0 はじめに
本論文は、2004年8月に発表した「有機農産物の流通、安全性、消費者反応に関する研究:既存研究の概観(上)」に続く有機農産物に関する展望論文である。
前論文(上)は、有機農産物の生産および流通に関する研究史と周辺分野に関する学術研究を整理したものである。どちらかと言えば、有機農産物の供給に関するアカデミックな研究に焦点を当て、文献として発表された諸説を整理したものである。それに対して、本論文(中)では、有機農産物を販売・消費する中間流通(WTOなどの国際貿易問題を含む)および最終需要者の実態についての研究を整理する。主として、有機農産物(食品)の安全性と消費者反応についての既存研究を展望することになる。
また、本論文に続く(下)では、既存研究の成果と筆者らのチームが独自に実施したきた実態調査を踏まえて、有機農産物流通の未来像を展望してみたい。近年(2000年以降)、米国で成長が著しい「自然食品系小売業態」(ホールフーズ、ワイルドオーツ)の実態調査を踏まえて、米国消費者のライフスタイルの変化(LOHAS: Lifestyles of Health and Sustainability)と革新的な小売企業の登場(Super Natural)が、世界の有機農産物(自然食品)の市場拡大にとって模範(モデル)となる根拠を考察してみたい。
なお、本論文(中)では参考文献の表記に関して、前回(上)と同様の手続きを取ることにする。すなわち、学術的な手順にしたがえば、参考文献は、本来ならば、<連番、著者名(年)「論文名」『書籍、雑誌名』巻(号)、頁>として、アルファベット順(アイウエオ順)に並べ変えるべきである。しかし、本論文では、データベース化してある「文献ファイル」(付録として添付)との整合性(参照の容易さ)を考慮して、データベース内の連番でソートしてある。したがって、論文中で参考文献を引用をする場合は、例えば、(藤井 2003[35])となる。[ ]内の数字は、データベースの一連番号である。なお、論文末の文献リストは、データベース中にあるものをすべて列挙してある。したがって、一部分、本論文で引用されない論文や記事も含まれている。
1 グローバリゼーションと食の安全性確保
(1)中国からの野菜輸入: 食の安全性への懸念
農産物一般同様に、有機農産物の生産・流通・販売はグローバルな展開を見せ始めている。日本に関して言えば、米国産大豆をはじめとして、穀類や加工食品の多くをいまや海外生産に依存している。生鮮野菜や加工食品については、残留農薬の問題をはらみながらも、中国への輸入依存度を高めてきた。
中国の「緑色食品」(「緑色」は中国語では「有機」の意味)は当初、日本向け輸出戦略として構想された。しかしながら、中国輸出農産物は品質よりも量と低価格が重視されてきたために、また、中国の「緑色基準」が国内基準であったことから、輸出は意外と伸びなかった。都市部で富裕層が増えたこともあって、かえって最近では国内の人気が高まるという傾向が見られる(中島・趙 2003[58])。中国では数年前から、「価格高くても安全性の高い衛生的な商品を」という需要が生まれ始めた。北京・上海など大都市の新中間層がこうした消費動向の担い手である。*2
そうした中で、2002年3月以来再度、中国産冷凍ほうれん草から、食品衛生法の基準値超える残留農薬が検出された。日本の商社やメーカーが、原料調達や衛生管理など実務を契約工場に任せきりだったこと、見栄えの良い物しか買わない日本企業の姿勢(バイヤーが来たとき虫がついていると買いたたかれる等)が農家の無理を招いたことなどが原因と見られる。大手メーカーは、委託から自営へ生産体制切り替えたり、中国・日本での検査頻度やサンプル量を増やすなどの対応に追われることになった。2002年7月施行の「食品衛生法改正法」では、特定の国や地域の特定の食品について、包括的な輸入禁止措置が盛り込まれたため、1社でも違反するとすべての輸入がストップする。そのためライバル会社同士で対策を開示・協力する体制をとる必要が出てきた(日経食品マーケット(2003[59])。*3
中国本土での有機野菜の生産・加工の事情は、宮澤・太田原(2002[60])で詳しく述べられている。*4 宮澤らは、2001年8~9月にかけて、日本向け野菜加工品の最大供給基地である山東省の加工企業と北京の政策研究者らを取材した。中国の輸出向け有機野菜産業の実態研究を調べたものである。「有機野菜」としての通関記録はないが、中国産冷凍野菜は、業務用を中心にすでに日本市場に浸透している。主に、外食・中食産業向けではあるが、中国産の有機野菜は低価格品で安定的に供給され、きちんと規格が統一され下処理が済んでいる。大規模流通に適した輸入品の方が対応しやすいというメリットもあって、輸入野菜の増加の主因は中国にではなく、日本の国内の構造的事情によると宮澤ら結論づけている(宮澤・大田原 2002[60])。
ただし、生鮮品は冷凍・加工品と異なり、輸入に際して薫蒸される恐れがあるので、有機表示は難しい。とはいえ、山東省は乾燥しており、病虫害リスクが少ないという強みがある。冬氷点下で虫が越冬できず、害虫活動前に越冬栽培で収穫できる。また、農民1人あたりの耕地面積が小さいため、労働集約的な農産物への転換圧力が強く、有機農業に適した地域でもある。*5 ここに進出する「亜細亜食品」(台湾系)、「万福グループ」(台湾企業と合併した郷鎮企業)、「北海食品有限公司」(台湾系、90年代に中国進出)の3社を訪問し、歴史や栽培状況レポートしている。特に、亜細亜食品は、いちはやく有機に取り組み、日本人総経理とスタッフを活用して、日本マーケットとの連動を図り、日本向けJAS有機野菜について先行している。
(2)WTO後の有機農産物貿易
有機農産物が国境を越えて輸出されるとき、慣行農産物にも増してトレーサビリティ(生産履歴)が強く求められる。一方で国際貿易を推進する立場(WTOの背景にある思想)から、他方では農産品の輸出入に伴う食の安全性を確保するために、有機農産物の国際基準(コーデックス)が2000年に策定された。しかしながら、「食品の安全性」より「自由貿易」を優先させるWTO(世界貿易機構)の基本方針については、飯澤(2001)のように、批判的な立場を表明する研究者は少なくない。WTOは国内法の上位に置かれ、協定と齟齬する国内法改定が義務とされていること(経済的主権の放棄)などが批判の根拠である。以下は、飯澤(2001[83])の主張をまとめたものである。
WTO発足後、各国で関連する国内法制度が整備された。農業については、アメリカでは「1996年農業法」(生産調整・不払い政策廃止、直接保障導入)、EUは「アジェンダ2000」で補助金なし輸出体制をめざした。日本では「新基本法」で、価格支持政策の廃止を打ち出すことになった。また、植物検疫に関する協定(SPS協定)と貿易の技術的障害に関する協定では、国際基準への絶対服従が求められるが、安全性ではなく、危険性の科学的立証評価を要求している。危険性評価は実際には立証がたいへん難しいので、結果的に基準数値の緩和・最大化につながるなどの問題がある。
コーデックス委員会の立場に対しても、飯澤は批判的である。食品添加物や残留農薬基準等を作成しているが、あまりにも多くの部会があり、途上国の参画が事実上難しいなど制度上の問題がある。加えて、基準緩和・安全性の後退が懸念される。例として、コーデックス基準では、日本で使用許可されていない79種類の食品添加物の使用が許可され、日本では使用禁止の農薬も、コーデックスでは緩い基準値で使用可能になっている。また、貨物到着1週間前から届け出できる事前届け出制度や、自動審査体制の導入により、検疫措置も簡略化、無審査に近い状況もある。農産物・食料の「安全性」と国民健康の保持・病虫害等侵入の防御と生態系保持が、WTOの自由貿易の名の下に、大きく揺らいでいる、と警告している。*6
自由貿易がもたらす「陰の部分」については、二人のフランス人ジャーナリストが飯澤(2001[83]))と近い論点を提示している。フランスの「ル・モンド・ディプロマティーク」(電子版)は、もともと政治的にも「反WTO色」が強いメディアである。*7 まず、Berthelot (2003[85])の主張は、おおよそ以下のようなものである。
