以下は、2006年「ブランド論」の課題参考記事です。
**********************
製造小売 SPA 記事 ハニーズ他
「ハニーズ」急拡大の秘密――流行見てから一気生産、企画から店着まで30日。2006/03/06, , 日経流通新聞MJ, 1ページ, 有, 2613文字
服のデータ化、現地から生地活用
海外工場と臨戦態勢
福島県いわき市が地盤の婦人服専門店、ハニーズが快走を続けている。十代、二十代女性向けの衣料を千―二千九百円の低価格で開発、完売が続出する。強さの秘密は生産地、中国・韓国の中小工場と濃密な関係を築き、流行のピークに向かって一気に製造、店に並べるスピード。そして流行情報を社員総がかりで集める現場の泥くささだ。(関連記事3面に)
「さあ、次はワンピースにいきましょう。胸元のフリルを豪華にするのだけは注意して。原価は一枚五ドル一〇セントでどうですか」「うーん、OK。やりましょう」「了解。では五千枚、三十日で店着お願いします」
中国・韓国にある四つのハニーズの提携工場の担当者が流ちょうな日本語を話し、次々と発注が決まる。毎週金曜日、いわき市の本社二階で開かれる商談風景だ。
商談ブースには二百を超す大量のサンプル生地が置いてある。肌触りや仕上げに問題点があるとすぐに、サンプルを手に取ってひざをつき合わせて改善策を話し合う。
商品企画から店頭に並ぶまで、大手のアパレル製造卸やユニクロなどのSPA(製造小売り)が約九十日かかるのを、ハニーズは約四十日でこなす。最速三十日で店頭に並ぶ商品さえある。
正価販売率は80%
流行を先読みする他社は、どうしても見切り発車でデザインせざるをえない。デザインが流行すれば売れるが、保証はない。ハニーズは流行の兆しが見えてから企画に取りかかっても、ピークに店頭に商品を並べることができる。旬の商品を売れる分だけ旬に投入。売り切れれば次の商品を用意する。
この結果、値引きせずに販売した商品の割合を示す「正価販売率」は業界で及第点とされる六〇%を大幅に上回る約八〇%。十枚中、八枚を正価で売るのはアパレルでは突出した数字だ。
五十日も日数を短縮できるのはなぜか。
一般のアパレルは他のブランドにないオリジナルの服を作るため、デザインより前に、最初に商社などを通じ生地やボタンを押さえる。まずここまでに一カ月かかる。次にデザインを考え、サンプルを作り、バイヤー向けの展示会を開く。意見を取り込みデザインを変更し、本格的に発注。この時点でさらに一カ月。生産し店頭に並ぶまでやはり一カ月が必要だ。
対してハニーズは中国や韓国の提携工場が既に所有している生地を使って服を製造する。バイヤー向け展示会も開かない。他社は商品のサンプルを国際郵便で送り合い、数週間をかけて仕立ての細かい調整をするが、ハニーズは提携工場の責任者が、月に一度サンプルを持って本社を訪れるだけだ。
デザイン決定1日で
色、素材、デザイン、製造原価を午前から夕方までの六―七時間で集中的に決める。必要性が少ないと判断した作業を思い切って省くことで、他社が二カ月かける工程を一日に短縮した。メールを使った商談先との交渉が増えても、「互いに生地を手に取り、顔を見ながらやりとりした方が圧倒的に速い」(大橋弘明・商品企画部長)。対面という“アナログ情報”の質量を重視する。
発注型数は月に約三百―四百型。各型の生産枚数は三千―一万枚。契約する二十の工場はすべて中小。ワールドなど他の日本の衣料企業の生産も請け負う折り紙付きだ。工場長や社長クラスが毎月、日本を訪れるのは一苦労だが、ハニーズからの受注額は一回当たり約一億円と中小企業にとっては上得意先だ。
ハニーズは生産量全体の三%程度を国内の自社工場で製造する。日本の生地情報を収集するほか提携に名乗りを上げる海外工場の実力を、自社と比較して判断する。
発注作業を円滑に進めるための発注書作りの工程にもスピードアップの秘訣がある。ハニーズでは発注作業を行う前日の木曜日に、デザインを決める会議を開く。この会議で決まった七十―八十のデザインの発注書は当日の夜中に完成させなくてはならない。
社内の専用システムには今まで発注した約一万を超す服の型が収められている。新しいデザインの仕様書を作る際は、類似する型を呼び出し、「袖を少し短く」「フリルをもっと多く」と少し手を加えるだけ。一から絵を描く必要がない。
今期、出店上積145店に
一月十一日、午後三時三〇分。東京・丸の内のある証券会社で開かれた決算説明会。集まった約百人の証券アナリストや機関投資家は、発表された決算短信のある数字にくぎ付けになった。「五七・四%」。ハニーズの二〇〇五年十一月中間期の売上高総利益率だ。「粗利が伸びた理由を教えて」「どこまで伸ばせますか」。アナリストが矢継ぎ早に江尻義久社長に質問を浴びせる。
