは店舗間の競合です。それから、独自の業態を確立したいということがあります。そのためのコアとなる商品政策で海外から輸入するという企業が日本でも数社存在しています。
三つ目は戦略性です。ベンダーに対する対抗力としてPBを置くというものが一つ、それに対して店舗の差別化、独自の業態をつくるという方向性があります。
■欧米小売業でなぜPB商品が普及したのか
最初の小売業のPBは、イギリスのマークス&スペンサーからだったと思います。「セントマイケル」という有名なスターブランドがありますが、これは1930年代の物不足の時代に生まれたものです。生協の運動とイギリスのスーパーマーケットの独自のPB商品のスタートは同じです。したがって我々が今考えている物余りの時代のPB開発とは少し違っていました。また、日本とイギリスの大きな違いは、イギリスではスーパーマーケットの上位集中度が非常に高く、上位4社で40%以上のシェアがあるということです。現在はこれが60%くらいになるのではないかと思います。
では、全ての商品でPBが開発されたかといいますとそうではなく、ライフサイクル後期の商品群、つまりイノベーションが頻繁に起こらない、そして商品開発力があまり重要でない、そういう商品群でPBができました。あるいは地理的に分断されたローカルな商品群でした。
イギリスの小売業でPBが成功した理由は、2つあったと思います。それは、PBといえどもNBと同じで、常に目新しい商品、そして店頭を活性化させるような、あるいは消費者を驚かせるような商品を投入していかなければならないので、頻繁な新商品投入が実現できる社風が必要です。しかも社風だけでは不十分で、提携している優秀なベンダーが存在していないとPBを連続投入できません。もう一つ重要なことは、テクノロジストの存在です。マークス&スペンサーやセインズベリー、テスコも、必ず1人はテクノロジストを抱えています。品質管理やその商品に関する技術的なアドバイスのできる専門技術者です。商品カテゴリーごとに1人いるというのが重要で、バイヤーと一緒に仕事をしています。
もう一つ、現在はプレミアムPBに移行しているというのも実態です。常に消費者に驚きを与えて、しかも店頭を変えていかないと、消費者は継続して満足することができません。それに対応するのはNBではなくてPBです。
イギリスでPBがこれだけ普及している一つの大きな理由は、上位集中度が非常に高いということです。1998年当時、テスコ、セインズベリー、アズダ、セーフウェイといった上位4社で7割くらいのシェアを持っていました。独自のPBが成立するためには、低価格ではなくて、上位集中度がある程度あってスケールメリットがないといけないのです。
PB比率はというと、1997年当時マークス&スペンサーが約100%ですが、それ以外の上位社は50%のところに収束しています。
あらゆるカテゴリーで全てPB比率が高いかというと、そうではありません。欧州各国の製品別データを見た場合、例外の国が2つあります。一つはイギリス、もう一つはスイスです。スイスは基本的にコープとミグロスという生協によって寡占されている市場ですので、当然のことながら高くなります。各国のPB比率を見ると、家庭用品が高いのですが、それ以外食品や飲料、パーソナルケアは高くありません。
イギリスのPB比率を商品別にもう少し詳しく見ると、PB比率が高いのは日用雑貨品のアルミホイル、それから日配、ドライ・パスタ等、加工食品の一部です。あるいはデザート類です。イギリスでも全ての分野でPBがいいというわけではありません。
アメリカのケースを紹介いたします。これは最近のデータですが、アメリカ小売業の売上高の20%がPBです。私はこれがアメリカのPB比率の上限になるのではないかと思っています。それから、消費者の80%が日常的にPBを購入しています。PBはNBに対して2~3割低価格ですが、これを成り立たせている条件は米国の特殊性だと思います。その背景は移民の国アメリカで、所得階層が二極化していることにあります。経営者というポジションにいる方は、おそらく平均の10~20倍の給料をもらっていると思います。一方で生存限界すれすれの所得層の人たちもいます。
代表的なPBは、シアーズの「ケンモア」、「クラフツマン」、それからホームデポの「シーリングファン」、「ハスキー」などです。しかしながらネットで検索したところ、シーリングファンというPBを安く売ったことで、マーケットそのものをつぶしてしまったという記事が出ていました。
■日本のPB商品の成功事例
