「切り花の鮮度保証概念の導入:その目的と鮮度保証販売実験の中間報告」
<#1:鮮度保持概念の導入>
低迷する切り花市場を活性化するための突破口として、日本でも「切り花の鮮度」を強調する考え方が定着しはじめている。
国際的な品質保持の流れを作ったのは、英国とオランダの花業界人である。そのなかでも貢献度がとりわけ大きかったのは、花きの品質管理の動きを推進してきたオランダの品質保持剤メーカー「ポコン・クリザール社」である。英国(テスコ)、オランダ(アルバートハイン)、フランス(カルフール)のスーパーマーケットにおいて、「切り花の鮮度保証概念」(フレッシュネス・ギャランティ・コンセプト)を成功裏に導入させた陰の立て役者である。
日本で忘れてならないのは、品質保持剤「クリザール」を導入することに奔走してきた切り花輸入専門商社「クラシック」の西尾義彦社長の貢献である。現在、JFMAで実施している切り花の日持ち実験は、クラシックの花持ち試験室(千葉県成田市)で行われている。日持ちテストに対して、JFMA(日本フローラルマーケティング協会)のプロジェクトチームは、試験のための作業スタッフとテストスペースをクラシックから無償で提供していただいている。この連載を通して紹介する「JFMA日持ち保証販売実験」は、西尾社長のご厚意なしには実現が不可能であったことを付け加えておきたい。
それと相前後して、切り花の家庭需要を伸ばすために、国内の品質保持剤メーカー4社の協力体制が整い始めたことを忘れてはならないだろう。製品の販売では競合状態にある「フジ製糖」「パレス化学」「大塚化学」の3社は、「クラシック」とともに大同団結をすることで、「日持ち保証販売実験」のプロジェクトに共同で参加している。市場全体の10%程度と言われている「ホームユースの市場」を拡大するためには、個別企業の利害を超えて協力しようとする機運が生まれつつある。自由と独立独歩をよしとする雰囲気がある花業界では、これまでには考えられない連携の動きである。
その背後にあるのは、生産者から小売業者にいたるまで互いに協力しあうことで、どうにかして花の市場を活性化したいという思いである。そして、長く続いている低迷から、どうにかして脱したいというひとびとの懸命さである。その起爆剤となりそうなのが、花の品質保持と日持ち保証販売である。本連載では、これまでの動きと現状を整理してみることにする。
<#2:鮮度保証をテーマにした国際セミナー>
関東(千葉)と関西(大阪)で、切り花の日持ち保証販売がほぼ同時にスタートした。昨年暮れのことである(2000年12月)。「法政大学産業情報センター」と「日本フローラルマーケティング協会」が共同で開催した2回の国際セミナー(2000年6月と11月)で、筆者らが「切り花の鮮度保持」をテーマにしたことがひとつのきっかけになっている。
法政大学の富士見キャンパス(東京都千代田区)で開かれた国際セミナーには、4人のゲストスピーカーが招待された。オランダからは、品質保持剤メーカー「ポコン・クリザール社」のピム・モレナー氏とニック・マクドナルド氏。イギリスからは、売上高世界第2位の小売業「テスコ」(スーパーマーケット)のジャッキー・ステファン女史(チーフバイヤー)とデビット・メイ氏(品質管理担当マネジャー)である。
JFMAの国際セミナーでは、英国の花小売業がなぜ7年間で売上げを約2倍に伸ばすことができたのかが話題になった。10年前に約半分だった英国人の一人当たり切り花消費額が、現在では日本やオランダとほぼ肩を並べる水準にまで増えている(3千円超)。いちばんの理由は、切り花の「鮮度保持技術」と「日持ち保証販売」の定着であるというのが講師陣の説明であった。また、切り花の鮮度保持を可能にする物流技術と花束の加工・陳列方法についても、その場で詳しく解説がなされた。
講演を聴いていたのは、業界では革新的と考えられている人々であった。延べで約250人の業界人が、法政大学のスカイホールに参集していた。しかしながら、筆者の観察によると、聴衆の大方の反応は、次のようものであったと記憶している。「うん、よくわかった。すばらしい。でも、日本とイギリスはちがうからな。英国は冷涼だから、とくに何もしなくても花は長く持つはず。それに比べて、とくに日本の夏は高温多湿である。どんなに努力しても、夏場に花を日持ち保証するのは無理な相談だ」。
否定的な見解が主流になったもうひとつの根拠は、商品供給の基礎条件がちがうというものであった。日本では、切り花は常温で段ボールで運ばれる。これを一朝一夕に変えていくことはむずかしい。鮮度保持の基本は、湿式輸送(バケット輸送)と低温物流である。コスト高になるし、鮮度に対してそれだけ消費者がお金を払ってくれるとは思えない。