国家助成により保護された農業は、余剰農産物の捌け口を輸出に求める。アメリカの農業法、EUのCAP(共通農業政策)は、国内農家の保護政策という名の下で、輸出政策の武器として使われている。一方で、途上国は安価な輸入食糧への依存を招き、国内農業は壊滅的な状態に向かう。世界の諸国がこうした自滅的農業政策を続けている理由として、3つの要因が挙げられる(食料品貿易の南北問題)。
①南北共に、農業交渉において問題の多い経済概念を用いていること(例えば、ダンピングは生産コストを下回る価格による輸出ではなく、国内市場価格を下回る価格による輸出として定義される)、②北半球では食品産業からの圧力が強いこと(業界の輸出払戻金の削減に反対する意見が通りやすい)、③南半球には、国内産業保護よりも、北の市場を開放させる方が利益だという確信が根強いこと(この戦略は、結果的に途上国の農業貿易の拡大と多国籍企業の儲けにつながっただけ)。
南半球における「飢餓の悪化」と北半球における「環境の悪化」は深刻である。それを防ぐには、EUの共通農業政策とWTOの農業協定は、食糧主権の原則に基づき、あらゆるダンピングを排したものに作り替えられるべきである。2003年のWTO閣僚会議は、南北間の溝を見せつけ、貿易交渉は暗礁に乗り上げた。国際貿易の意義がいま改めて問われる。
Bell(2003[86])は、それとはやや異なる「労働」の視点から、やはりWTO後の農産物貿易の問題点を指摘している。ヨーロッパの豊かな青果物は、農業季節労働者と海外からの不法労働者によって支えられている。その苛烈な舞台裏を文章で説得してみせる。例えば、青果の工業的・集約的な生産方式には、欧州連合(EU)の共通農業政策の枠組みの中で規制が少なく、無秩序な自由主義の下に置かれている。他方で、大型小売チェーンの圧力は凄まじく、生産者は完全に下請け化している。
「大型スーパーの発注があれば、仲買人から電話で、いつまでに、どこどこにトラック1台分、パレット1枚分を納入せよと指定される。常勤労働者の雇用は無理で、突発的に「2時間のあいだ15人だけ必要になる」という具合で、天候や経済の状況に関係なく収穫ができるよう、生産者には不法移民のような予備軍が不可欠になる。実態は、不法移民と合法的移民を組み合わせ、より安い賃金で働かせているという主張である。
農業事業者は、労働を、準固定的な生産要素ではなく、生産規模に応じた変動的要素とすることをめざす。合法・非合法の斡旋事業者を下請けとして、その日ごと、あるいは時間ごとに必要な労働力を集めることがその手っ取り早い手段となる。欧州のほぼ全域が、①低賃金あるいは無給で超過労働をこなす合法的な自国労働者、②無届けの自国民(失業者、社会保障受給者)、③同様に超過労働をこなす合法的な移民労働者(契約書の有無は問わない)、④不法移民、という4つのカテゴリーからなる幅広い「人材」プールに労働者の供給を頼っている。*8
(3)有機栽培商品のフェアトレードという観点
筆者(小川)も欧州・米国の生産・流通現場を歩いてきた。米国の農業生産現場におけるメキシコ人労働者(不法移民を含む)の使用など、労働環境に対するこうした基本認識は、かなり正確な観察記録ではなのではないだろうか。
ロンドンの穀物商から転身して国連の農業コンサルタントになったRobins(2003)も、前出のフランス人記者たちと同様な見解を述べている。以下は、Robins(2003)の’Stolen Fruits’(『収奪された果実』)に対する筆者(小川)の解説とコメントである。*9
実際には肥料や農薬が使えないという経済的な理由からではあるが、途上国の農民が作る作物や加工品は、有機栽培品である。オーガニックフーズ、オーガニックコットンなどが自然に生産されている。この点は、モノカルチャー的な大量生産品の輸出入という旧来型の世界貿易システムのなかでは、発展途上国にとっては決定的な弱みであった。彼らの農法は経済生産性が低いので、市場原理に任せるとコモディティとして買いたたかれる。
コーヒー豆やバナナなど、典型的なトロピカルフーズは、この20年間で価格下落が続いている。生半可な下落率ではない。世界のひとびと(先進諸国)は豊かになったはずなのに、南国の農民たちは、フルーツ・穀物価格の下落でますますやせ細っていることがデータで示されている。価格がどんなに下がっても、パイナップルやマンゴーやゴムやコットンを作り続けるしか、彼らは生活の糧をえる手段がない。ところが、スターバックスコーヒーなどのチェーン店の成功で、先進国ではコーヒー(カップ)の値段は逆に高くなっている。「いったい誰が儲かっているのか?」というのがRobinsの問いかけである。
自由貿易による経済成長は、世界中のひとびとを豊かにするということは経済学の基本命題である。しかし、事実としては、「国際化」と「市場化」は、発展途上国の農民を救うことになっていない。フェアトレード(商品)は、この問題に対するひとつの有力な解答である。逆説的ではあるが、経済学が考える「市場」とは、コモディティ(非差別化商品)を匿名で売買するシステムのことである。状況を反転させる方法(南国の収奪状況を止めさせる手だて)は、取引から匿名性の要素を取り払い、商品をブランド化すること(出所明示)である。つまりは、売り手と買い手が名乗りをあげて、互いの信頼の証として生産・購入・使用に関する情報を交換することである。IT技術がそれを可能にさせている。「顔」を見せることによって、部分的に相手の生活に入り込むことによって、あるいは、シンパシーを交換することで問題は解決する可能性がある。
フェアトレード商品が、「クール」(かっこうがよい)であるという感覚が広がっている。標準化されすぎたマスプロ製品の人工的なセンスに対して、先進国の消費者が「ノー」を言い始めている。従来は一見して安っぽいと思われていた商品仕様が、いまやかなりの消費者から評価され、手作りっぽいフェアトレードの商品作りが支持・普及する可能性を予感させる。*10
(4)ポストハーベスト技術と輸入食品の安全性
国際貿易の対象とされる農産品のトレーサビリティは、何も農産物輸出国の生産段階に限定される問題ではない。農産物の収穫後、一般に鮮度保持のために用いられる薬剤(ポストハーベスト農薬)については、流通規制が緩いことが問題であるという矢野(2001[84])の指摘は重要である。*11
日本の輸入農産物のポスト・ハーベスト農薬は、農薬取締法(農水省管轄)および農薬残留基準で規制されるのではなく、原則として食品衛生法(厚労省管轄)で扱われる。日本では、建前ではポスト・ハーベストを認めない立場をとっているため、諸外国のポスト・ハーベスト農薬への対処法が不十分である。そのうえ、ポストハーベスト農薬の一部は添加物として認めているために、全体の問題が分かりづらくなっている。
日本における農薬残留基準の設定は増加しているが、安全性の確保には疑問が残る。ポスト・ハーベスト農薬は、流通過程で使用されるものだから分解の機会がなく、むしろ病害虫予防等の目的のためには、消費時点まで残留することが必然的である。とくに、輸入農産物では、輸出国内での貯蔵庫・輸送中の倉庫・輸入国水際での検疫用薫蒸など、いずれかの段階でポストハーベスト処理は不可避である。
農産物の形状維持・腐敗防止・長期保存を可能にすることが農薬使用の目的だが、こうした目的は根本的には流通過程を短くすることで解決できる。結論としてはは、国内生産・地場流通の重要性の再認識が必要であるとなっている。上記のように、矢野(2001[84])が提起している「流通経路の短縮化」という論点については、後に「地場流通:地産地消」のところで検討する。
2 食の安全性と有機農産物に対する消費者の反応
(1)有機農法の科学的な優越性
一般的には、有機農業は人間の健康と環境に優しい農法であると言われている。そうした論調の研究は、欧米の実証研究と理論研究に多くみられる。例えば、スイスの研究者グループ(M äder et al. 2001[145] )は、21年間のデータから、有機農法が化学農法より効率が良く、環境に優しいと結論を出している。有機農法は、とりわけ中小農家にとっては、慣行方法より経済効率を上げる可能性が高いことを指摘している。*12また、長期でみた場合、コストと生産高において、有機農法は慣行農法よりも低栄養・低エネルギーで実施可能であり、微生物による栄養循環の効率性などが高いという報告もある(Stokstad 2002[146])。*13