直近の本決算で売上高総利益率が五〇%を上回った上場衣料専門店は、ハニーズ(五五・四%)、ポイント(六〇・四%、〇五年二月期)、ユナイテッドアローズ(五三・二%、〇五年三月期)の三社だけ。ただ、平均客単価はポイントが四千円弱、ユナイテッドアローズは約一万三千円(主力の「ユナイテッドアローズ」)であるのに対し、ハニーズは約千六百円と圧倒的に低い。
いちよし経済研究所の大石益美主任研究員は「この客単価で粗利益率が五〇%超は驚異的。中国生産なら達成できるという数字ではない。スピード生産や在庫抑制などの仕組みを完成させたのが大きい」と分析する。
ただ、値付け段階の利益は決して高くない。ハニーズの値入れ率(定価に対する販売利益の割合)は約六〇%。八百円の製造原価の品を二千円で売る計算。大手アパレルなどの平均である七〇%より約一〇ポイント低い。値引き販売をしなくても売れる生産体制を構築し、他社より少なめに設定した粗利を最後まで守りきる。これがハニーズの強さの神髄だ。
高い収益率を背景に、出店も積極化している。〇六年五月期は当初百三十店の出店を計画していたが、デベロッパーからの出店要請が相次いだ結果、十五店を上積みする。二月末時点の店舗数は四百八十八。江尻社長は「今後五―六年で国内千二百店体制を築く」と高い目標を掲げる。
こうした大量出店に対し、販売員を育成できるかが今後の課題。景気回復に伴い優秀な人材確保が難しくなっている。年間百店超のペースで店舗が増えれば、接客や店舗運営などに対応できる人材育成は難しくなる。店頭の販売力低下が思わぬアキレスけんになる可能性もある。(小山和幸)
【図・写真】▲企画担当者が集まり、発注する商品を決める(福島県いわき市のハニーズ)
ハニーズ社長江尻義久氏――高感度・低価格の洋服を(トップの戦略)2006/03/06, , 日経流通新聞MJ, 3ページ, 有, 2512文字
中国進出、5年間は実験
高い利益率を後ろ盾に大量出店を進めるハニーズ。一代でSPA(製造小売業)への転換や中国への製造移管など、収益の基盤を築いた江尻義久社長は国内千二百店体制と、中国事業の足がかり作りを次の目標に掲げる。「紳士や子供服は当面手掛けるつもりはない」と述べ、まずは婦人服業界で確固たる地位を築くことに全力を注ぐ。=1面参照
(聞き手は日経MJ編集長 為定明雄)
――一九七〇年代後半に家業の帽子店からカジュアルの婦人服店に転換したのが事業の始まりだそうですね。
「帽子屋はもともと小さな商売。三十歳を超え、新しい事業を模索していました。親せきが婦人服店を手掛けていたことも始めた理由の一つです。十―二十代の若い女性を狙ったのは行きつけの店が決まってない年代だからです」
――最初からSPAの形をとったのですか。
「最初は東京の中小メーカーから商品を仕入れていましたが、そのブランドが人気になると価格が上がってしまう。高感度・低価格の基本線を崩さないためにSPAを始めたのです」
――中国に製造移管後に業績が拡大しました。
「二〇〇〇年にほぼ全面移管しました。従来は日本で製造し、二千九百―三千九百円で売ってましたが、営業利益率は二%程度。当時はユニクロの千九百円フリースが脚光を浴びたころで中国の縫製水準も上がっていましたし、千―二千九百円と価格を下げ、かつ同じ品質の物を作ろうと思い切りました。四〇%台前半の粗利益率が五〇%弱にまで改善しました」
――発注から納品までのスピードが強みですがもっと短くできますか。
「あらかじめ生地を大量に確保しておけば生産日数を短くできますが、それでは流行ではなく生地に合わせたデザインになる。これでは本末転倒。三十―四十日くらいがちょうどいいですね」
都内のJR駅
みな出店可能
――国内千二百店を目標としていますが、店舗数の根拠は。
「当社の店舗が開設できそうな商業施設は全国に約三千六百あるとみており、その三分の一を狙おうと考えました。粗利益率が高いですから、小さな商業施設で売り上げが少なくても黒字にできます。都市の店舗は全体の三割程で出店余地は大きい。人口二万―三万人の町で採算がとれるので、東京ならJRの駅ごとに出店できます」
――年間百店以上も出店すると人材育成が追いつかないのでは。
「ここ数年は大学の新卒者を五十―六十人採用しているほか、優秀なアルバイトも正社員に登用しています。もともと若い女性が働きたい業種ですから、人手の確保には苦労していません。新人は新店ではなく、先輩社員のいる店で勉強させます。そして二―三年後に店長として全国の店舗に配置します。地方に転勤する場合、住む場所を当社で手当てしますから意外にも転勤を嫌がる女性社員は少ないんです」
――買収案件を持ち込まれたりしませんか。
「確かにあります。ただ三十店展開する専門店を買収しても、当社は二―三カ月で同じ数の店を作ってしまいますから、自前の方が効率的。買収に積極的な考えは持っていません」
ネット通販
手間多過ぎ
――一月に海外一号店となる上海店を出しました。