日本でもPBの成功事例がいくつかあります。最も代表的な例が西友の「無印良品」ではないかと思います。成功した理由は、無印が無印でなくてブランドになったからです。国際的に通用する「MUJI」というある種のスタイルを提供するようなブランドに飛躍でき、しかもそれが路面店として展開したので成功しました。これ以外で大きく成功したブランドを探すのは結構難しいと思います。
1993年当時の日本の大手スーパーマーケットのPB比率は低く2~3%程度でした。私は今でも基本的にそれほど状況が変わっていないと思います。例外がいくつかあり、イオンの「TOP VALU」(グリーンアイ)とイトーヨーカドーの「顔の見える野菜」の2つです。少なくとも「顔が見える野菜」は、低価格PBではなくヨーロッパやアメリカで増えてきているプレミアムPBの系列に属するものです。
「顔の見える野菜」は、生産地を全部国内に限定しています。これからプレミアムブランドをつくるときには、海外ではなく、むしろ国内の産地、国内のベンダー、メーカーに依存することが多くなると思います。それから、栽培法は土つくりを基本にするなど、技術的なところが非常に考えられています。そのために、イトーヨーカドーは、10年間失敗し続けています。トレーサビリティも含めて、おいしい野菜を提供するために産地開拓をした10年間の失敗の歴史の上で「顔が見える野菜」が出てきたと考えることが必要です。
こういうプレミアムPBがどういう客層によって支えられているかといいますと、非常にヘビーなユーザーに支えられていることがわかっています。薄く広くというのはPBの成功条件ではありません。消費者の意識調査によると、購入者の6割が「顔が見える野菜」のヘビーユーザーで、その取り組みについては「積極的に拡大すべき」48.5%、「拡大すべき」35.5%で、8割が好意的に見てくださる方です。絞り込まれたターゲットの方たち、リピートの率が高い方たちに売れているのです。
現在57店舗で展開していまして、1週間に5,000万円の売上だそうです。1店舗当たり100万円です。一つのカテゴリー、一つのコーナーで1日20万円ということですから、決して低いものではないと思います。
これまで古典的な事例を見てきました。まず留意しなければならないことは調達リスクです。これは当たり前のことで、海外調達のロスが非常に多く、それを克服しなければ成り立たないということです。
2番目は、ファッション性が高いもの、ライフサイクルが激しいものについてはPBは向かないということです。
それから一番重要なのは「顔」と「名前」と「中身」が優れたブランドが本当にできるかどうか、そのための条件が整っているかどうかということです。それにはまず内的な要因として、自社の能力でそういうものがつくれるかにかかっています。それから外的な要因ですが、経済状態が悪いときには、歴史的に見ても確かにPBの比率は高まります。しかし、いずれは回復することを考える必要があります。また、競争の一つの手段としてPBを導入しようとしますが結局同質化します。最後に、日本の消費者がそういうものを受け入れるかどうかです。
■PB商品導入の成功条件
業界が違いますが、埼玉県のヤオコーというスーパーマーケットがあります。八百屋から食品スーパーへ変貌を遂げました。何屋になるかといったときに、八百屋ではなくて、食品スーパー、それも特色のある品揃えを持ったスーパー、エブリデー・ライフスタイル・アソートメント企業を目指してきました。
ホームセンターも米屋、ガソリンスタンド、材木屋、ドラッグストア、金物屋など、別々のスタート地点からホームセンターという業態へ移行しました。では、スタートしたときの何屋さんだったかということが生きているでしょうか。そして今後何屋さんになろうとしているのでしょうか。現在はホームセンターになりましたが、もしかすると戻る手もあるのではないかというのが第1番目です。
PB商品を導入して、新しい提案ができるための条件は、先ほどからイギリスや日本の話をしましたが、簡単にいうとMDが広く深くできるときに独自PB商品が受け入れられるのです。そのカテゴリーについて一品だけ出しても無駄です。ブランドは一個ではありません。複数のブランドを下は500円から上は5,000円まで構成されています。日本のホームセンターに導入されているプライベートブランドがそういう構造になっているかどうかということを考えていただきたいというのが2点目です。
もう一つの問題点は、先ほどから同質化の話をしていますが、全てのホームセンターがPB商品をMDの中心に据える必要があるのかどうかということです。競争上の地位を考えてください。PBが成り立つような競争のポジションはあると思います。
