年初から月1回の頻度で、JA全農青果センターの幹部研修を引き受けることになった。セミナーの受講者は、同社の未来の幹部候補生たち約30名。8つのグループに分かれての研修メニューは、【1】担当部門の課題を整理して、【2】その原因を究明し、【3】対応策を具体的に提案することだった。
1回目の研修セミナーでのプレゼンを見て、「これはまずい」と思った。経営大学院の学生とは違って、グループワークやプレゼンに慣れていない。そこで、発表用の資料作成のために説明したのが、つぎのようなシンプルなパワポの構成法だった。
わたしたちが大学院の学生を指導するときには、「KISS原理」という基準を使っている。聞き手は、現場について事前の予備知識をもっていないことが前提となる。そのうえで、自分たち(グループ)の主張(結論、合意)を聴衆にわかりやすく伝えるための要点を、2回目(2月下旬)のプレゼンが始まる前に解説した。
<プレゼンの評価基準>(5つのポイント)
1.プレゼンはできるだけシンプルに
KISS原理(Keep It Simple, Stupid!)
2. 重要な要素(原因、結果)を列挙すること
リスト化すること
3. それらに優先順位をつけること
物事の重要度にしたがって、優先度を付ける
4. 余分な要因は、捨て去ること
捨てることで、考えが整理できる(迷いが消える!)
5. 対照的な事例を比較すること
ただし、相互比較は、具体的に数字(データ)で示すこと
わたしの弟子や大学の同僚たちでさえ、5つの原理原則にしたがって、必ずしもプレゼンができているわけではない。実は、言うは易いが、実行するのはかなりむずかしいのだ。それでも、資料づくりやグループワークの際に、KISS原理から始まる5つのポイントにしたがうと、プレゼンの内容が聞き手に伝わりやすくなる。
残念ながら、2回目のプレゼンでは、8つのグループの発表はほぼ全滅だった。しかし、KISS原理を覚えていてくれたチーム(2グループ)は、立派に3回目のプレゼンを終えることができた。その他のグループは、落第点だった。
しかし、ここには書かれていない、もっと大切な6番目の評価基準がある。しかも、これがビジネスではもっとも重要な評価基準になるのだ。最後の関門ハードルをお忘れなく!!
6.プレゼンした計画が、実際に「目標通りに実行できた」のかどうか。
通常のビジネス環境下では、計画がその通り実行に移せることはごく稀である。実行の途中で、当初の計画は修正されることがふつうに起こる。そのことも含めて、実行計画で目標が到達できたのかを、最終的にチェックされるべきである。