「現地で人気の色や素材を研究する狙いで出店しました。一号店の運営は現地のデベロッパーに任せていますが、現在一〇〇%出資の現地法人の設立を申請中です。認可されれば直営で運営します。五年は実験期間と位置付け、それでも赤字ならば利益が出やすい卸売りに替えることも考えています。ただ、中国は当たれば大きいです」
――紳士や子供服、ネット販売など他のビジネスは考えませんか。
「紳士・子供は現在の事業の伸びる余地が小さくなってからでも遅くない。ネット通販は商品を箱に入れて、あて名を書いて、さらにお金がちゃんと払われるかを気にして、と通常の小売りより手間がかかり過ぎます。カタログやネットでは実際の商品と同じ色が再現できません」
――少子化に伴い主要客層の人口が減っていきます。
「二十歳前後をメーンとしながらも、二十代後半から三十代前半の女性が今後も長く来てくれる店にしなければ。そのためには、ゆとりのあるサイズの服を作る必要がありますが、それでも在庫や生地のロスが出ない仕組みを研究しています」
――次の世代へのバトンタッチの時期はどう考えていますか。
「国内千二百店、そして中国ビジネスの足がかりを作るのが私の役目。来年還暦を迎えますが、あと五年社長をしてバトンタッチ、その後五年会長を務める、というのが理想でしょう。私はスタートが三十歳と遅れましたので、あと十年頑張ろうと思います。次の社長は最も仕事ができる三十代まで若返った方がいいでしょう。最初は試行錯誤するでしょうから、踏み誤らないようアドバイスはするつもりです」
業績データから
大量出店で費用重く
二〇〇六年五月期の連結売上高は前期比三九%増の四百十五億円、経常利益は七一%増の六十六億円と、大幅な伸びを見込む。年百店超の出店を始めた〇四年五月期以降、毎期約四割のペースで増収が続く。
消化率や中国生産比率の上昇で、売上高総利益率は年々改善。併せて売上高営業利益率も今期は一五・九%と〇二年五月期の二倍弱に達する見込み。ユニクロやポイントなどSPAの高収益企業に匹敵する水準だ。ただ、大量出店の反動で店舗費用がかさみ、販管費率はここ二期、四〇%を下回れていない。
既存店売上高は今期、九カ月中八カ月で前年比プラス。家賃などの固定費を吸収している。ただ、今年一月は予想以上の厳冬で主力のインナー類が不振。前年比五・二%減と痛手を食った。天候への対応力強化が今後の課題だ。(小山和幸)
スコープ
着回しがしやすいカットソーやワンピースは店舗の前方に陳列。販売点数の増加に寄与している
えじり よしひさ 1946年(昭21年)福島県生まれ。69年早大一文卒、父親が経営するエジリ帽子店に入社。78年に婦人服販売のエジリ(現ハニーズ)を設立し、専務。86年から社長。「グッドよりベターを」と、部下にもあくなき事業モデルの改善を求める。仕事はいつもスーツ姿。「流行を追うのは若者に任せている」
「ハニーズ」急拡大の秘密――デザイン情報を徹底収集。
2006/03/06, , 日経流通新聞MJ, 1ページ, 有, 1122文字
週1回7時間、渋谷で偵察
早く生産しても流行のデザインから踏み外せば、主要客層の十―二十代の女性には受け入れられない。流行を作らずに追いかけるハニーズにとって、旬の情報を確実にとらえて商品に反映することが興廃のカギを握る。
胸元が開いたレース付きのワンピースのイラストがさらさらと手帳に書き込まれる。色や縫製の説明も忘れない。水曜日朝、ハニーズのデザイナー、栗田美奈子さんは「渋谷109」前で入店する客の服装を観察する。店に到着してから七時間で約四十のイラストを描き上げ、夕方、いわき市の本社に戻った。
栗田さんを含めた三人の本社デザイナーは毎週、東京を訪れる。ギャル系ファッションは渋谷109、普通のOL向けはJR新宿駅、ストリート系は原宿竹下通りと、ローテーションで持ち場を変える。
デザイナーの「援軍」は約四百八十店の店長や販売スタッフ。毎週月曜日に店の売れ筋を文章にまとめ、店のパソコンから本社にメールする。本社には「隣の店では、高校生に白のプリーツスカートが人気。当店にもすぐに送って欲しい」など自店やライバル店の生の情報が続々と集まる。
アパレル企業にとって見逃せないファッション誌の記事を分析するのが、約五十人いる「社内モニター」だ。モニターはB4の専用用紙に、誌面から気になったデザインの写真を切り抜き、コメントを付けて毎月本社に提出する。
一般のアパレルの場合、情報収集はブランドのデザイナーや企画担当者などせいぜい数人。これほどの「総力戦」で臨むハニーズは異例だ。
集まった膨大な流行や売れ筋情報を吟味し、デザインを決定する会議は毎週木曜日の朝だ。約三十人の参加者で、江尻社長や経営幹部の存在は重くない。主役は若手デザイナーやバイヤーだ。「ワンピースは社長が薦めるものより、普段着に近いデザインが売れると思います。店頭情報でもその傾向が出ています」。二十代前半の女性社員が江尻社長にきっぱり反対する光景は普通だ。