ただし、注意しなければならないのは、純粋科学的な研究では、有機農業と慣行農業のどちらが本当に環境に優しいのかについては、最終的に結論が出ていないという事実である。英国の分子生物学者であるTrewavas(2001[147])は、25年間の実証研究から、有機農法ではなく慣行農業に軍配をあげている。慣行農業の方が有機農業より、環境に優しく持続可能であるとする意外な見解である。有機農業はイデオロギー的な側面が強く、今日のニーズに合わないと彼は主張している。*14
また、ニュージーランドの食品科学研究者であるBourn and Prescott (2002[148])も、有機・慣行農産物の栄養価、味覚および安全性に関する文献をレビューして、次のように指摘している。すなわち、有機・慣行野菜の窒素含有量は違うが、栄養価の研究は未開拓の分野である。味が違うと言われるが、それは相対的、主観的なものであり、研究によって賛否両論ある。むしろ、流通や収穫のシステムの影響も考慮した研究が待たれており、有機に残留農薬が少ないかどうかも、残留レベルの本格的記録の不足で結論できない、としている。*15
(2)有機農産物に対する消費者評価(ホールフーズの調査)
純粋科学的な研究を離れて、それでは、有機農産物(野菜)に対する消費者の見方はどのようなものだろうか? 国によって、あるいはデモグラフィック特性によって、評価や知覚は異なるのだろうか? 以下で示されるように、最終的には、有機農産物の価値評価は、慣行品との価格差(プレミアム)で消費者測定されることが慣例となっている。
なお、有機農産物を消費者が評価するとき、「環境」と「健康」がふたつの重要な評価軸になっている。これは、後述するように、対象顧客により、あるいは国民性で大きく評価の重みが異なっている。本節ではまず、日本の事例を見てみることになるが、比較のために、米国のオーガニック・スーパー「ホールフーズ」が2004年10月21日に公表した調査データ(2004 Whole Foods Market Organic Foods Trend Track)を見ておくことにする(同社HP: http://wholefoodsmarket.com/ )。要約表は、表1に整理してある。
ホールフーズのトラッキング調査によると、米国消費者の27%(4分の一以上)が、一年前と比べて有機食品をより多く食べるようになったとされている。調査のタイミングが、USDA(米国農務省)が、全米有機認証基準(National Organic Standards)を発表してからちょうど二年経過後であった。同調査によれば、半分以上の米国人(54%)が有機食品・飲料を購入しており、ほぼ10%が一週間に数回有機食品を消費する「レギュラー・ユーザー」であるとされている。調査対象がホールフーズに偏っていることも考えられるが、2004年度に同社の売上高が年率23%で伸びていることからも、米国の有機食品市場は驚異的に伸びていることがわかる。2004年実績では、全米の有機食品市場は年率で約20%成長し、約100億ドル=1兆1千億円となった。
有機食品を購入する理由としてはは、「環境によい」(58%)、「健康によい」(57%)をあげている。なお、「中小生産者を支援できるのでよい」(57%)、「おいしいから」(32%)、「品質がよい」(42%)となっている。興味深いのは、どのような有機食品を購入しているかを示したのが表1である。「どの商品(売場)を購入するために、ホールフーズに買い物に来るのですか?」に対して、68%の米国人が「生鮮野菜と果物」と答えている。これにより、同社売り場で青果部門の顧客吸引力が高いことがわかる。その他の売り場(商品)は、ほぼ同等の評価を受けている。
なお、一般的には、有機食品先進国であるデンマークなど欧州人に比べると、米国人の消費者は、社会的な「環境」より個人的な「健康」を重視して有機食品を選ぶ傾向があることが知られている。その点で、ホールフーズの調査は、米国ではやや特異と考えられないこともない。
<この付近に、表1 売り場別の買上率(ホールフーズとマザーズ藤が丘) 挿入>
表1 ホールフーズのどの売り場を訪問しているか?
青果(野菜・果物) 68% ( %)
パン類 26% ( %)
飲料(乳製品を除く) 25% ( %)
卵 26% ( %)
乳製品 24% ( %)
スープ・パスタ類 19% ( %)
肉類 22% ( %)
冷凍食品 18% ( %)
総菜・加工食品 14% ( %)
ベビーフード 7%
注:( )内は、筆者らが「マザーズ藤が丘店」で実施した調査
売り場商品の買上率(小川(2002){C })
(3)食の安全性と有機農産物に関する消費者調査(日本)
それでは、日本の消費者は有機食品をどのように評価しているだろうか? ここでは、2000年以降に発表された代表的な消費者調査の結果を紹介する。
峯木ら(2001[61])は、「有機農産物の店頭調査」と「消費者調査」を実施している。調査結果をまとめると、有機食品は68%の店舗で取り扱いがあったが、表示が「ない」「見にくい」「工夫の余地有り」(15%)で、販売方法に課題がある。消費者の84.6%が有機農産物に関心を示しており、63.4%は購入の経験があると答えていた。1999年時点での日本の有機食品購買経験率は、米国のホールフーズ調査より5年早いにもかかわらずかなり高い。価格が安くなることを望むととともに、33.2%が表示の信頼性向上が問題と答えている。その一方で、表示ガイドラインやオーガニックについての消費者の知識は低いことがわかった。 *16
松久(2000[62])は、東京都内に住む消費者(300票余)を対象にアンケート調査を実施している。有機農産物購入者は許容価格限度が高いこと、その一方で、有機農産物を高く評価する消費者は必ずしも実購買者ではないことが報告されている。*17 また、大学院生らが行った「価格プレミアムの仮想実験」(田口ら2001[63])、調査機関が実施した「原産地表示及び有機表示に関する意識調査」(井上 2000[64])が報告されている。*18
ブランド価値の観点から有機農産物を論じた実証研究もある。同志社大学の研究グループは、香川県民を対象に「地産地消の意識調査」(1775票)を実施している。野菜や果物、種類によって産地の重要度に微妙な差が見られること、対象商品がブランド化に有効かどうかは分けて考えるべきであることが報告されている。すなわち、生食果実では産地ブランド有効であり、調理必要な根野菜などはブランドよりも流通経路短縮の方が有効であるとの提言がなされている。*19
大浦ら(2002[66])の研究は、コンジョイント分析を用いて「原産地のブランド力」を測定したものである。原産地のブランド力は、海外産を100とすると、国内産は約2倍(1.8~2.1倍)のブランド力がある。また、有機農産物のプレミアム価値という観点からは、「減農薬・減化学肥料栽培」は、海外産地のブランド力を3割ほど押し上げる力があることが明らかになった。*20
澤田学(2003[67])の研究は、乳製品の表示問題を扱ったものである。調査方法は選択的コンジョイント分析で、アンケート方式で3種類の表示要因の部分価値(HACCPラベル、エコラベル、品質期限)を推定している。結果としては、エコ牛乳ラベルに対して消費者は8~11%のプレミアムを、HACCPラベルについては12~24%のプレミアムを、また、品質期限については残り日数が2日短くなると2~8%だけ評価を低下させることが推定されている。実際の小売市場では、交渉力の強い量販店の意向で、HACCP認証の牛乳は認証取得前と同価格で販売されており、消費者が1㍑あたり20~36円の純余剰を得ている。この純余剰額分について、著者は、HACCP導入のための公的助成が実施されれば理にかなうとしているる。*21
