一年ぶりで、ワークマンの林知幸部長と上野の事務所で、書籍の打ち合わせをした。しばらく中断していたのは、わたしがローソン本の取材で忙しいかったのと、ワークマンの業績が2023年の決算で2年連続で減収減益になる予定だったからだ。
書籍を刊行するタイミングとして、必ずしも良好な時期とは言えない。今期(2023年度)が最高益を達成したローソンの場合とは逆で、出版には少し時間が必要と考えている。林部長には昨日のミーティングで、率直にわたしの考えを伝えた。
2002年から2003年にかけて、ユニクロブームが終焉したときのことだ。ファーストリテイリングの売上は、前年の年商約4000億円から約3000億円に一挙に減収になった。数字だけを見ると、ジェットコースターのような浮き沈みを経験していた。
多くのメディア関係者やまわりの研究者たちも、「これでユニクロも終わりね」とコメントしていた。しかし、わたしはそうは思わなかった。マーケティングの授業でも、「必ずユニクロは復活する」と宣言していた。当時のブログを見ると、「その根拠は、ユニクロの売上高利益率が10%を切っていない」と分析していた。
フリースは、一過性のブームだったかもしれない。しかし、「郊外型店舗で、自社企画商品を海外協力工場に委託して全品買い取る」というビジネスそのものの収益性が、大きく棄損していたわけではなかった。決算データを見れば、たしかに30%の減収ではあるが、在庫過多の状態でもそれ相当の利益はきちんと稼いでいた。
ワークマンの林部長には、「2003年のユニクロと御社は同じ状況です。減収とは言っても、大赤字になっているわけではない」。時期が来れば、今の施策がいずれ実を結ぶことになるだろう。株式市場が過大な期待をしていたのは、20年前のファーストリテイリングと相似形である。
昨日、ミーティング前にご挨拶に伺った林さんの上司(ワークマンの小濱社長と土屋専務)にも、そのことを伝えてほしいと思っている。そのように伝えて、出版の打ち合わせに入った。
わたしの方からは、書籍について簡単なメモを準備した。出版社と出版時期は未定ながら、基本コンセプトと、書籍に盛り込むべきコンテンツで合意した。来月から、アンバサダーたちが取り組んでいる事例を物語にしてまとめてみたいと思っている。そして、どこかマーケティング雑誌に連載することなどが合意された。
ワークマンが発明した「アンバサダーを使った商品開発や情報発信」などは、もともとがユニークなビジネスの仕組みであり、独自性のある取り組みである。他社が簡単にまねができないモデルである。
個人的に出版のタイミングを待つこと5年。いまローソンがまさにリリースのタイミングにある。ワークマンも発表の時期が来るまで、雌伏の時期が必要なようだ。ここから、ビジネスモデルに磨きをかけて、準備期間がはじまることになる。
ワークマンとの新しいプロジェクトが、1年を経過してようやくキックオフになったようだ。
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