さらにPBの戦略的な意図は何なのでしょうか。消費者が本当に低価格PBを選んでくれるかどうかにかかっていますが、実際はそうではないのではというのが最近のホームセンターの業績に表れていると思います。
それから、あらゆるカテゴリーで20~30%も独自のPBを開発できるだけのカテゴリー数があるのかどうかということがあります。機能性、情緒性、そして自己表現ベネフィットがホームセンターのPBで提供できるかどうかということが3番目です。
さらにロットがまとめられるかどうかという問題もあります。海外のPBが成功した理由としてウォールマートが代表的ですが、国際調達、国際的に小売業態を展開していることが条件です。ロットがまとめられると収益の源泉になります。そのためには、大山社長の話にもロス管理や予測力などの条件がありましたが、それがないとロットをまとめてもPBは成功しません。
それから、非常に重要なのは、調達力があるだけではだめで、商品開発力がないとだめだということです。
最後に考えなければならないのは、消費者がどういうときにPBを購入するのかということです。ある調査によると、日本の消費者は30%しか価格に敏感に反応しないという結果が出ています。それから、日本の場合は買い物頻度が高いので、ブランドの店頭決定率は非常に高いのです。ですから、イギリスやアメリカの場合と違っています。また、小売環境の違いがあります。西友のEDLPのように世界一品質にうるさい消費者を相手にして、低価格PBが本当にいいかどうかという問題があります。
では、ホームセンター業界ではどうかということ、これは皆さんが考えられる課題だと思います。
衣料品の業界ではPB派とNB派があります。「ユニクロ」に対する「しまむら」、「ビームス」に対する「ユナイテッド・アローズ」です。それから、低価格路線とプレミアム路線がありますが、日本の場合は低価格で高品質でないと受け入れられないという非常に難しいマーケットを扱っていることに注意が必要です。
食品では素材と加工の2つです。それから、アメリカのトレーダー・ジョーズは80%が自社商品です。トレーダー・ジョーズは、200店舗ほどで、非常に高収益の企業に育っている会社です。特徴は顧客のターゲットを明確にすることで、自社PB商品を成功させています。ターゲットは高学歴で低所得です。ウォールマートより少し高いけれども、他のスーパーよりは安い価格設定になっています。
住関連では、ニトリや大塚家具が半分以上を海外調達しています。しかし、両社とも不確定で、広くて高い品揃え、ブランド展開をしているから成功しているのです。その条件がないときには成功はありません。差別化プラス差益率向上、そういう路線の中で成功しているということです。
その他ではドラッグストアのマツモトキヨシは「PB商品開発を中心に据える」といっていますが、ドラッグのSPAを目指すというのは、大衆薬のマーケットで新製品を投入するという条件が崩れているという背景があります。
■ホームセンターのPBがブランドであるために
これまでの話で、結論は4つあります。ホームセンターのPBがブランドであるためには、この4つの条件が必要だと思います。
一つは、PBは店舗差別化のための強力な手段であるということです。もう一つ加えると、同質化競争を避けるためのPBづくりが必要です。逆に、PBをつくったために同質化競争が始まったら、PBの意味は全くなくなります。
2番目は、低価格志向のPBであってはならないということです。世界のトレンドもそうですが、既に80年代、90年代のアメリカとイギリスで結論が出ていますので、長期的にはプレミアムを目指すことが重要です。DIY商品、園芸商品などでプレミアムPBを目指すべきだと思います。
それから3番目は、独自性のある分野に特化すべきということです。先ほど何屋になるのかという話をしましたが、自社が出てきたDNAがしっかりと生きるような分野に特化すべきだと思います。あらゆるところでくまなくPBを開発するというのはほとんど意味がありません。商品力、開発力、市場地位(STP)が成り立たなければならないし、短期利益志向は成功しないと思います。
最後に、調達先との長期的な関係づくりが必須です。ベンダー、あるいは産地、それは海外でもいいのですが、調達先との長期的な関係づくりが必須条件です。長期継続的に供給されないものはブランドとは呼べません。
1番目、2番目はすぐにおわかりかと思いますが、特に3番目と4番目が成り立たない条件の中ではホームセンターでPBを開発するのはほとんど意味がない、つまり長期的に企業の成長と収益には貢献しないと思います。
(談)