農林漁業金融公庫(2001[68])の「食品の安全性に関する意向調査調査」は、2000年という調査時期を反映して、「安全性」のみで「環境」というキーワードはほとんど出てこないのが印象的である。大きな調査項目は、①~③の3つである。
①食品の安全性に関する意識について: 「以前は高くなかったが最近高くなった」人が37.2%で最も多い。とくに、30代以下では48.0%。食品購入時に一番意識するのは、おいしさ(32.5%)、安全・安心(29.5%)、価格(15.4%)。食品の安全性で一番心配なのは、生鮮品では、「細菌」42.7%、「寄生虫」20.3%、「残留農薬」18.8%、加工品では「食品添加物」41.5%、「異物混入」24.2%、「細菌」14.2%、「遺伝子組み替え」7.1%となっている。②HACCP認証マークについて: 「みたことある」35.4%、「みたことない」64.6%。調査では、年代が低いほど「みたことがある」率が高い。見たことある人でも、購入時には「マークの有無にこだわらない」が42%、マークあるものを買う人が33.5%(50代が最も高く、40.9%)。③食品の安全性に問題が生じたときの行動: 異物混入の場合、「当該商品以外でもその業者の商品は買わない」が47.3%でもっとも高い 細菌汚染の場合は、「当該以外でも....」の回答が75.7%と高い。*22
2003年前後で、もっとも広範な消費者調査は、セゾン総合研究所(2003[69])によるアンケート調査である。「食の安全・安心に関する消費者意識と行動の変化」と題して、同研究所の「生活ネットメンバー」を対象に実施されたものである。やや長めになるが結果を要約する。
セゾン総合研究所によれば、「以前より食の安心安全を気にするようになった」人は、86.2%で、とくに女性は年代上がるほど高くなる。最も意識の低い20代男性でも、7割以上が「以前より気にする」と回答している。食の安全性が日本では確保されているかどうかについては、「部分的には確保」が41.2%で最も多く、全体に懐疑的である。
信頼性については、とくに「国内大手メーカー」については、「以前は信用していたがいまは信頼しない」が55.7%と手厳しい。農協も同回答が37.2%、行政、輸入業者、量販、大手外食についても軒並み3割以上が「いまは信頼しない」「もともと信頼していない」が海外生産者43.9%、輸入業者38.6%、行政39.4%で、「今は信頼しない」人とあわせると、各6~7割以上が不信感を持っている。一方、「信頼している」のは、国内生産者62.6%、「生協」57.3%で、他より信頼感高い。しかし、「今は信頼しなくなった」人も、各23.9%、22.9%おり、以前のような絶対的信頼感は薄れている。食肉偽装表示など食に関する認知度高く、また狂牛病事件10か月後の調査時点でも、回答者の3割が消費を抑制してい(のどモノ過ぎればであるが・・・)。
日常の行動としては、「表示やメニュー、店内の告知をよく見るようになった」が63.5%、「新聞やHPなどのニュースをよく見るようになった」が59.7%など、安全確保のための行動が増えた。購買行動については、「安全な食品を手に入れるには、相応のコスト負担はやむを得ない」人が73.9%、また、47.5%が「安全性に努力している生産者や店の商品を購入するようになった」としており、購買行動が変化している。購買行動の変更は年収が高い人に目立つが、年収300万以下でも変化 一方、チャネル変更に比べて、実際の食行動(外食減らすなど)を変える人は多くない。また、未婚者は関心が低く、購買行動の変化が少ない。食品表示については、「現在の表示は信用できない」が83.3%、「以前は信用していたが今は信頼しない」が5割で、一連の偽装事件の影響大であった。「店頭表示を詳しくして欲しい」と69.0%の人が望む。食の安全性担い手としては、「生産者やメーカーが安全性優先させること」が6割 行政には45.8%の期待にとどまった。*23
農水省(その外郭団体)も定期的に消費者調査を実施している。平成13年の有機栽培品に関連した調査(農水省全国主要都市一般消費者モニター1016名対象)によると、特別栽培農産物(無農薬栽培、無化学肥料栽培、減農薬栽培、減化学肥料栽培)のそれぞれの種類ごとに、購入経験を質問している。無農薬栽培は「毎日」~「たまに」購入する人の合計が53.9%、減農薬栽培は同57%であった。購入しない人にその理由を聞くと、普通の農産物で充分(42%)、近所にない(37%)、本当に特栽か信用できない(35%)、価格が高い(34%)の順となった。農薬・化学肥料の使用状況の表示は48%が現行でよいと答える一方、特栽各種の名称については、使用実態が客観的に把握できるような名称に改めるべきと38%と回答している。ガイドラインに基づく表示の信頼性は、「どちらともいえない」57%、「信頼できる」は31%、「信頼できない」12%となっている。*24
<この付近に 表2 食の安全性と有機食品に関するの消費者調査 挿入>
なお、有機野菜研究とはやや関連がうすいので本論文では詳細を省略するが、食品の安全性とトレーサビリティについては、日本でも多くの研究がなされている(豊田(2003[117])、富山(2003[118])、松田(2003[119]、土門(2002[120])、中嶋(2002[121]梅津(2001[122])、山本謙治(2003[123])、山本(2003[124])。*25
(3)食の安全性と情報提示に関する研究(欧米)
欧米の消費者は食の安全性をどのように考えているのだろうか? 2000年以降に発表された欧米のジャーナルから、安全性に関連した消費者調査の結果をレビューしてみる。 Ippolito and Mathios(2002[109])は、健康な食品に関する情報提示の効果を調査している。1984年10月、ケロッグ社が国立がん研究所(NCI)の協力で、食物繊維とがんの関係を強調する広告キャンペーンを実施したが、これは「オールブラン」の食物繊維量の多さを力説したキャンペーンであった。連邦取引委員会のふたりの研究者らの調査は、広告禁止規制の撤廃前後に広告の役割評価の違いを考察したものであった。食物シリアルの摂取が健康に良いという情報に消費者がどのように反応したかを調べている。1985年と1986年のブランド・レベルのシリアル消費データを分析すると、情報処理の効率性、情報費用の獲得、健康に対する価値などの要因について、消費者選択に有意な差違が存在する。この結果は、シリアル広告の解禁により特定階層の人々の情報獲得費用を低下させ、消費の拡大を招いた可能性を示唆する。つまり、健康情報へのアクセスにおいて不利益を被っていた人々(非白人、低教育等)に広告が集中していたことが明らかであった。*26
Halbrendt et al(2002[110])は、pST(豚成長ホルモン)使用の豚肉に対する消費者選好の調査をコンジョイント分析により調査している。遺伝子工学によって生み出されたpSTの使用(食品安全性の問題)/死亡の削減(栄養学上の問題)/価格(経済性)という3つの属性について、消費者価値のトレードオフ関係を比較した研究である。安全性(pST不使用)×健康(低脂肪)の属性が拮抗する場合、消費者はpST(安全性)に関して譲歩してでも、低脂肪(健康)を優先させることが明らかになった。つまり、脂肪を減らした製品ほど評価は高く、脂肪を削減しないものは低いという評価結果が出た。しかも、高価格製品と低価格製品の評点差は、脂肪削減率に従って拡大し、高い脂肪削減率のpST豚肉が選好された。*27
Caswell and Johnson(2002[112])は、安全性や確保や栄養情報の提示に対する企業側の対応を整理した論文である。1980年代以降、安全性や栄養属性など食品業界における企業の県境への対応は変化を見せた。それら戦略的対応を3つの視点から分類している。すなわち、①差別化、②責任と行政上の処分への対処、③政府の規制活動に対する制限と誘導であるとしている。*28 また、Cook(1996[113])は、農産物市場が失敗する場合をふたつに分けている。①消費者の選好が、価格、品質基準などのメカニズムを通して正確に生産者に伝えられない場合(この場合は、小売や卸売業者による生産者への情報伝達が不完全であり、消費者-生産者の情報の流れを改善することが必要である)。②ほとんどの消費者が、農薬、価格、外見上の品質について明確なトレードオフを形成する準備がない場合。*29
