「市民から文化力」: 3月に発行された「街オリ」で受けたインタビュー記事です

 「なぜ”フラワーバレンタイン”をはじめたのか?」について語ったインタビュー記事である。3月11日の前後に発刊されたものである。半年遅れて、ブログにアップする。


【有識者キャプション】
1951年生まれ秋田県能代市出身。東京大学経済学研究科博士課程卒業。
現在、花の持つ素晴らしさをより多くの人に伝えていくために、花業界から成る団体の設立や数々の花にまつわるプロジェクトを手掛けている。
1977年法政大学経営学部講師、その後79年に助教授に昇進。1982年よりカリフォルニア大学バークレー校に客員研究員として留学。帰国した後、1986年法政大学経営学部教授、同大学産業情報センター所長などを歴任。また大手企業のコンサルティングや数々の書籍の執筆も手掛ける。現職は、法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科教授(マーケティング担当)、日本フローラルマーケティング協会会長(創設者)、MPSジャパン取締役(創業者)。

 記事URL(文化庁)
 http://www.bunkaryoku.bunka.go.jp/shimin/report110715.html

【本文】
<「フラワーバレンタイン」など駅などで耳にする花のキャンペーンの仕掛けをされていますが、なぜそのようなことをされようと思われたのですか?>

「花」をプレゼントされて嫌な気持ちになる人はいないと思います、ですので「花は人を幸せにしてくれるもの」であると思っています。近頃、グリーンレンタル(オフィス、店舗やイベントなどで観葉植物を購入せずにレンタルできる)という制度がありますが、これはまさに人が植物が傍にあることを求めている結果なのではないでしょうか。またそれと同時に、「花言葉」により花を通じて様々なメッセージを発信することができますし、花を身近に置くことは病理学的にも効果があると言われています。

そのような、「花のある生活は心豊かに生きていける」という原点にある思いを大切にしながら、より多くの方にお花を愉しんでもらうにはどうしたら良いのかという視点でキャンペーンなど様々な活動を展開しています。それと、日本人の男性が女性に花を贈る習慣を定着させたいと考えたのも理由のひとつです。

その一つとして、今年は「本物のバレンタインはじめよう」というキャッチフレーズのもと、「フラワーバレンタイン」を花贈り一大イベントとして推進しました。花屋の店頭で本キャンペーンを告知したり、テレビ局5社で放映されたりしたので、耳にして下さった方も多いのではないでしょうか。
本キャンペーンは、バレンタインデーの日に、男性から女性への日ごろの感謝や愛情を花を通じて伝えようというものです。バレンタインデーの前日である13日(日)に、例えば銀座・横浜・吉祥寺などで、男性に対して1万本の花を無料で配布しました。それを女性に渡してもらうことで、女性の喜んだ顔に触れてもらおうと考えたからです。
これは、小売店だけではなく卸売り市場の花き流通業、花き生産者等にも広く声をかけ展開した結果、業界一丸となって取り組むことができました。
このようにして、花を贈ること自体をかっこ良いこと思える世の中にしていければと思っています。

その他の取り組みとして、「ミモザイエローキャンペーン」も行ってきました。3月8日は「ミモザの日」と呼ばれ、国際女性デーでもあります。イタリアなどでは、男性から女性への感謝の気持ちを贈る日とされています。この時期に、花屋の店頭でミモザを使ったブーケを多く並べたり、売上の一部を寄付するというキャンペーンを実施しました。
日本でも花を通じて、このような気持ちを体現できればと考えています。

花を贈る、花が身近にあるということで生まれるコミュニケーションは多くあります。
花が会話や人間関係を築くきかっけになっていけばと思っています。

<「花」業界に注目されたきかっけは、どのようなことからだったのでしょうか?>

自動車業界やアパレル業界など多くの産業分野では専門家と呼ばれる人がいますが、私が得意分野を探していた1980年代後半には、日本の花業界は、1兆円規模のマーケットがあったにも関わらず、業界の専門家が誰もいなかったのです。そのような現状を踏まえて、私が活動を始めました。

<花業界をどのように変革されようと考え活動を展開されているのですか>
花が消費者の手に渡るまでには、どのような花を咲かせるのかという「育種(いくしゅ)」から始まり、それを育てる生産者、流通業者そして小売と様々な人々が関わっています。
その流れを一貫したものにして、より多くの方に花を愉しんでもらいたいと考えています。
例えば、流通面で言えば、育種から小売まで一連の流れを一貫させていく試みの一つとして「花の日持ち保証」をとり入れようと動いています。期限内に花が枯れてしまった場合には、お取り換えをするというもので、農林水産省の実証事業として、JFMA(日本フローラルマーケティング協会)が受託して実施しました。これには、生産者が花を保冷して運ぶ必要があったりと随所で努力しなくてはいけない部分がたくさんありますが、他の業界であればやっていることですので取り組む必要があることだと思っています。
また、花という存在を消費者により身近なものにしていくためには、トレンドを創ることが重要だと思います。その一つとして、上述の通り今年から業界で統一して大々的に取り組んだ「フラワーバレンタイン」というキャンペーンがあります。このように、トレンドを創り発信していくということは、他のイベント開催等々にも転用できる枠組みだと思っています。
そして一般消費者以外をターゲットとして考え取り組んでいるものとして、世界27カ国913社が出展する「国際フラワーEXPO」があります。これは、日本がアジアの花業界の中心になっていこうと考え開催しているものです。

「花を贈られて嫌な人はいない」「花は人を幸せにする力を持っている」と思う一方で、花が日常生活の一部になっていない理由は、「高い」「枯れる」「デザインが素晴らしくない」「花屋に行っても1本幾らか分からない」などがあると思っています。
花業界も消費者の視点に立った施策が必要です。近頃は、ブーケが●●円と、値段を表示して、見てわかるようなかたちで提示している花屋さんも出てきて、売上を上げています。ただ、それが業界全体にまで至っているかというとそうとは言えません。また、デザインの豊富さも今後は必要です。同じような色やかたちではなく、消費者が望むようなものを作っていかなくてはいけないと思っています。

<今後、特に一般消費者向けの活動としてどのようなことをお考えですか?>
何かの機会、例えばお誕生日などの際に、花をプレゼントすることが「かっこ良いこと」になっていけばと思っています。今では、男性から女性にお花を贈るのは「キザな感じがする」という人が多いと思います。それを少しずつ、様々なキャンペーンなどで変えていきたいと考えています。

そのように進めていくことで、花が日常生活の一部、「身近にある普通のもの」になっていくのではないかと思います。