イラストやサンプルの服を紙袋いっぱいに携えデザイナーらが自社のオリジナルデザインを簡明に説明する。午後からは集まった三百以上のデザインを、実際に製品として発注する七十―八十にまでふるいにかける。
評価が分かれた場合は多数決。江尻社長は「一票」の権限しか持たない。社長の独断でデザインを決め憂き目をみた衣料専門店はいくつもあった。「私の考えより、現場が集めた情報を信じる方が当たる確率がはるかに高い」(江尻社長)
人海戦術で情報を徹底的にかき集め、デザインは現場重視の合議制で採用する。これが高い販売消化率を支える仕組みだ。
【図・写真】▼渋谷の街頭で服の流行を調べるデザイナーの栗田さんと詳細に書き込まれたノート
ダイエーの衣料・生活用品、ニトリや赤ちゃん本舗、外部専門店に委託加速。
2006/02/10, , 日本経済新聞 朝刊, 12ページ, 有, 881文字
集客力向上狙う
産業再生機構の支援下で経営再建中のダイエーは三月から、競争力が弱い衣料品や生活用品分野を外部専門店に委託する方針を固めた。家具・インテリア大手のニトリ、ベビー用品大手の赤ちゃん本舗(大阪市)などと出店契約を結び、改装した店舗から順次導入する。衣料品では売り場面積の半分強が専門店の売り場になる見通し。有力テナントを誘致して集客力を高め、自社で運営する食品部門との相乗効果を狙う。
三月中旬にダイエー東大和店(東京都東大和市)を改装し、赤ちゃん本舗や靴専門店のチヨダ、婦人服のハニーズなどを誘致する。四月に改装予定の千葉長沼店(千葉市)にはニトリを売り場面積五千平方メートル超の核テナントとして導入する。
ベビー・子供服大手の西松屋チェーン、手芸・雑貨のユザワヤ(東京・大田)などと新たに出店契約を結んだほか、ビデオレンタル大手のカルチュア・コンビニエンス・クラブとも出店交渉を詰めている。
ダイエーをはじめイオンやイトーヨーカ堂など総合スーパー各社は、衣料品や生活用品が低迷している。ダイエーは堅調な食品部門は自社運営するが、テナントの大胆な導入で不振分野をテコ入れすることを決断。ファーストリテイリングと提携し、今秋から低価格カジュアル衣料店の展開を始めるなど、衣料品、生活用品分野で有力専門店の誘致を進めている。
今期の三十店を皮切りに、〇八年二月末までに存続する二百八店のほぼすべてを改装する計画。改装後は売り場全体に占めるテナント比率を現在の二四%から三四%まで高める。衣料品に限ると売り場面積の半分強がテナントとなる見通しだ。
【表】ダイエーに入居する主な専門店
店 名 業 種
ニトリ 家具・インテリア
西松屋 ベビー・子供服
アカチャンホンポベビー・子供用品
ユザワヤ 手芸・雑貨
ワウディー フィットネスクラブ
ユニクロキッズ 子供服
ファンタジーキッズリゾート 遊戯施設
サイクルベースあさひ 自転車
フォーバイビー インテリア・雑貨
靴のチヨダ 靴
ハニーズ 婦人服
【図・写真】ダイエーにテナントとして入店が決まったニトリ
ポイント・ハニーズ、カジュアル衣料、出店増へ基盤固め――配送能力相次ぎ増強。2005/10/21, , 日経流通新聞MJ, 6ページ, 有, 777文字
ポイント、最大500店対応
ハニーズ、1200店に倍増
衣料専門店のポイントとハニーズが相次ぎ物流センターを拡張する。両社はともに流行を取り入れた商品を二千―四千円程度の手ごろな価格で販売し、人気が高い。売れ筋商品を店頭に多頻度配送するのも強みで、新設商業施設からの引き合いが増えている。出店ペースを高める予定に合わせ、物流面での対応能力を高めると同時に効率化も進める。
カジュアル衣料専門店のポイントは十八億円を投じ、福岡市の物流センターを同市内で移転、拡張する。来年初旬から着工し、来年五月から稼働させる。対応能力は三百店と三倍に増え、水戸市のセンターを合わせると、最大で約五百店への対応が可能になる。
同社の店舗数は九月末で二百八十一店。ここ三―四年は年間約五十店の出店だったが、「新しいブランドが軌道に乗ってきたため、二―三年後には年百店までペースを上げる」(黒田博社長)。集配送体制の強化が急務となっており、水戸市のセンターも「数年後に増設する方針」(同社)としている。
婦人服専門店のハニーズは来年前半にも、約十五億円を投じて福島県いわき市の物流センターの増設に着手する。九月完工を目指し、対応能力を現在の六百店から千二百店に倍増する。
〇五年五月期末の店舗数は四百五店。今期の新規出店は百三十店を計画しており、来期以降も年百店超のペースを継続する方針だ。「毎年全国で約七十―八十のショッピングセンター、スーパーセンターが開業しているが、そのほぼ全店から出店の声がかかる」(江尻義久社長)という。