Caswell et al. (1994[115])は、農業と食の安全性に関する研究である。米国では安全性志向型製品の市場が潜在的に大きく、1990年の報告でも消費者の67%が食品安全性に関心が高いとしている。消費者の半数は、すでに10年前に、食品安全性に値段をつけて売る宣伝に反応していた。著者らの予見はかなり正しく、FDA(食品医薬品)は、貧富の差なく単一の安全性基準を適用することで、食料品は全て安全に流通できるという前提の下に、ブランド間の安全基準に本当の差違はなく、安全性による製品差別化はありえないという主張を展開していた。しかし、「有機」表示のような食品認証制度や政府基準を超える安全性を唱道する市場が、実際には2000年以降に急速に発展することになった。
当時、食品安全性市場が急成長しなかった理由として、4つの要因を挙げている。①食品安全性市場への不快感(「どの食品も安全」という社会的便益>消費者の選択肢増加による利益)という主張があること。②生産者は消費者よりも安全に関する情報を多く持ってきたこと。③消費者の情報は通常不完全なので、消費者の支払う対価と現実の危険性及び便益とが直結しない恐れがある。④食品安全性による差別化には、ブランド名、シンボル名、シンボル、認証などを通して消費者とコミュニケーションが必要で、そのためには明確な規格や安定した規制環境が不可欠である。*30
<この付近に 表3 食の安全と健康に関する欧米の論文 挿入>
(4)有機農産物と健康に関する消費者研究(欧米)
食品の摂取と健康の関連について、欧米ではたくさんの調査研究が存在している。
Kozup et al.(2003[136])は、レストランのメニューとパッケージ食品のラベルに記された健康と栄養情報の効果について調査している。消費者はかなり賢く、健康訴求の文句にはやや懐疑的であることが示されている。*31
やや古い研究ではあるが、米国のマーケティングリサーチャーのグループが、ビタミン・ミネラル、砂糖などに関する消費者知識によって購買をパターン変えさせる「情報提供プログラム」のデザインを考案している(Russo et al. (1986[140])。その結果によると、消費者の情報処理努力を減らすディスプレイは、通常のプロモーションより効果的に売上に影響するとされている。*32
Childs.(1997[141]),は、疾病予防と自然・有機・栄養食品の関連について、米国人消費者の態度を調査している。機能性食品(functional foods)や栄養補給食品(nutraceuticals)、phytochemical(疾病予防効果のある植物化学物質)などの商品カテゴリーのマーケティングがテーマである。健康を訴求した自然系食品に購入意思が高い消費者のデモグラフィック特性、好まれる摂取方式およびネーミングについて分析したものである。Childs.(1997[141])の論文は、10年前の米国の状況を記述しており、現状との比較においてとても興味深い。当時、米国人の55%は、果実、野菜、シリアルが疾病予防の機能を持っていると信じており、その傾向はますます強まる兆しをみせてはいた。しかし、3分の1は、植物化学物質の効用を信じてはおらず、最も好まれるのは、自然の食品から摂取する方法であった。比較的若い層の方が疾病予防に関心が高く、55歳から64歳の層では相対的に関心が低かった、と報告されている。また、マイノリティや高齢者向けの教育が必要であり、こうしたカテゴリーの商品に対するネーミングは、治療的・医薬的効果を示すものよりも、「栄養」を暗示するものが好まれる、と報告されている。*33
Yeung and Morris (2001[144])は、食品の安全性に対する消費者の認知に影響を与える要因と、購買行動への影響についての文献をレビューした展望論文である。食品の安全性リスクを、「微生物的危険」(サルモネラ菌の繁殖)、「化学的危険」(添加物等)、「技術的的危険」(食品照射、遺伝子操作)の3つに大別している。*34
(6)小活(未執筆)
<脚注>
*1 本論文は、「文部科学省科学研究費補助金」(平成15~17年度・基盤研究B)によって実施されている助成研究「有機農産物の安全性を考慮した消費者への情報提示と小売店の店舗デザイン」の一部である。なお、本論文で引用される広範な資料の収集は、小川研究室のリサーチアシスタント・青木恭子が行い、小川孔輔が資料を再編集した上で、レビュー論文の形式で文章化したものである。
*2中島紀一・趙鉄偉(2003[58])「中国新事情 大都市中産階級の形成と緑色食品」『月刊NOSAI』(全国農業共済協会)6月、44-50頁。以下は、中島らによる観察記録である。中国社会科学院は2002年、中国社会を5大等級に分類したが、「中間的社会階層」がこの新中間層(=年収2~10万元層=96~100万円)にあたり、その中心はポスト文革世代の25~35歳とされる 北京では「家福楽」(カルフール)の「有機農圧」(有機食品)コーナーや「華堂商場」(イトーヨーカ堂)の「小湯山」(緑色食品)などのコーナーが人気を集めている。安全性に疑いの濃い自由市場に対し、安全性・高品質を掲げる外資系等大手スーパーで、緑色食品がブランド化して販売されている。
筆者も、今年(2005年)3月と4月に中国(上海)を調査で訪問した際に、上海のカルフールで、色野菜コーナーを見つけた。後にネットを通して調べてみたところ、この会社は、元々日本向けに有機野菜の栽培を始めていたことが判明した。おそらく、植物検疫や残留農薬の問題で、日本向け輸出が難しくなったことと、中島らが指摘するように、国内市場が開けたことでハイパーマーケットでの有機野菜販売に切り替えたものと推測できる。
*3 日経食品マーケット(2003[59])「追跡 食の安全 中国産冷凍野菜 水泡に帰す残留農薬対策」『日経食品マーケット』7月号、109-112頁。「中国産ほうれん草」だけが違反を繰り返したのは、輸入時の監視体制に関連している。つまり、前回の違反により、モニタリング調査ではなく、届け出野菜の全量検査をする「命令検査」の対象になっていたが、違反対象の農薬「クロルピリホス」の基準値が低いため、違反摘発の確率が高まっていたからである。
*4 宮澤由彦・太田原高昭(2002)「中国における輸出向け「有機野菜」生産の背景と企業戦略-山東省の加工企業を事例として」『農経論叢』(北海道大学)第58号、123-133頁。
*5 筆者ら(小川、酒井)も、2003年12月に、山東省(青島郊外)と上海郊外にある有機農産物の大規模食品加工場を視察する機会を得た。いずれも主として日本向けの有機野菜加工場である。訪問先は、(1)「青島国際種苗有限公司」(キリンビールの資本系列、白菜を元とした育種・採種農場)青島李範区(2003年12月23日)、(2)「ミレニアム」(香港資本、350haの大規模有機野菜栽培農場)青島市郊外(2003年12月23日)、(3)「華建農産品有限公司」(日本向けの有機サツマイモの圃場と加工場)山東省沂水県(2003年12月24日)、(4)「山東省沂水県有機農産物圃場」(複数の圃場を案内)山東省沂水県(2003年12月24日)、(5)「交大農業科技有限公司」「上海九田食品有限公司」(日本向けの冷凍有機野菜加工場、約6億円)(2003年12月27日)。以上の調査報告記録は、「中国視察報告書」(酒井・小川 2004)として残されている。山東省の栽培加工状況について、宮澤ら(2002[60])の認識は、われわれの見聞とほぼ全面的に一致している。
*6飯澤理一郎(2001[83])「WTO体制とコーデックス」日本農業市場学会編『食品の安全性と品質表示』筑波書房、15-32頁。
