友人の企業家たちが、ここ10年間の中国ビジネスで成功を収めてきた。不思議なことに、大手小売業チェーンの歴代経営トップと某商社の会長が親しい友人である。ところが、米中の政治的な緊張が高まるにつれて、かつての成功がリスクに変わる局面を迎えている。わたしの予言は、このところ20年間は、80%の確率で的中している。
もうひとりの友人で著名な中国ビジネスアナリストが、2年ほど前から日系企業の中国ビジネスの危険性に警鐘を鳴らしていた。2022年2月24日にはじまるロシアのウクライナ侵攻が、米中の対立の引き金にはなった。友好国として台湾との関係が深い日本としても、米中対立は対岸の火事では済まなくなっている。
90年以降、鄧小平の改革開放経済で富を蓄えた富裕層は、コロナ禍の中で国外に脱出し始めている。日本やシンガポールに居を移して、これまで蓄えてきた富を香港経由で逃がしている。共産党の締め付けが、それも限界に達しているらしい。中国の「自由主義的な」経済運営は、完全に統制型の経済に移行した。
いまが大きな転換点で、80年代の暗黒時代に逆戻りが避けられない。30年間をかけて蓄積してきた技術や人材は、ロシアのように国外に脱出することになるだろう。自由な経済活動を享受した人間は、もはや国家統制された環境下では生きることができない。
わたしの友人たちは、中国ビジネスにずぶずぶに漬かってきた。米中の政治経済的な対立は不可避である。急旋回する米国の覇権のもとに構築される、日本の軍事体制下で、中国に深くコミットしてきた日系企業は、米国の覇権の下で、あいまいな立場を継続することは不可能になるだろう。
日本の政治体制も、分断された覇権国家同士のせめぎあいに振り回されることになりそうだ。すでにこの時点で、中国にコミットしてきた経営資源は放棄するしかなのではないのか?この瞬間で、どちらの陣営に帰するのか?旗幟鮮明にすることなしに、グローバルなビジネスはもはや成り立たなくなっている。
さて、夏前までにできることを、彼らは真剣に計画・実行に移すべきタイミングに入っている。リスクオンの局面に入っている。