日本一絢爛豪華な花火大会は、秋田県仙北市の「大曲の花火」である。2年続けて一緒に観た3人の友人たちに、「今年は、大曲の花火は観に行きませんから」と宣言していた。ところが、3日前に、秋田の友人で世界的に著名なダリアの育種家、鷲澤幸治から電話があった。
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「しぇんしぇ(秋田弁で、先生のこと)、花火の観覧席とれたから、おくさん連れて来なさいね!」と、毎年のように電話を掛けてきてくれる。鷲澤さんが取ってくれる4人掛けの「テーブル升席」は、打ち上げ場所が目の前に見えて、川岸から3列目である。真上に上っていく花火を見ていると、首が痛くなるほどの至近距離だ。
毎年のように、なんとか宿を手配しようと、手当たり次第に電話とネットで連絡をしている。そうなのだが、8月最終週の土曜日は、大曲や角館周辺は当然のことで宿は満室である。
たとえ見つかったとしても、一泊二人で10万円以上はする高級な宿ばかり。秋田市のビジネスホテルも、この日は一年前から予約で満杯である。
キャンセル待ちも入れて、一所懸命に宿を探すのだが、かみさんが泊まれる宿(宿泊条件が厳しい!)は探せない。ここ2年間は、泊まれる宿が見つからないので、かみさんの大曲の花火観覧は諦めてきた。
わたしはといえば、初年度(2022年)は、大田花きの宍戸君と青フラの大草さんと、日帰り温泉のフロアに雑魚寝して、花火大会の夜を過ごした。
二回目の昨年(2023年)は、宮崎県の元バラ生産者(現在はマンゴーの生産者)の伊豆元さんと、大曲駅前の古いビジネスホテルに泊まった。通常は一人5千円のところ、花火大会の当日は一泊2万5千円。ツインで5万円(+消費税)をふたりで支払った。
古いエアコンから、水が漏れてきていた。受付は、中国人の女性で、ホテルのオーナーは、きっと買収した中国資本だろう。
そんなわけで、鷲澤さんから電話が来た時も、最初は丁寧にお断りした。
それでも、今年はしつこく言うものだから、電話が来た翌日に、埼玉県寄居町の「京亭」に泊まって鮎を食べているメンバーに、「みなさんで車で行ってみてはどうか?」と誘ってみた。
ところが、8月31日は全員が予定が入っていた。とくに、去年は長岡の花火を一緒に観ていて、「来年は大曲に行きたい!」と言っていた塩原くん(ヤオコーの元青果部長)は、仕事でせっかくの観覧切符が利用できないので、大いにがっかりしていた。
そんなわけで、今年もダメとわかりつつ、自力で泊まれる宿を探すことにした。
今年に関しては、先にレンタカーを手配して、秋田市ではなく、盛岡側の雫石付近の温泉などから宿泊施設を探してみた。実は一件だけ、「一休ドットコム」で宿が探せた。雫石から10KM離れた温泉宿で、ツインで2部屋を確保できた。一部屋3万6千円、夏休み最後の土曜日にしては、リーズナブルのお値段だった。
通信欄につぎのように書いて、メールで送信した。
「大曲の花火に行くので、チェックインは15時で結構です。お食事の代金はお支払いしますが、食事そのものは現地で済ませますので、結構です」。
「やったー」と思って、かみさんに成果を報告すると、大いに喜んでくれた。「会社に出てから、友人たち2人に連絡してみる」とのこと。旅館も二部屋目を確保してある。4席あるので残りはテーブル席は2席ある。
朝から良い気分で仕事を始めた。1時間後に、PCでメールをチェックすると、件の網張温泉から問い合わせのメールが来ていた。
文言をチェックすると、「申し訳ございませんが、当館は門限が22時になっています。この時間を過ぎると施錠します。近くで熊が出るので、セキュリティのためにロックします。大曲の花火からは、その時間では混雑で戻れないかと思います。宿泊の再検討をお願いします」。
なんということだろう。せっかく宿を確保できたと思ったら、熊のためにお断りだ。仕方がないので直接、宿に電話してみることにした。
女の子が出て、事情を説明してくれた。よくよく聞くと、「熊の出没」で断って来たのではなかった。本音は、大曲の花火の客が、道路の混雑で22時まで戻れず。戻りが夜中(午前様と言っていた)になって、しばしばさらに飲んで騒いでトラブルになった様子だった。
無理強いをしても仕方がない。花火の客は泊めたくないという宿主なのだろう。やむなく諦めて、近くの別の宿を探してみた。再度の検索で、一休ドットコムでは宿が見つからなかった。
楽天トラベルにスイッチしたら、今度は「休暇村の宿」が二部屋で取れた。ここは、食事が付いていないB&Bスタイルだった。素泊まりのお値段は、3.5万円で同じ金額だった。ただし、小岩井農場でフリーのランチ特典がついていた。
長々と書いてきたが、とうとうかみさんが、大曲の花火を観ることができる。ついでに、彼女の姉ともうひとりの友人が、大曲花火大会のツアーに参加することが、夕刻には確定した。今年は、わたしは運転手になることを決意した。
盛岡から、レンタカーで大曲に行くことになった。花火を観ながら、ビールなどアルコールは飲めないのである。
いまのところ、翌日になっても、休暇村からはメールが来ていない。大丈夫だろう。
その代わりに、大草さんと宍戸君には、長い謝りのメールを書いた。当初の約束を破って、自分たち身内で大曲の花火を観に行くことになった。約束を破ってしまったからだ。
それでも、かみさんがようやく大曲の花火を観ることができる。本心では、宿さえ取れれば行きたかったようだった。そのことを連絡すると、鷲沢幸治が喜んでくれていた。
<後記>
大田花きの宍戸君には、先日、こちらの状況を説明した。4席総どりしたことを、電話で謝っておいた。宍戸君は、福島の妹さん家族の席で、今年は大曲の花火を観覧できるとのこと。その言葉で安心した。人間関係を壊しては元も子もないから。
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