南北縦長の島に生産者が小規模分散していることも、品質保持のネックになると指摘する論者もいた。できない理由はあげていたら切りがない。セミナーのあと、コーディネーターを務めた筆者に対して、テスコのジャッキー・ステファン女史は率直な感想を漏らした。「日本人は言い訳が多すぎる。」
しかし、それでもやってみようとする組織も現れた。関西では、大阪鶴見花きを中心とするグループ。関東では、カルフール幕張店のベンダーとなった「ゼントクコーポレーション」であった。
<#3:先行したふたつの鮮度保証販売実験>
オランダのポコン・クリザールと業務提携関係にある「甲東」(商品名:甲東フレッシュ)は、関西地区で日持ち保証販売を推進することに現在でも大きく貢献している。
昨年冬から約1年間(夏場の3ヶ月は休み)、平群(へぐり)のバラを手始めに、南海電鉄の改札口通路わきで週一回(水曜日)、「日持ち保証販売」の実験を継続してきた。販売主体である「サンクス」と市場の「鶴見花き」の協力体制をうまく組織してきたのは、甲東の米田裕史社長のリーダーシップである。これまで、バラだけで30種類を販売してきたという。実験の詳細はまだ明らかにされていないが、日持ち保証販売に適した品種・品目、日持ち保証販売がしやすい等階級(グレード)や価格帯(プライスポイント)などについて、しだいにデータが蓄積されつつあると聞く。いずれかの時期に、「JFMA定例会」で販売実験のデータ概要が公開されることが予定されている。
2000年に幕張に出店したフランスのスーパーマーケット「カルフール」は、本国では積極的に切り花を日持ち保証販売している。そうしたマーチャンダイジング(商品政策)の方針があって、日本進出以来、幕張店では切り花の日持ち保証を実施している。花束の加工納品業務は、仲卸の「ゼントクコーポレーション」が担当している。伊藤瞳副社長を中心にして、ブーケメーカーとしては日本ではじめて、切り花の日持ち保証に取り組んでいる。店頭管理や花束の供給についてまだ解決しなければならない問題は多いが、果敢なチャレンジである。
ふたつの試みは実験段階であるが、日本の大手スーパーなどでも、近い将来、実験的に日持ち保証販売がはじめる予定がある。そうなってくると、切り花の日持ちを保証することが当たり前になった欧州の状況が、日本でもふつうになるかもしれない。
ところで、本連載を通して、「鮮度保持」と「品質保持」というふたつの言葉を、筆者は厳密に区別して使用していない。大学や試験場の研究者は、「品質保持(剤)」という表現を使うことが一般的である。おそらく、「品質保持」が「鮮度保持」より包括的な概念であり、学術用語としてふさわしい定義と見なされたからだと考えられる。しかし、原語は「Freshness Guarantee System」である。「鮮度保持(剤)」というほうが、訳語としては語感的にしっくりくる。実務的にも、花業界では「鮮度保持(剤)」が定着しているように思える。
筆者も研究者であるから、「品質保持(剤)」がベターとは思う。しかし、実際的な理由から、とくに販売の局面では、無理をして「品質保持」にこだわる必要はないと考える。したがって、「品質保持」と「鮮度保持」の両者を併用することにしたい。とりわけ、消費者に対しては、「品質一般」を訴えるのではなく、より具体的で特定的な属性である「鮮度」を遡及した方がアピール力が強い。そんなわけで、販売以外の局面で使用する場合には、できるだけ「品質保持(剤)」を用いるのが適当であるとは考えるが、マーケティングで使用する場合は、「鮮度保持」を用いることが多くなることを理解していただきたい。
<#4:品質保持に関する学術研究>
ところで、「品質保持」や「鮮度保持」の概念は、突然登場したものではない。実は10年ほど前から、日本でも「切り花の品質保持(鮮度保持)に関する学術研究」はさかんに行われてきた。宇田明氏(兵庫県立淡路農業技術センター)、土井元章氏(大阪府立大学農学部)、船越桂一氏(現在の所属?)、市村一雄氏(農業技術研究機構花き研究所)などによる品質保持に関する基礎研究がある。切り花の日持ちに関しては、実験室の環境下ではあるが、多くのテストが試みられてきた。また、船越氏のように、輸送途中における切り花の品質劣化を測定して、実務に貢献してきた研究者も存在する。
