昨日は、タイプの異なるふたりのビジネスマンをインタビューさせていただいた。元西友の藍野弘一さんとは40年ぶり、日本ポリ鉢販売の大岩正美さんとは三年ぶりの再会だった。大岩さんには18年前(1998年)に初めてお会いしたのだが、この10年間はお会いする機会を持つことができなかった。
長い空白の時間があったのに、40年間(藍野さん)と10年間(大岩さん)とのブランクは一瞬にして埋めることができた。大岩さんのインタビューは、いずれ『JFMAニュース』の「シリーズ、トップインタビュー」(7月号~8月号)に収録されることになっている。大岩さんが苦労された話は、それまでのお楽しみに。
一方の藍野さんからは、先週突然のメールをいただいた。二年前に東洋経済新報社から刊行した『マクドナルド 失敗の本質』を藍野さんがお読みになって、懐かしくなってメールをくださったらしい。
往復のメールで、わたしがNHK出版から「コンビニ本」を準備していることを知った藍野さんが、「わたしがタッチした海外のファミマ事業のことなどお話しましょうか」と返信があった。わたしから、「それでは、市ヶ谷でランチでもしましょう」となった。
市ヶ谷の研究室で、実に40年ぶりの再会となった。懐かしい方からのメールは、次のように始まっていた。
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小川さん
大変ご無沙汰しています。
流通産業研究所での研究会とその後の書籍「ショッピングセンター:立地とマーチャンダイジングのモデル分析」作りでご一緒させていただいた元西友企画室の藍野です。
たまたま書架に小川さんのお名前があり、タイトルのもひかれ(私もマックが絶好調の収益の裏で荒れるCSを連載コラムに書いたことがあります)とても興味深く拝読させていただきました。
(後略)
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藍野さんとは、大学院生のとき(1976年、修士2年)に、流通産業研究所(のちの「セゾン総研」)の研究会でお会いした。初代の研究所長だった佐藤さんの名前を冠した「佐藤肇賞」の三席を受賞したのが藍野さんだった。ちなみに、一席(最優秀賞)は、のちに経営学部教授になる矢作敏行さんだった。わたしが、矢作さんを「流通論」の担当者として指名することになったのは、佐藤肇賞の受賞がきっかけだった。
昨日のランチでは、はじめて知ったことが多かった。それは当然だろう。あのころ、研究会の場では報告書(書籍)をまとめることが主だった。本は書いてはいたが、一緒に食事することなどはなかった気がする。
藍野さんは当時、西友の営業企画にいらした。しかし、無印良品コンセプト(わけあって安い!)を生み出し、その後ファミリーマートに移動したことや、初期の海外進出を担当して台湾・韓国・タイの進出に関わったことは知らなかった。転職してゴーン体制下で、日産自動車の店舗開発企画部に在籍していたことは、実に驚きだった。
わたしと同じ学年で、藍野さんも今月で65歳になる。わたしは、自分の興味があることについては、実に細かな個人ファイルの詳細を、時間のはるか彼方から引き出してくることができる。そのような特異な才能に恵まれていると自負している。
この日も、藍野さんと一緒にランチをした杉山君(販促研社長、静岡在住)をびっくりさせたのは、藍野さんが千葉県の生まれなのに、弘前大学農学部を卒業していること。佐藤肇賞の受賞作品は、「スーパーマーケットの最適な駐車台数」だったことをふつうに思い出すことができた。
数回だけ研究会で会ったひとの個人情報を、40年後に一瞬で復元してくることは簡単ではないだろう。そんなわけで、藍野さんのその後の仕事を、約一時間のランチで詳しく伺った。藍野さんは、1時半から渋谷で予定があった。わたしも予定が詰まっていた。
昨日はどうにも時間が足りなかった。積もる話をしていただくために、大学院のマーケティング論の授業に藍野さんを特別講師としてお迎えすることにした。海外のファミリーマートの展開に関しては、その時をお楽しみに。
青木恭子さんに、講義メモを作ってもらうことにしよう。タイムスリップの続きは、その講義の中で。