【相互関税の行方】「トランプ、5つの失策」(BY恩田達紀さん)

 先々週の6月30日に、恩田さん(外資系コンサルタント)と、神田小川町のオフィスで久しぶりに歓談した。到着してすぐに、隣のBarブリッツに移動して、ビールやワインをしこたま飲んだ。途中までは、小学館の園田さんが1時間だけ、一緒にカウンターに座っていた。どなたかと、8時に待ち合わせているとのこと。
 
 恩田さんとの会食を設定してもらったのは、その後の米国トランプ政権の解説をしてもらいたかったからだった。恩田さんは、2年前に『米中冷戦がもたらす経営の新常識』を日経PB社から上梓している(【書評・新刊紹介】恩田達紀(2023)『米中冷戦がもたらす経営の新常識』日経BP(★★★★★) | 小川先生 のウェブサイト)。
 それ以降は、米中の政治経済分析のオーソリティーとして、日本の大手製造業から引っ張りだこである。忙しい合間を縫って、わたしのために時間を作っていただいた。Barブリッツでの飲み会は、3時間ほど続いた。そこで取り上げた大きな話題は、100日経過後のトランプ政権の評価だった。

 恩田さんの見立てを紹介すると、「トランプ、5つの失敗」というラベルで要約できる。大統領に返り咲いてその後に実施している諸施策は、本人も「ディール(取引)」という言葉で表現している。極めて短期的なトランプ(政権)の言動に対して、世間の評価は次第に「スルーする(真剣に受け取らない)こと」が日常になりつつある。
 昨日も、日本と韓国に対して関税の上乗せ分(25%)を発表した。発行は8月1日までらしいが、おそらく誰も8月の期限を、誰も真に受けてはいないようだ。たぶん、相手の出方を見ているだけなので、一時の対応は朝令暮改で変わっていくだろう。
 日本のメディアも、それを見越して、断定的な書き方をしなくなった。
 
 さて、以下は、わたし自身のリマインドのために、翌日になって恩田さんにリクエストしてもらったメモである。題して、「トランプ大統領、就任100日後の5つの失策」(BY恩田達紀氏)。

①多額の相互関税
 西側陣営やG7の結束が崩壊しかけている。
②テリトリー問題(グリーンランド、パナマ運河、カナダ)
 特にグリーンランドはEUが反発、カナダに関しては国民感情を無用に逆撫でしてしまった
③「ヨーロッパは民主主義でない」発言(バンス副大統領と同一)
 ドイツでの安全保障会議でのトピックとしては的外れだった。ヨーロッパ各国からの信頼低下とNATO各国のアメリカ不信に帰結した
④ウクライナーロシア戦争、イスラエルーハマス紛争の直接介入
 ヨーロッパに相談なく(EU抜きの決定)、イスラエル抜きの勇足
⑤マスクとの仲違い
 EVやスペース事業の進捗遅れと、OBBB法案採択(減税法案)で共和党議員が反駁して仲間割れ

 5つの失策により、現時点で(共和党サイドの)中間選挙の行方がかなり厳しくなってきそうだ。
 恩田さんによる「トランプディール」の評価は、かなり厳しいものがある。その一方で、①相互関税に関しては、日本の自動車メーカー(部品メーカーを含む)が右往左往させられている。
 恩田さんは、トランプのことを、「ジャイアン(漫画ドラえもんに登場する)」と呼んでいる。のび太君(日本の首相、石破さん)はこの先、ジャイアンとどのように交渉すべきだろうか? 「安倍さんが生きていたら、模範演技をしてくれるだろう」(恩田さんの気持ち)。
 以下は、わたしから恩田さんへの返信です。正直にわたしの気持ちを伝えています。

 それにしても、トランプさん、信じられない失策ですね。
でも、おかげで、トランプの暗殺はなくなりましたね(わたしの予言=懸念事項でした)。わたしは、トランプ氏は「危険人物だとして排除される」と思ってました(3度目の正直)。皆さんから、「その程度の人物」だと烙印を押されたも同然ですね。
 そして、アメリカという国に対する世界の国からのリスペクトが地に落ちてしまったように思います。つまり、歴史的にはわずか100年の間に君臨していた一つの民主主義国家(アメリカ)。たまたま優秀な人たちの集まりだった。
 いまは、限りなく多くの国の一つに成り下がりつつある。それでも、軍事力はまだそこそこだが、これで歴史的に輝ける地位からは落ちてしまった感じがあります。

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