そうした中にあって、ふたつの重要な研究成果が、単行本と報告書の形で残されている。啓蒙的でかつ実用的にも有用な成果は、市村一雄『切り花の鮮度保持』(1999年 筑波書房)と花普及センター監修『切り花の鮮度保持マニュアル』(1997年)である。とくに、後者については、品目ごとの品質保持特性が、多くの研究者の手によって詳しく記述されている決定版である。また、最近では、宇田氏と市村氏が『農耕と園芸』(誠文堂新光社)の2001年12月号で、バケット輸送との関係で品質保持技術の適用範囲と実行に当たっての留意点をていねいに解説している。
その結果、生産者段階と流通段階(花き市場)で、これらの著者たちの主張やマニュアルの中に書かれている手順を導入し、前処理剤と湿式輸送を検討する産地や市場が現れてきている。その流れが、バラ、カスミソウ、スターチスなどの産地を起点にした低温バケット輸送であり、FAJによる「ELFシステム」の取り組みにつながっている。
ただし、これまでの学術研究では、実務的な観点から抜け落ちている点がふたつある。
ひとつは、「切り花の鑑賞期間が日本の家庭ではどの程度なのか」という実証データの蓄積がほとんどないことである。花持ち試験室の温度設定は、国際標準では温度20℃、湿度60%となっている。研究者たちは、日本の実情にあわせて、日持ち実験室の温度は25℃あるいは27℃に設定してきた。湿度も70%がふつうのようである。しかし、非実験室のリアルな状態(実際の家庭)で、切り花が何日くらい鮮度が保持できているのかは知られていない。
ふたつめは、「日持ち保証の需要拡大効果」についての実証データである。イギリスの実績は、小売店の売上げデータによるものである。日持ち保証の単独効果で、売上げが伸びたかどうかは明確ではない。価格、陳列、花束のデザインなど、鮮度以外の要因が売上げ増に貢献しているはずである。日本では、日持ち保証の効果がどの程度のものなのか?
JFMAの日持ち保証販売実験には、「消費者の意識調査」と「家庭での日持ち実験」というふたつの事柄を実際に確認してみるという意味があった。
<#5:切り花鮮度保証販売の第一段階:日持ち性テスト>
JFMA(日本フローラルマーケティング協会)として、切り花を日持ち保証して販売する実験が計画されたのは、2001年の5月ごろのことである。そのころ、すでに大阪の鶴見市場を中心に、バラの鮮度保証販売が継続的に行われていた。また、幕張に進出したスーパーマーケットのカルフールでは、本部がある本国フランスと同様に、店頭に陳列された切り花はすべて日持ち保証して販売されていた。また、茨城県ひたち野のカーネーションなどを、大田花きが買参権を持つフローリスト5店を通して、日持ち保証で販売するテストなどが知られていた。しかしながら、この時点では、鮮度保証販売に関する諸々のデータは公表されておらず、店頭での消費者調査が実施されていたわけではなかった。輸送温度や前処理の状況などについても、詳しいことなどは不明であった。JFMAの実験意図は、業界のために試験データを公表することであった。
JFMAでは、秋以降(当初計画では9~10月)に最低3店舗で鮮度保証販売を実施する準備を整えた。そのためのステップとして、5月から8月にかけては、テスト販売へ参加を表明してくれた生産者(産地)の花について、「日持ち性」をテストすることを始めた。その手続きは、次のようなものであった。
産地から輸送した切り花(ロット60本)をいくつかの試験区に分ける(オランダでは24試験区だが、最初の実験では、費用の関係で3~4試験区になった)。そうしたうえで、設定条件ごとに花持ちがどの程度ちがうのかをテストすることにした。たとえば、一回で輸送した切り花60本を3つに分けて、前処理をしたもの(20本)、そのなかでバケットを使って湿式輸送したもの(20本)、これまでの処理方法で段ボールで輸送したもの(20本)などのように区分した。
花持ち試験室は、クリザール(千葉県成田市)からテスト設備のサービス提供を受けた。温度設定条件は、国際標準の20℃、湿度は60%。照明の明るさは、1,000ルックスで12時間オン・オフを繰り返す。また、産地の荷をピッキングしてくれたのは「大田花き」であった。そこから成田の花持ち試験室へ運ぶことにしたが、消費者が購入してくれるまでには、店頭で3日間が経過していることを想定した。したがって、花持ち試験は、着荷からは4日目にスタートしている。この手続きを、われわれは、鮮度保証販売実験の「第一段階」と呼んでいる。
<#6:第一段階の実験結果:山形のバラが18~25日間持った>