*7 Jacques Berthelot (2003[85]), “Conference a hauts risques a Cancun: Les trois aberrations des politiques agricoles,” Le Monde Diplomatique. (邦訳:三浦礼恒訳(2003)「世界の自滅的な農業政策」『ル・モンド・ディプロマティーク日本語電子版』2003年9月号 http://www.diplo.jp//articles03/0309-4/html)。Nicolas Bell(2003[86]), “Voyage au pays des hommes invisibles: L’Europe organise la clandestinite,” Le Monde Diplomatique. (邦訳:瀬尾じゅん訳(2003)「ヨーロッパの豊かな台所の陰」『ル・モンド・ディプロマティーク日本語電子版』2003年4月号。南仏のある県では、この12年間で、43%の農家が廃業した一方、スーパーの収益は急上昇し、フランスの長者番付トップ10のうち5人までが大型小売店の経営者である。フランスやスペインの事業者は、人件費をさらに抑えるためにモロッコに投資したり、東欧や北アフリカの季節労働者たちを使う。イギリスでは、増え続ける東欧からの労働者を「マフィア集団」などが組織化し、賃金水準や労働条件を仕切っている。早くから農業の集約化を進めたオランダでは、不法労働者の3分の1に当たる10万人が花卉や青果の生産に従事する。フランスはじめ欧州では農業季節労働者の地位が古くから制度化されている。滞在期間は数週間、社会保険や年金はなく、賃金は非常に安く、組合も存在しない。EU東方拡大で、没落した何百万もの東欧の農民や、他の東欧人と、南欧の移民の間での競争が激化し、雇い主に有利な状況を生んでいる。雇い主はキリスト教文化圏の白人低廉労働者を好む傾向があり、北アフリカ移民労働者の人種差別的な排斥にもつながっている(苺摘みなど)。
*8 大企業の擁護的な機能を持つという観点は、Multinational Monitor (1997[153]), “Sabotaging Organic Standards,” Multinational Monitor, December, pp.6-7、においても見られる。NGO関係者らが、USDAの有機認証法案への疑義(GMや放射線照射容認案)を表明した記事。USDAは食品の安全性・農民の生計に責任があるとともに、農業の産業化とグローバル化の推進勢力でもあり、アグリビジネス大企業や化学肥料・バイテク企業とともに働くという、二面性があるという見解。
*9 Robins, Peter (2003{C1}), ‘Stolen Fruits,’ Zed Book.、小川孔輔(2004)「個人HP:フェアトレード + 新刊紹介:Peter Robins, ‘Stolen Fruits,’ Zed Book, 2003年(収奪された果実)」7月25日、(https://www.kosuke-ogawa.com/)
*10日本経済新聞社(2004{C002})「フェアトレード商品」『日本経済新聞 朝刊』7月22日号。フェアトレード(Fair Trade)商品とは、「公正な貿易取引商品」のことである。開発途上国(アフリカ、中南米など)の生産者の生活環境を守るために、先進国の購入者(消費者)が商品を安く買いたたかない生活支援運動である。数年前から欧州の国々ではじまり、スイスなど生協運動が盛んなところでは強力に推進されはじめている(2003年に、法政大学がセミナーで招聘したスイスの生協「ミグロス」の女性バイヤーは、アフリカから輸入するバラですでにフェアトレードを実行していることを力説していた。スローフードの動き、食のトレーサビリティの問題などととも関連がある。
*11矢野泉(2001[84])「輸入農産物の増大とポスト・ハーベスト農薬」日本農業市場学会編『食品の安全性と品質表示』筑波書房、33-51頁。
*12 M äder, Paul, Andreas FlieÂbach, David Dubois, Lucie Gunst, Padruot Fried and Urs Niggli (2002[145] ), “Soil Fertility and Biodiversity in Organic Farming,” Science, Vol.296, Issue 5573 (May 31), pp.1694-1697.
*13 Stokstad, Erik (2002[146] ), “Organic Farms Reap Many Benefits,” Science Now, May 30, pp.1-2
*14 Trewavas, Anthony (2001[147] ), “Urban Myths of Organic Farming,” Nature, March 22, pp.409-410.
*15 Bourn, Diane and John Prescott (2002[148]), “A Comparison of the Nutritional Value, Sensory Qualities, and Food Safety of Organically and Conventionally Produced Foods,” Critical Reviews in Food Science and Nutrition, Vol.42, No.1, pp.1-34.
*16峯木真知子・坂本薫・石井よう子・藤井昭子・新澤祥恵・川井考子・金谷昭子(2001[61])「食環境における食市場の変化と消費者行動–有機農産物の流通と消費」『日本調理科学会誌』第34巻第2号、214-223頁。調査内容は、「有機農産物に関する店頭調査」(全国6都市、107店舗、1999年)と「消費者調査」(女子大・短大生の家庭、719票)である。
*17 松久勉(2000[62])「有機農産物等に対する一般消費者の意識–減農薬栽培野菜を中心に」『農業経済研究別冊』(日本農業経済学会)、143-145頁。
*18 田口誠・盛岡通・楠部孝誠(2001[63])、”Preference Estimation toward Organic Vegetables through CV and Sales Experiments, and Consumer Surplus Analysis”『環境科学会誌』第14巻第5号、477-489頁。井上周一郎(2000[64])「生鮮食料品の原産地表示及び有機表示に関する意識調査について 特集・青果物の表示制度」『野菜季報』第70号、52-60頁。
*19関義雄・袁静・馬淵キノエ(2003[65])「消費者の視点から見た農産物ブランドの価値」『同志社商学』第54巻第5/6号、126-141頁。
*20大浦裕二・河野恵伸・合崎英男・佐藤和憲(2002[66])「青果物の産地・栽培方法に関するブランドパワーの測定」『農業経営通信』(独立行政法人農業技術研究機構中央農業総合研究センター経営計画部)第212号、30-33頁。大浦らの研究では、原産地名をブランドの一部と考え、産地競合のある青果物5品目について調査を実施し、国内外の産地ブランドの推定パラメーターを算出したうえで、各産地のブランド力、相対的ポジショニングと産地格差をシミュレーション分析している。首都圏世帯郵送調査で、有効回答254票
*21澤田学(2003[67])「畜産物需要開発調査研究から 消費者の牛乳選択行動における鮮度、安全性、グリーン購入志向のコンジョイント分析」『畜産の情報[国内編]』(農業畜産振興事業団)第161号、20-24頁。著者は帯広畜産大学の教授である。時代背景としては、2000年の雪印食中毒事件を受けた研究で、牛乳の安全性とHACCP認証制度のあり方への疑問を提示している。①牛乳への加工段階の安全性確保への認証表示としてのHACCPラベル、②生乳生産段階の環境対策(糞尿処理)認証表示としてのエコラベル=仮想ラベル、③品質保持期限までの残り日数(鮮度表示)に対する消費者の価値評価の間のトレードオフを推定している。札幌・松戸など消費者にアンケートであるが、回答率低い。
