【柴又日誌】#121:処女小説の「あとがき」を書き始める。

 小学館から刊行する処女小説の初校ゲラが到着した。昨日の夕方までに、校正作業をすべて終えておいた。亀有警察署に電話を入れて、平山克之巡査の名前の読みが正しいことを確認した。初校ゲラを編集部に戻すと、あとは大内さんの表紙装丁とイラスト地図(葛飾広域と帝釈天付近の地図)を待つだけになる。

 

 表紙の装丁には、娘の知海(作中では「和美」)が描いたラフ・スケッチが採用されそうだ。アートディレクターの大内さんが、打ち合わせの時に興味深そうに、娘の作品(スケッチ)を覗き込んでいた。消防団の制服を着ているわたしの画像を送ったら、その絵をモチーフにして、知海が即座に手書きで表紙のデザインを戻してくれた。

 大内さんから、「これ、なかなかいいね」と一言。どうやら娘が描いた「わんすけさんの消防服姿」が採用になるらしい。わたしにとっては、思いもかけないうれしい記念品になりそうだ。

 大内さんとしては、本当はもっと書き込んだスケッチ画が欲しかったようだった。大内さんの意向を受けて、その由を娘に依頼すると、「そんな絵は二度は書けないよ」となしのつぶて。ライトに描いてから数か月経過していた。「原画は処分してしまった」とのこと。残念ながら、そのものずばりの絵の採用は困難になった。それでも、それはそれでいいとしよう。

 

 予定より早めに、初校ゲラのチェックが終わった。時間に余裕があるうちに、あとがきを書いてしまおうかと思っている。本全体は180頁のボリュームになる。レイアウト計画では、あとがきは4頁取りになっている。「つきもの」の地図や家系図などで、あとどれくらいのページを使用するかは不明だが、あとがきと奥付は調整部分のスペースにはなっている。

 あとがきは、通常は再校ゲラが上がってくるタイミングで書くものだ。今回に関しては、書籍のプロモーションを兼ねて、地元の新聞『北羽新報』のコラムで、出版予告をする計画もある。それとの関係で、早めに書いておこうかと思っている。

 2022年に退職したときの案内状を、公式には誰にも出していない。神田小川町の「オフィスわん」のオープンも、一年が経過した今も、一部の卒業性にしか知らせていない。仕事関係者の何人か、風の便りでその存在を知って、ふらりと小川町の事務所とその隣のバーを訪問してくれている。

 

 今回出版することになる『わんすけ先生、消防団員になる。』は、定年の区切りと新しい生活の挨拶を兼ねている。ただし、小学館の担当者からは、「(新刊本を)気前よく配ってしまうと、書店で売れなくなってしまいますよ」(石塚ゆみさん)と、暗に大量の献本を差し控えるようアドバイス(警告)を受けている。

 わたしの気前の良い性格を、しっかり観察されている。これまでは新しい本を刊行すると、200~300冊程度は献本に充ててきた。今回は、自費出版ということもあり、通常の献本分の3倍くらいの金額を投入してしまっている。退職の挨拶状だと思っているが、学生や学会仲間には、実物はアマゾンか大手書店の配本分から購入するようにお願いしようと思っている。

 インスタグラムのフォロワーさんたちには、表紙のデザインとイラストの地図が出来上がったところで、画像を投稿しようと思っている。2万2千人のフォロワーさんたちがいるのだが、そのうちの何パーセントが、実購買に結びつくものなのか?これもチャレンジである。

 

 出版まであと2か月。この本は、自分と家族が東京の下町へ引っ越した後で経験した、4年分の家族史をつづったものである。

 ここで知り合った商売人の方たち、親しくしていただいているご近所さん、新しく知り合った友人たちとの交流がテーマである。本田消防団への入団のエピソードを横糸に、神戸と東京に分かれて住んでいる子供や孫たちが成長していく様子を、私小説という形式で描いている。

 そんなことを、あとがきには残しておきたいと思う。『わんすけ先生、消防団員になる。』は、最初で最後に公開する自分史でもある。わんすけ物(消防団の話)は、このあとも続く可能性はあるが、それはまた別の切り口からの物語になるだろう。