実験の呼びかけに応じてくれたのは、全部で7戸のJFMA会員農家(団体)であった。協力してくれた生産者は全国にちらばっていたが、バラの農家が比較的多かった。真夏のバラが鮮度保証できるかどうか? それがわれわれの課題だと考えていたからである。
生産者の内訳は、バラ農家が5戸(グループ)、アルストロメリアの生産者が1戸、カスミソウの生産者が1グループであった。7戸の生産者(団体)は、北は山形から南は大分まで全国に散らばっていた。生産規模(千坪~1万坪)も生産出荷形態(個選、個選共販、共選共販)もバラバラであるが、共通しているのは、新しい試みに前向きに取り組んでいるという点である。
第一段階の実験は、3回に分けて行われた。例えば、実験第一号となった「東北第一花卉」の池田義幸さん(山形のバラ生産者)の場合を例に取ると、1回目の出荷は、月曜日のセリに合わせて、前日の5月13日(日)に行われた。2回目と3回目の出荷は、それぞれ水・金の表日に合わせて5月15日(火)と5月17日(木)に行われている。あまり間隔を空けることなく、似たような条件下で異なる標本(サンプル)を取るためである。 標本60本中で20本は、ふだんの方法で前処理したものである(試験区1)。池田さんは、これまで5000倍に希釈した硫酸アルミニウムの溶液に12時間を浸しておいてバラを前処理していた。残りの2組、各20本は、500倍に薄めたクリザールに8時間浸して前処理が行われた。ただし、山形から東京大田市場(大田花き)まで定温トラックで輸送するとき、クリザールで前処理がなされたバラ20本については通常の乾式輸送で(試験区2)、もう一方のバラ20本についてはバケットで輸送がなされた(試験区3)。
すべてのバラについて、市場で分荷されて小売店に運ばれる状態を想定し、気温20℃、湿度60%で16時間放置しておいた。その後、花店で3日間(72時間)店頭で陳列されることを想定した。したがって、採花された花が家庭に到着するまでには5日間が経過していることが実験の前提である。気温20℃、湿度60%の条件を保ちながら、日保ち試験室内では、5本ずつ4つのビーカーに分けて、消費段階を想定した観察がはじまる。5月13日の採花分については、5月18日が記録開始日となる。なお、消費者が後処理剤を正しく用い、毎日切り戻しを実行することを条件とした。
花持ち試験室から上がってきているデータは、われわれを大いに喜ばせることになった。開始日と試験区によって異なるが、観察開始から18日~25日が経過しても、60本(3つの試験区)はともに鑑賞に耐えられる状態にあった。もともと「ニッキー」は花持ちが良いということで選ばれたが、どのバラもベントネック(首曲り)を起こしていなかった。前処理と湿式輸送の効果は、ベントネックには影響しなかったが、湿式輸送で正しく前処理したものは、花色が褪せる程度が小さかったと報告されている。
<#7:「花良」で鮮度保証販売がはじまる>
品種(ニッキー)と季節(5月中旬)によっては、きちんと前処理を工夫すれば、まちがいなく花持ちが良くなることがわかった。それに加えて、消費者が定められたとおりに後処理を励行すれば(品質保持剤を正しく利用すれば)、まちがいなく花保ちの日数が改善できるという感触をわれわれは得た。ところが、夏場に実験した品種(バラ、アルストロメリア)については、鑑賞期間が5日間を切ってしまうケースが出てしまった。鮮度保証販売の実験は、9月の時点で一度頓挫しそうになった。実験を予定していたスーパーの責任者が、現状では日持ち保証販売はできないという判断に傾いていた。
販売実験の実施をいったんはあきらめかけていたが、9月の中旬になって、無印良品を販売している「㈱良品計画」の子会社「花良品」(店舗名・花良)」(阿部社長)が、実験のために売り場を提供してくれると申し出てくれた。販売開始は10月10日としたが、それに先だって、10月1日から再度2回目の「日持ちテスト」を行うことにした。前回は3回だったが、今回は1回の出荷に限定することになった。その結果は、再度の花持ちテスト実験に参加した6戸のなかで、もっとも早く鑑賞価値を失った花でも9日間であった。この時点で、7日間の日持ち保証が可能になった。
鮮度保証販売は、花良の都内3店舗で行われることになった。われわれは、実験の目的と途中の手続き以下のように定めた。
(1)農家から花市場を経由して、一日で商品(切り花)が店頭に並ぶようにする。
(2)きちんと前処理した花を、採花の即日あるいは翌日までに売り切る。
(3)商品は、「7日間の日持ち保証」を付けて販売する。
(4)消費者の満足と信頼を勝ち取ることで、花の売上げを伸ばすことを目的とする。
