(その101)「コンビニの未来」『北羽新報』2025年2月24日号

 今日からちょうど一か月後の3月24日、拙著『ローソン』(PHP研究所)が全国の書店で発売になります。今回は、特別な出版になりました。ローソンの創業50周年記念事業に、本書が組み込まれることになったからです。ローソン主催の出版記念パーティーが、4月7日に豊洲のユナイテッドシネマで開催されることになりました。
 本日、連載をしている地元新聞『北羽新報』に掲載されたのは、本書のプロモーション記事です。「コンビニの未来」というタイトルをつけました。コンビニのトップ企業であるセブン-イレブンを、業界三番手のローソンが追い抜いてしまうという予言です。

 
(その101)「コンビニの未来」『北羽新報』2025年2月24日号
 文・小川孔輔(法政大学名誉教授、作家)

 拙著『ローソン』(PHP研究所)が、3月24日に全国の書店で発売されます。ネット書店では、本コラム記事がお目見えする2月下旬に、予約販売が開始されているはずです。定価1600円、320頁のコンパクトなビジネス書です。
 本書は筆者の54冊目の著作になりますが、今回は特別な形での出版になりました。本年6月3日に、ローソンは創業50周年を迎えます。その記念出版事業として本書が刊行されることになったからです。ビジネス書としては異例の扱いで、初刷りで1万2千部を印刷します。
 日本でコンビニが誕生してから50年が経過しています。トップ企業は、セブン-イレブンです。ただし、親会社の「セブン&アイ・ホールディングス」の業績低迷もあり、カナダの企業から約7兆円で企業買収を仕掛けられています。イトーヨーカ堂の創業家からはMBO(株式の非公開化)の逆提案もなされていますが、この買収劇が最終的にどのように決着を見るかは、いまのところ不透明です。

 ところで、拙著『ローソン』は、7年前に企画がスタートしました。2017年1月、『新潮45』に投稿した拙稿「ローソンがセブン-イレブンを超える日」を下敷きに、2019年頃を目途に単行本化を目指して、取材やインタビューが始まりました。ところが、コロナ禍でコンビニ業界でも業績が低迷して、出版企画そのものが棚上げになってしまいます。
 反転のきっかけは、ローソンの竹増社長が提唱した「大変革実行委員会」の発足でした。コロナ禍の真っただ中(2020年)、有能な若手や中堅社員を登用して、これまで考えつかなかったようなプロジェクトが立ち上がります。斬新な取り組みを紹介したのが、拙著『ローソン』です。

 経営学に、「先駆者優位の理論」があります。最初に新しい事業(例えば、コンビニ)を始めた企業(セブン)を、二番手以降の企業(ローソンやファミマ)が追いこすことはむずかしいという仮説です。しかし、チャレンジャーがリーダー企業を打ち負かすことができる状況が一つだけ知られています。それは、新機軸を打ち出して「競争の舞台」を変えてしまうことです。挑戦者のローソンがトップ企業のセブンを打ち負かすためには、セブンが取り組んでいない事業に投資することです。
 2020年から、ローソンはセブンが取り組んでこなかった事業に乗り出します。①フードロスの削減、②値引きの開始、③レジの無人化、④省エネ店舗の実験、⑤アバター接客、⑥過疎地への出店、⑦書店併設コンビニの出店、⑧店内調理の導入、⑨冷凍弁当・冷凍おにぎりの実験販売、⑩商品開発のローカル化などです。
 
 最後の地方起点の商品開発で思い出されるのが、2018年に夏の甲子園大会で準優勝した金足農業の「金農パン」です。金農パンは、ローソンが金足農業の生徒たちと共同開発した商品でした。県内のローソンで販売されましたが、全国的にも大ヒットした商品です。
 拙著『ローソン』では、王者のセブンを挑戦者のローソンが、いつの日か超えてしまう理由が論じられています。本書を読み終えた読者にとって、驚きの予言書になるはずです。

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