ポイント、ハニーズはともに各物流センターから全国の直営店に商品を週六日の高頻度で配送しており、常時店頭に売れ筋が並べられるのが強みだ。両社は拡張・増設部分に、既存ラインと同様のバーコードを使った自動仕分け装置を設置することで作業効率も高めていく。
消費者はどこにいるか――流行仕掛けず、兆しを把握(経営の視点)2005/10/17, , 日本経済新聞 朝刊, 9ページ, , 1259文字
「最速で商品を提供できない企業に成長はない」。二〇〇五年八月期に減益を余儀なくされた「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。柳井正会長兼CEO(最高経営責任者)は十三日の決算会見で、第三世代SPA(製造小売業)と自ら命名する「世界にもまだ無い」経営手法の構築を誓った。
売れると見込んで多めに生産した商品が計画を下回ったのが減益の理由。ユニクロ商品を購入する消費者がそこにはいなかったわけだ。外部から集めた優秀な経営陣で固めたユニクロですら移り気な消費者の心をとらえきれず苦悩する。
果たして、流行を見極める目利きはいるのか、商品を買ってくれる消費者はどこにいるのか。
そのユニクロが気にする企業が福島県いわき市にある。ユニクロより顧客層は狭いが、逆にファッション感度の極めて高い十代、二十代の女性向け衣料を扱うハニーズだ。商品単価は千六百円と安い。店舗数は全国に約四百五十店。〇五年五月期の連結売上高は二百九十八億円(前年同期比三八%増)。「流行は仕掛けない。外さない」(江尻義久社長)ことで、浮沈の激しい業界でも四期連続の増収増益を達成した。
同社の主役は顧客層と同世代の二十歳代の女性たち。決してプロ集団ではない彼女たちが店頭での商品動向を分析、顧客の声に耳を傾け、街を歩いて流行の兆しをつかむ。「店員や社員が着たい、売りたい商品を作る」(江尻社長)。対応は素早く、一週間でデザインを決め、仕様書を作成し、中国の提携工場に発注。毎週約七十品目をデザインし、各七千着ほどの多品種少量生産の体制を築いた。発注後、約四十日で店頭に商品が並ぶ。売り場は二週間単位で変化する。
シーズン前にデザインや販売計画を立てるのが一般的な業界だが、ハニーズはシーズンに入ってから動き出す。「競馬だと第四コーナーを回って馬券を買うようなもの。外すはずがない」(江尻社長)
ハニーズだけではない。〇五年八月中間期で五期連続増収増益のしまむらも、消費者探しの解を見つけた。同社は今、実用衣料からファッション性を取り入れた品ぞろえを強化している。百貨店や専門店がシーズンを前倒しして販売する傾向が強まる中で、まさにトップシーズンに合わせて売り場を作る。アパレル問屋などから、こまめに商品を仕入れ、売り切っていく。「消費者と正面から向き合う」(藤原秀次郎会長)ことで、消費者の購買意欲を売り上げに結びつけた。
取引先とは厳密な契約を結び、売れ残った商品は返品しない。取引先は返品リスクが無くなることで、安心してしまむらに商品を供給する。信頼関係があるからこそ、しまむらは優先的に人気商品を確保できる好循環を作り上げた。策を弄(ろう)することなく例外を排し、原理原則を貫いたら、そこに消費者がいた。
消費者を捜そうとユニクロは大きく舵(かじ)を切った。流通業は製造業のような装置産業と違って同一業種・業態ながらも多様な経営形態が存在する。そして流通業に新規参入が絶えないのは、消費者を見つける答えが無限にあるからだ。(編集委員 田中陽)
ハニーズ、フォーマル・下着に参入――店舗大型化、品ぞろえ拡充。2005/09/09, , 日本経済新聞 地方経済面 (東北B), 24ページ, 有, 665文字
婦人服専門店のハニーズは、部屋着や下着、価格帯のやや高いフォーマルウエアなど新分野へ進出する。すでに一部店舗で試験的に導入、売れ行きは好調という。品ぞろえを拡充することで、顧客層の拡大と一人当たりの買い上げ点数の増加をめざす。新規出店に力を入れており、立地の需要に応じた店づくりを徹底していく。
八月中旬から約四百三十店舗のうち百店舗で黒のワンピースやショールなどフォーマルウエアの販売を始めた。価格は二千九百円から五千九百円までで千円台中心の同社ではやや高め。店により十―二十点程度そろえ、十代や二十代の女性客がパーティーなどで着る場面などを想定している。
九月下旬からは自宅で気軽に着られるストレッチパンツやTシャツを一部店舗で投入。十月から女性向けインナーウエアも始める。それぞれ当面は十―二十種類から始め、顧客の反応をみながら百種類程度に増やしていく。
特に若い女性に限定するものでなく、四十代以上の新しい顧客獲得につながるとみている。販売店舗数も当初の百店から徐々に増やす。
フォーマルウエアはメーカーへも生産委託する見通しだが、部屋着や下着は自社企画・製造品を中心にして、中国の工場で生産していく。