(5)実験には、品質保持剤メーカと東京ガス(輸送中と家庭での温度変化を見るため)
の協力を得た。
<#8:鮮度保証販売第2段階の概要>
以下では、「JFMA鮮度販売試験キャンペーン」の概要を説明する。
①鮮度保証販売試験の実施日
火曜に採花出荷、水曜仕入、水曜午後(13~18時)・木曜(10~18時)の販売
実施日は、10月10,11日、17,18日、24,25日
②販売店舗:花良の3店舗(西荻窪店、京王八王子店、八王子東急スクエア店)
③切り花の産地と品目
・山形県池田バラ園 STバラ・ニッキー(黄色)
・長野県片桐花卉園 アルストロメリア・レベッカ
・大分県メルヘンローズ STバラ・アップルティー、デュカット、モダンガール
・JAはがの SPキク・ハービー(白)
・JA山形おきたま バラ・ローテローゼ、アルストロメリア・サニーレベッカ
・福島県昭和花き研究会 宿根カスミソウ・BFブリストルフェアリー、
NHニューホープ
④同じ花材群を、東京銀座のスズキフロリストの協力を得て、活け込みでも使用し、
花もちを調査した。こちらも温度センサー付きである。
実験店舗3店では、法政大学経営学部小川研究室の生徒による「店頭アンケート調査」が実施された。日持ち保証された花を購入してくれたひと、300サンプルを目標として設定した。実際には、その半分のサンプルしかとれなかった。
アンケートに協力いただいたひとのなかから、とくに、花持ち試験の「家庭モニター」として30人に協力していただいた。その際には、「使い捨てカメラ」と「温度センサー」が配布された。産地から消費者段階(花が枯れる)まで、20分おきに温度変化が記録した。枯れた段階での主観的な判断(写真)と客観的なデータ(温度)を同時に記録することが、これによって可能になった。
<#9:日持ち保証販売テストを終えて>
2001年12月末現在、消費者の店頭アンケートはほぼ集計が終わっている。これまでにわかったことを要約することにする。
(1)消費者アンケート調査
日持ち保証販売対象商品を購入してくれた消費者には、できるだけアンケートに答えてもらうようにした。その結果は、以下の通りである(販売した約800束のうち、151人がアンケートに答えてくれた)。
・6日間でクレームはゼロであった。これは、生産者、市場、小売店、そして、品質保
持メーカーの連係プレイのおかげである。細心の注意と協力があれば、切り花の鮮度
は保持できると確信した。花の品質は実にすばらしかった。
・「日持ち保証販売実験」のキャンペーン告知を店頭で告知していたにもかわらず、
「日持ち保証された花」であることに気づかずに購入した消費者が全体の約40%もい
た。鮮度保証販売の訴求がむずかしいことを痛感することになったが、「日持ち保証
が決め手」になったと答えた消費者も39%も存在している。
・日持ち保証販売の実施については、購入者はきわめて好意的だった。「再度実施する
とすればまた購入しますか?」との問いに対しては、「たぶん購入する」(23%)ま
で含めると、69%のひとが「また購入する」(45%)と答えてくれた。
・「最低の花持ち期間」は、5日間(16%)から10日間(12%)である。とくに、一週
間(62%)持てばよいとする意見が大半を占めた。
(2)学習したこと、および反省点
・「鮮度保証販売」に短期的な売上効果を求めることは無理があるかも知れない。
しかし、質問の中での再購入意向を見ると、鮮度保証販売が店頭(コーナーなど)で
継続できるのであれば、長期的には売上げ増加に効果があることは明白である。
・実験参加者の意見としてもっとも強かったのは、品揃えの問題に関する指摘である。
5品目しか販売できなかったので、組み合わせて花束を作ることに苦労した。やはり、
魅力的な色と品種の組み合わせがないと、消費者の心を刺激することは難しい。
・今回は「花の鮮度がもともと良い店」で販売実験を行った。本来ならば、切り花の鮮
度に多少問題があるような店舗(スーパー)でテストを行ってみるほうが望ましいだ
ろう。今後は、「比較実験」(日持ち保証「あり」と「なし」)をしながら、
鮮度保証販売キャンペーンの効果を見ることが提案されている。
(3)家庭での花持ち実験
・一部分のデータではあるが、家庭での花持ちについては、花瓶の場所、平均室温など
で、大きく異なることがわかっている。予想された結果とはいえ、今後の販売でデー
タや写真が活用できる目処が立った。
さらに詳しいデータは、機会をあらためて業界に向けて公表していきたい。