*22農林漁業金融公庫(2001[68])「調査報告 食品の安全性に関する意向調査-消費者の意識と問題発生時の購買行動 特集:消費者を見据えた食品提供を考える」『月刊HACCP』(鶏卵肉情報センター)第7巻第7号、48-58頁。沖縄除く都道府県庁所在地で2300世帯を対象に嫉視した郵送調査である。回収率35%、806票回収、うち50歳以上562票。
*23セゾン総合研究所(2003[69])「首都圏在住1200人(男女)を対象とした《アンケート調査結果》『食の安全・安心に関する消費者意識と行動の変化』」『食の科学』第299号、34-43頁。回収は1040票で、回収率は86.7%と高い。
*24農林水産省総合食料局消費生活課(2002[186])「テーマ1. 特別栽培農産物の表示に関する意識について」『平成13年度食料品消費モニター 第3回定期調査結果の概要について』農林水産省。毎年実施の消費者モニター調査については、テーマ別に多くの公刊資料が利用可能である([188]~ [196]、分権リストは(下)に収録予定)。
*25豊田雅廣(2003[117])「青果物のトレーサビリティ-情報開示と不正防止機能について-」『公庫月報』(農林漁業金融公庫)5月号、6-11頁。富山武夫(2003[118])「食品のトレーサビリティと行政の対応」『野菜季報』第78号、2-11頁。松田友義(2003[119])「青果物トレーサビリティ確立の課題 特集 農産物トレーサビリティの現段階」『農林統計調査』第53巻第1号、17-23頁。土門剛(2002[120])「農と食産業の”時々刻々” ヨーロッパに学ぶトレーサビリティ成功の秘訣(1) 第32回土門レポート2002」『農業経営者』第10巻第12号、32-35頁。中嶋康博(2002[121])「トレーサビリティへの課題 特集 リスク回避のマネジメントとその組織風土をいかに生み出すか」『生協運営資料』(日本生活協同組合連合会)、56-70頁。梅津鐵市(2001[122])「これからの野菜生産と情報管理」『野菜季報』3月号、2-11頁。山本謙治(2003[123])『実践 農産物トレーサビリティ--流通システムの「安心」の作り方』誠文堂新光社。山本謙治(2003[124])「売り手と買い手が向き合うインターネット競り機能」矢崎栄司著『危機かチャンスか 有機農業と食ビジネス』ほんの木、513-518頁。
*26 ポーリーン・M.イッパリート、アラン・D.マシオス(Pauline M. Ippolito, Alan D. Mathios)(2002[109])「情報、広告と健康選択-シリアル市場の研究」ジュリー・A・カズウェル編著(桜井倬治・加賀爪優他監訳)『食品安全と栄養の経済学』農林統計協会、55-93頁。(原出典は、The RAND Journal of Economics, No.21, Autumn 1990, pp.459-480.)。
*27 キャサリン・ハルブレント、ジョン・ペセック、エイプリル・パーソンズ、ロバート・リンドナー(Halbrendt, Catherine, John Pesek, April Parsons and Robert Lindner)(2002[110])「コンジョイント分析によるPST使用豚肉に対する消費者の受容態度の評価」ジュリー・A・カズウェル編著(桜井倬治・加賀爪優他監訳)『食品安全と栄養の経済学』農林統計協会、146-172頁。オーストラリアの消費者に対する1995年頃の調査である。
*28 ジュリー・A・カズウェル、ゲーリー・V・ジョンソン(Caswell, Julie A. and Gary V. Johnson)(2002[112])「第17章 食品安全性と栄養の規制に対する企業の戦略的対応」ジュリー・A・.カズウェル編著(桜井倬治・加賀爪優他監訳)『食品安全と栄養の経済学』農林統計協会、340-366頁。
*29 Cook, Roberta L. (1996[113])「第20章 食品安全性ラベルに対する消費者需要–持続的農業にとっての意味」桜井倬治編『環境保全型農業論』農林統計協会、300-314頁。(英文タイトルは”Consumer Demand for Food Safety-oriented Maketing Labels: Implications for Sustainable Agriculture”)。著者のスタンスは、現在の食品供給は安全で、慣行栽培と有機栽培のどちらが安全で環境に優しいかはまだ科学的に決着していないことを強調する立場。持続可能農法で作られた農産物の利益について、生産者は正確なメッセージを出し、消費者と生産者が充分対話し、合意を形成していくことが必要とする。
*30 Caswell, Julie A., Tanya Roberts, and C.T.Jordan Lin (1994[115]), “Opportunities to Market Food Safety,” Lyle P.Schertz and Lynn M. Daft eds., Food and Agricultural Markets: The Quiet Revolution, National Planning Association. (邦訳:「食品安全性の市場化の可能性」小西孝蔵)。なお、栄養特性市場は既に、差別化製品のマーケティングに必要な特徴をすべて備えているが、安全性の市場は発展初期段階で市場参入が複雑である。食品安全性販売には、供給システムの主体間の垂直的安全保証システムの開発が有効だが、生産・加工・流通方法の変更には困難伴う。様々なリスクに対して、どの安全性への配慮が生産・販売活動の焦点にすべきかの識別は、実はきわめて難しい問題である。例えば、食中毒病原菌と残留農薬のどちらの危険を重視するか?などについては、判断が難しい。
*31 Kozup, John C., Elizabeth H.Creyer and Scot Burton (2003[136]), “Making Healthful Food Choices: The Influence of Health Claims and Nutrition Information on Consumers’ Evaluations of Packaged Food Products and Restaurant Menu Items,” Journal of Marketing, Vol.67, No.2, pp.19-34。
なお、栄養情報と消費者については、Balasubramanian, Siva K. and Catherine Cole (2002[137] ), “Consumers’ Search and Use of Nutrition Information: The Challenge and Promise of the Nutrition Labeling and Education Act, ” Journal of Marketing, Vol.66, No.3, pp.112-127、がある。また、消費者特性(健康能力または健康モチベーション)と消費者の健康行動(健康情報収集~健康維持活動まで9段階)の関係をモデル分析して研究には、Moorman, Christine and Erika Matulich (2003[139] ), “A Model of Consumers’ Preventive Health Behaviours: The Role of Health Motivation and Health Ability,” Journal of Consumer Research, Vol.20(September), pp.208-228、が参照できる。
*32 Russo, J.Edward, Richard Staelin, Catherine A.Nolan, Gary J.Russell and Barbara L.Metcalf (1986[140]), “Nutrition Information in the Supermarket,” Journal of Consumer Research,Vol.13(June), pp.48-70.