同社は各分野の大手専門店で構成するスーパーセンターなどへの出店を加速しており、店舗の大型化を進めている。かつては売り場面積百平方メートル以下の店が中心だったが、最近は三百三十平方以上の店も多い。一店舗で幅広い品ぞろえを求められる状況が増えているという。
【図・写真】一部店舗での試験導入が好調(同社のフォーマルドレス)
ハニーズ社長江尻義久氏――流行、徹底的に追う(新規上場企業2年目の飛躍)2004/01/13, , 日経流通新聞MJ, 18ページ, 有, 1017文字
他社の半分に納期を縮める
――百億円前後で伸び悩んでいた年商が三年前から急上昇し、昨年ジャスダック上場した。
「売上高はこの三年でほぼ二倍、利益はそれ以上に伸びた。生産の主力を中国に移し、平均売価を千円下げたのがターニングポイント。一着二千円の低価格で色柄物の最先端のカジュアル衣料が手に入るという気軽さが女性に受けた。商売の鉱脈を手に入れた」
――出店状況は。
「全国四十三の都道府県に約二百四十店。ハニーズ、シネマクラブ、クロスオーバーなど六つの店舗ブランドがあり、十代の女の子向けの普段着から三十代の女性向けのおしゃれ着まで、毎月六百種類以上の新製品を売り場に投入している」
――「第二のユニクロ」の呼び声もある。
「自社企画した商品を中国で委託生産し、直営店で販売するSPA(製造小売り)の手法は共通点だ。ユニクロが性別を問わず流行にも左右されにくい品ぞろえなら、当社は流行に徹底的にこだわった商品で勝負する」
「CAD(コンピューターによる設計)でデザイン画を描いてから店頭陳列まで最短で三十日。納期を他社の半分に縮めたスピードが強み。若い女性のおしゃれ感覚はヒット曲と同じで、鮮度が保てるのはせいぜい二カ月。日次ベースで販売を管理し、売れ筋は即座に追加発注して商機を逃さない仕組みを作った」
――ユニクロなど競合他社に比べブランド力が弱いとの指摘もある。
「ハニーズといえばこの商品という固定的なイメージはむしろ経営にはマイナスだ。移り気な女性層に飽きられたらそれで終わり。あの店に行けば必ず新しい商品がある、発見がある――そんな店づくりを徹底し、それが当社のブランドに結びつけばいい」
――上場で調達した約三十億円の使途は。
「今月中に稼働する物流センターの建設費や新規出店に充てる。今期の出店は約八十。来期以降も年七十前後の出店を続け、五年後に六百店体制を築くのが目標だ」
「二〇〇四年五月期の単体決算は売上高で前期比二九%増の百九十九億円、経常利益は三〇%増の二十五億円の見通しだ。売上高から製造原価などを引いた粗利益率は五三%と業界最高水準を見込んでいる。ジャスダック上場は通過点。さらに上を目指したい」
(郡山)
父親が経営する帽子店から独立して一九七八年に婦人服販売のエジリ(現ハニーズ)を設立。八〇年代半ばから自社企画商品を製造直販するSPA(製造小売り)業態に転換し、全国展開を進めた。本社は福島県いわき市。
ハニーズ「全国制覇」、空白の福井・奈良に出店――東北の小売業で初。2004/05/27, , 日本経済新聞 地方経済面 (東北B), 24ページ, 有, 609文字
女性向けのカジュアル衣料を製造販売するハニーズは七月で全都道府県への出店を果たす。空白地域だった福井県に六月、奈良県にも七月に直営店を開業する。総店舗数も今夏で三百を超える見通しだ。東北に本社を置く小売業で「全国制覇」を達成するのは同社が初めて。
ハニーズは自社で企画・デザインした衣料品を中国の協力工場で縫製し、「ハニーズ」「シネマクラブ」など約二百八十の直営店で販売している。四十七都道府県のうち未進出だった和歌山県と島根県には四月に店舗を開設した。七月までに福井県と奈良県にも一店舗ずつ店を出し「大きな目標の一つだった全国制覇を実現する」(江尻義久社長)。
同社は一九七八年に福島県いわき市で創業した。中国生産を本格化した二〇〇一年以降、女性向けの色柄モノのおしゃれ着を一着千九百円以下の格安価格で販売して急成長。昨年末にジャスダック市場に上場した。〇四年五月期は売上高で前期比四割増の二百十五億円を見込む。
多店舗展開は八三年から始めた。郊外のショッピングセンターや駅ビル内が主な出店場所で、九二年に百店舗、〇三年に二百店舗を突破した。〇五年五月期も百二十店以上の新規開業を予定しており、七月中に三百店を超え、期末時点では四百店に達する勢い。
江尻社長は「小規模な施設を含めて全国に約三千あるショッピングセンターのうち千カ所への出店が将来の目標だ」としている。
【図・写真】7月で全国展開を果たすハニーズの店舗
ハニーズ、物流見直し、中国で仕分け、各店に直納――国内倉庫は在庫を保管。2004/05/14, , 日本経済新聞 地方経済面 (東北B), 24ページ, 有, 645文字
追加発注に即応