*33 Childs, Nancy M.(1997[141]), “Foods That Help Prevent Disease:Consumer Attitudes and Public Policy Implications,” The Journal of Consumer Marketing, Vol.14, No.6, pp.433-445.なお、店舗イメージとリスク認識を分析した提案型の論文としては、Mitchell, V-W.(1998[142]), “A Role for Consumer Risk Perceptions in Grocery Retailing,” British Food Journal, Vol.100,
*34 Yeung, Ruth M.W. and Joe Morris (2001[144]), “Food Safety Risk: Consumer Perception and Purchase Behaviour,” British Food Journal, Vol.103, Issue 3, pp.170-186.No.4, pp.171-183、がある。彼らは、消費者がリスクを緩和する手段として11の方法を取り上げている。①ブランド・ロイヤリティ、②ブランド・イメージ、③政府の検査、④民間の検査、⑤店舗イメージ、⑥無料サンプル、⑦代金払戻保証、⑧買い漁り、⑨高価なモデル、⑩推薦(推奨)、⑪口コミ。それに加えて、顧客ガイド、製品情報、安値の品、試供品を加える研究もある。
<参考文献(中)>
注釈: データベース上の連番{ }は、既刊のシリーズ論文(上)に続いているが、
本論文(上)から新たに番号が(1)から始まっている。なお、一部は、続刊(下)
で引用される予定の論文を含んでいる。
(1)中島紀一・趙鉄偉(2003[58])「中国新事情 大都市中産階級の形成と緑色食品」『月刊NOSAI』(全国農業共済協会)6月、44-50頁
(2)日経食品マーケット(2003[59])「追跡 食の安全 中国産冷凍野菜 水泡に帰す残留農薬対策」『日経食品マーケット』7月号、109-112頁。
(3)宮澤由彦・太田原高昭(2002[60])「中国における輸出向け「有機野菜」生産の背景と企業戦略-山東省の加工企業を事例として」『農経論叢』(北海道大学)第58号、123-133頁。
(4)峯木真知子・坂本薫・石井よう子・藤井昭子・新澤祥恵・川井考子・金谷昭子(2001年[61])「食環境における食市場の変化と消費者行動–有機農産物の流通と消費」『日本調理科学会誌』第34巻第2号、214-223頁。
(5)松久勉(2000[62])「有機農産物等に対する一般消費者の意識–減農薬栽培野菜を中心に」『農業経済研究別冊』(日本農業経済学会)、143-145頁。
(6)田口誠・盛岡通・楠部孝誠(2001[63])、”Preference Estimation toward Organic Vegetables through CV and Sales Experiments, and Consumer Surplus Analysis”『環境科学会誌』第14巻第5号、477-489頁。
(7)井上周一郎(2000[64])「生鮮食料品の原産地表示及び有機表示に関する意識調査について 特集・青果物の表示制度」『野菜季報』第70号、52-60頁。
(8)関義雄・袁静・馬淵キノエ(2003[65])「消費者の視点から見た農産物ブランドの価値」『同志社商学』第54巻第5/6号、126-141頁。
(9)大浦裕二・河野恵伸・合崎英男・佐藤和憲(2002[66])「青果物の産地・栽培方法に関するブランドパワーの測定」『農業経営通信』(独立行政法人農業技術研究機構中央農業総合研究センター経営計画部)第212号、30-33頁。
(10)澤田学(2003[67])「畜産物需要開発調査研究から 消費者の牛乳選択行動における鮮度、安全性、グリーン購入志向のコンジョイント分析」『畜産の情報[国内編]』(農業畜産振興事業団)第161号、20-24頁。
(11)農林漁業金融公庫(2001[68])「調査報告 食品の安全性に関する意向調査-消費者の意識と問題発生時の購買行動 特集:消費者を見据えた食品提供を考える」『月刊HACCP』(鶏卵肉情報センター)第7巻第7号、48-58頁。
(12)セゾン総合研究所(2003[69])「首都圏在住1200人(男女)を対象とした《アンケート調査結果》『食の安全・安心に関する消費者意識と行動の変化』」『食の科学』第299号、34-43頁。
(13)日経デザイン(2003[70])「安心ブランドを作る表現と仕組み 戦略 トレーサビリティー」『日経デザイン』6月号、72-75頁。
(14)柚木治(2003[71])「日本農業の構造改革にビジネスチャンス」矢崎栄司著『危機かチャンスか 有機農業と食ビジネス』ほんの木、519-528頁。
(15)小野敏明(2003[72])「ブランドを確立して、「環境」「国産」「味」を守る」矢崎栄司著『危機かチャンスか 有機農業と食ビジネス』ほんの木、390-403頁。
(16)吉澤四郎(1992[73])「[書評] 松村和則・青木辰司編(1991)『有機農業運動の地域的展開-山形県高畠町の実践から-』家の光協会」『国民生活研究』第32巻第1号、65-69頁。
(17)井上忠司(1997[74])「「京野菜」ブランド確立による伝統野菜の振興 特集 農業の新展開とマーケティング戦略 消費者ニーズと農産物ブランド戦略」『農業と経済』第63巻第1号、57-64頁。
(18)埼玉県農林部経済流通課(2000[75])「埼玉県における産直への取組 野菜直売場シリーズ(第一回)」『野菜季報』第70号、61-69頁。
(19)中島紀一(1997[76])「有機野菜への信頼性確保と産地づくり-JA山武郡市睦岡有機部会の事例 特集 農業の新展開とマーケティング戦略 消費者ニーズと農産物ブランド戦略」『農業と経済』第63巻第1号、40-47頁。
(20)栗原大二(1998[77])「有機野菜産地にみるマーケティング面の特色」『施設園芸』第40巻第7号、34 – 41頁。
(21)中島紀一(1997[78])「販売チャンネル多元化への挑戦–福島県・JA熱塩加納村の有機・低農薬米の取り組み 特集 有機農産物ビジネスの可能性を探る」『農業と経済』第63巻第7号、40- 44頁。
(22)向井好美(1997[79])「自然生態系農業での地域活性化戦略 特集 有機農産物ビジネスの可能性を探る」『農業と経済』第63巻第7号、45-49頁。
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(24)阮蔚(ルアン・ウェイ)(2003[81])「中国で’日本ブランド農産物’はどう見られているのか 国境を越える農産物マーケティング 脱・敗北主義へ 日本農業というブランド力」『農業経営者』18-19頁。
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(51) アイリーン・O・ヴァン・レーヴェンスウェーイ、ジョン・P・ヘーン(Eileen O.van Ravenswaay, John P. Hoehn)(2002[108])「健康リスク情報の食品需要に対する影響-アラーとリンゴに関する事例的研究」ジュリー・A.カズウェル編『食品安全と栄養の経済学』(桜井倬治・加賀爪優・松田友義・新山陽子監訳)農林統計協会、35-54頁。
(52)ポーリーン・M.イッパリート、アラン・D.マシオス(Pauline M. Ippolito, Alan D. Mathios)(2002[109])「情報、広告と健康選択-シリアル市場の研究」ジュリー・A・カズウェル編著(桜井倬治・加賀爪優他監訳)『食品安全と栄養の経済学』農林統計協会、55-93頁。(原出典はThe RAND Journal of Economics, No.21,Autumn 1990, pp.459-480.)
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(54)ディアナ・グローブ、ロビン・ドウシット、リディア・ゼペダ(Deana Grobe, Robin Douthitt, Lydia Zepeda)(2002[111])「食品関連バイオテクノロジー-遺伝子組替えウシ成長ホルモン(rbGH)-に関する消費者のリスク認識プロフィール」ジュリー・A・カズウェル編著(桜井倬治・加賀爪優他監訳)『食品安全と栄養の経済学』農林統計協会、226-248頁。(原出典はCaswell, Julie A.ed.(1995), Valuing Food Safety and Nutrition, Westview Press, 所収論文)
(55)ジュリー・A・カズウェル、ゲーリー・V・ジョンソン(Caswell, Julie A. and Gary V. Johnson)(2002[112])「第17章 食品安全性と栄養の規制に対する企業の戦略的対応」ジュリー・A・.カズウェル編著(桜井倬治・加賀爪優他監訳)『食品安全と栄養の経済学』農林統計協会、340-366頁。
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(57)van Ravenswaay, Eileen O. and Tanya Roberts(1996[114])「第19章 食品安全性をめぐる課題とその経済分析」桜井倬治編『環境保全型農業論』(財)農林統計協会、269-299頁。(注:英文タイトルは”Food Safety Issues and Economic Analysis”)
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