カジュアル衣料販売のハニーズは物流を大幅に見直す。今秋から製造委託先の中国で店舗別に商品を仕分けしてから輸入する直納物流を始める。現在は福島県の物流センターに商品を一括して集め、全国二百八十店舗に配送している。中国で製造から検品、店別の仕分けまでを済ませることでコストを削減するとともに、追加発注に迅速に対応できるようにする。
ハニーズは中国の上海市と青島市の周辺にあるそれぞれ十社前後の縫製工場と契約し、自社企画商品の製造を委託している。他の衣料メーカーから別途仕入れる商品も含めて全量を本社のある福島県いわき市にいったん集め、物流センターで検品、仕分けをしてから全国配送している。
売り上げの六割を占める自社企画商品を対象に、早ければ九月中にも青島市で仕分けに着手する。現地の物流会社などに作業を委託。縫製工場から集荷した商品を日本の店舗別に仕分けした上でコンテナに積み、船便で輸出する。来年からは上海市でも同様の取り組みを始める計画だ。
商品は西日本向けは下関港(山口県)に、東日本向けは横浜港(神奈川県)に陸揚げして、トラックでそのまま店舗に直送する。必要な在庫は物流センターに送って保管し、各店舗からの追加発注に対応する。
ハニーズは一着千九百円前後の女性向けカジュアル衣料の製造販売で急成長し、昨年末にジャスダック市場に上場した。売上高から仕入れ原価を割り引いた粗利益率は五三%と同業他社をしのぐ。中国からの直納物流を軌道に乗せて、さらに利益率を高めたい考えだ。
ハニーズ、新大型店を全国展開、女性向け衣料全4種一堂に、売り場面積、倍以上。2003/12/09, , 日本経済新聞 地方経済面 (東北B), 24ページ, 有, 656文字
女性向けのカジュアル衣料を製造販売するハニーズ(福島県いわき市、江尻義久社長)は新業態店「クロスオーバー」の全国展開を始めた。売り場面積を既存チェーン店の二倍以上に広げた大型店で、同社の四つの衣料ブランドの商品をすべて販売する。服飾雑貨も増やし、十代から三十代までを中心とする幅広い層からの集客を狙う。
クロスオーバーはハニーズ、シネマクラブ、ハニークラブ、シーズ・ラボに続く同社五番目の店舗ブランドで、売り場面積は二百五十―五百五十平方メートル。
並べる商品は、幅広い年齢層の女性が対象の「シネマクラブ」、十代向けの「Jハニー」、セクシーさを強調した「コルザ」、OLやヤングミセス向けの「グラシア」の四つの自社ブランド。サイズもSからLLまで豊富にそろえる。
十月末に札幌市に一号店を開いた後、店舗網を徐々に拡大。今月二十日には北海道釧路市のイオン系ショッピングセンターで、売り場が五百三十平方メートルと系列店で最大規模となる五号店を開業する。
一店あたり年商一億五千万―二億円を見込む。来年以降の出店は今後詰める。
全国に二百三十余りある直営店のうちハニーズ、シネマクラブ、ハニークラブの三系列は基本的に同一コンセプトの小型店で、シーズ・ラボは単価が千円高い高級店の位置づけ。クロスオーバーはすべての商品をそろえた総合店となる。
ハニーズは自社で企画製造した一着千九百円前後の衣料の販売を手掛け、十六日にジャスダック市場に株式上場する。
【図・写真】ハニーズが新展開する大型店「クロスオーバー」(札幌苗穂店)
ハニーズ、価格帯高い新業態店、女性向け衣料、デザイン重視。
2003/06/06, , 日本経済新聞 地方経済面 (東北B), 24ページ, 有, 483文字
女性向けのカジュアル衣料を製造販売するハニーズ(福島県いわき市、江尻義久社長)は新業態「シーズ・ラボ(She’s Labo)」=写真=の出店を始めた。同社は一着千八百円前後の割安感を武器に全国で百五十余りの店舗を運営しているベンチャー企業。シーズ・ラボは一着三千九百円前後と高級感を打ち出して新たな客層をつかむ。
新店舗は二十歳前後の女性を対象に「ストリートカジュアル」と呼ばれるデザイン重視のおしゃれ着を販売する。平均単価は三千九百円と同社では最も高い水準に設定した。中高生から三十歳前後の女性を主な対象にした既存店の「ハニーズ」「シネマクラブ」などに比べ、中心価格帯を約二倍に引き上げた。
本社のあるいわき市のほか、水戸市や大分市、富山市などに合計七店舗を新規開業した。消費者の反応を見ながら、今夏以降の本格出店を計画している。
同社は自社企画のカジュアル衣料を中国で集中生産し、全国の自社店舗で販売している。「ユニクロ」が単色中心なのに対し、ハニーズは色柄物をそろえて若い女性層に訴え、急成長している。二〇〇三年五月期の売上高は前期比三割増の約百五十三億円。
サマンサJP、12月12日マザーズ上場――ハンドバッグ企画・販売(ルーキー診断)2005/11/29, , 日経金融新聞, 4ページ, 有, 1074文字
有名人が開発に参加
サマンサタバサジャパンリミテッド(東京都港区)は、「サマンサタバサ」ブランドのハンドバッグを企画・販売する。ピンクやゴールドを多用した色使いやハート形の持ち手など、独特のデザインが特徴。デートや通学用に買い求める、十代後半から二十代の女性に人気が高い。
欧米の高級ブランドに対抗するためファッション性を前面に押し出す戦略をとる。商品のコンセプトは「服のように毎日着替える感覚で持てるバッグ」(寺田社長)。中心価格帯は二万―三万円台だが、下は一万円台から上は十二万円台までと幅広い。広告にはヒルトン姉妹やヴィクトリア・ベッカムなど国際的な有名人を起用。商品開発にも参加してもらい話題性を高める。
直営店の出店では百貨店の一階正面など立地に徹底的にこだわる。主力ブランドの「サマンサタバサ」を取り扱う店舗は現在二十店強。「店を増やしすぎるとブランド価値の低下につながる」(寺田社長)とみて、今後の店舗展開は増床・改装中心とする。出店余地が大きい廉価版ブランドやジュエリー店、小物店は積極出店を続ける。
「世界で通用する日本発のラグジュアリーブランド」が目標で、来年三月をメドにニューヨークに海外で初の直営店を出す計画。欧米やアジアなど海外展開を順次進める考えだ。
上場に向けた人員拡充などで二〇〇五年二月期は減益だったが、今期は単独経常利益は前期比五八%増の二十億千万円を見込む。小物店を中心に新規に約三十店を出店することや、好採算のジュエリーの比率拡大が寄与する。上場で調達する資金(約十三億円)は主に出店費用に充てる。
社長の横顔
寺田 和正氏(てらだ・かずまさ) 広島県出身。39歳。89年駒沢大経営卒。野村貿易を経て、91年にバッグなどの輸入会社マックナブトレーディング設立。94年サマンサタバサジャパンリミテッドを設立、社長に就任。
もとは海外ブランドの輸入販売を手がけていたが「より自由度の高い商売がしたい」とSPA(製造小売り)に進出した。ゆくゆくは衣食住全般や金融にも挑戦し、「ブランドビジネスとはなんぞやを示したい」と意気込む。休日は気が置けない友人との食事で息抜き。店舗スタッフとの会話もストレス発散になるという。
低価格・小商圏・M&A――高成長小売りの原動力は(底流を読む)
2005/07/10, , 日経流通新聞MJ, 3ページ, , 1104文字
本紙の二〇〇四年度小売業調査によると、連結売上高(一部単体)上位五百社合計の前年度比売上高伸び率は三・一%増という低成長だが、こうした中でも高成長企業は存在する。一〇%以上が七十七社、二〇%以上も三十四社ある。
成長の原動力の第一は、やはり価格破壊だ。年商一兆円を突破したヤマダ電機(前年度比一七%増、以下同じ)、総額表示化に伴い五%の消費税分を実質値下げしたニトリ(一九%増)、スーパーセンターを展開するベイシア(一〇%増)、トライアルカンパニー(四四%増)、PLANT(二三%増)は典型的だ。
食品スーパーも低粗利、低販管費を武器にしたディスカウント型の大黒天物産(四四%増)やオーケー(二一%増)の伸びが高い。
低価格に小商圏の強みを生かしているのはドラッグストアだ。マツモトキヨシ一一%増、サンドラッグ二六%増、ツルハ一二%増、富士薬品一〇%増、スギ薬局二〇%増、クリエイトエス・ディー一七%増。
自転車でも買い物できる小商圏型で、店は売り場面積二百―一千平方メートルと小ぶりで買い物しやすい。それでいて生活密着型の商品を低価格で豊富に品ぞろえし、中小の薬局や化粧品店、文具店、品ぞろえの弱い中堅食品スーパーやコンビニエンスストアからも顧客を奪って伸びてきた。
SPA(製造小売り)も靴専門店のエービーシー・マート(一七%増)、カジュアル衣料のポイント(三六%増)、ハニーズ(四〇%増)など高収益と高成長を兼ねる企業が目立つ。
最後に見逃せないのがM&A(合併・買収)による成長力の拡大だ。マイカルを経営統合したイオン(一八%増)や、ギガスと八千代ムセンを買収した家電量販店のギガスケーズデンキ(五六%増)は典型例。M&Aは百貨店、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニと様々な業態に広がっている。
上場企業の〇四年度決算を見ると、連結純利益が一千億円を超える企業は金融を除くと、トヨタ自動車、NTTドコモなど二十二社。これに対し小売業は九百六十三億円のセブン―イレブン・ジャパンが最高で、一千億円に達した企業は一社もない。
だが、世界では米ウォルマート・ストアーズの純利益が〇五年一月期に百三億ドルであるように、収益面で製造業などと比べて遜色(そんしょく)のない小売業が多数存在する。その大きな要因の一つはM&Aによる企業規模の拡大だ。
日本の経済規模を考えれば、世界水準に達する小売業が誕生してもおかしくはない。流通業界の再編統合は一層拡大するに違いない。国内企業がまごまごしていれば、ウォルマートが西友を実質買収したように、外資が再編の主役になることも十分ありうる。
(編集委員 井本省吾)