昨日は、ローソンが2014年から手掛けている「書店併設型コンビニ」の事業開発に携わっている平野彰宏SMD(シニアマーチャンダイザー、課長職)にインタビューをお願いしました。平野さんは2001年入社で、店舗営業(店長、SV)を経験した後、2011年からエンタメ部門に異動しました。おもちゃや一番くじ、ポケモンカードなどを担当してきました。
2016年から、現在の出版物(雑誌、コミック、書籍)の担当になりました。現在は、前任者の仕事「本屋さん併設のコンビニ」の事業開発責任者をやっています。インタビューに当たって、わたしは事前に店舗を視察してきました。先週は、神戸と京都に仕事で行っていました。
そして、ローソンの広報部からは、「マチの本屋さん」(現在8店舗)のリストをいただいていました。マチの本屋さんは、青森、宮城、茨城、埼玉、神奈川、愛知、兵庫、島根にあります。神奈川の本屋さん併設の店舗も、向ケ丘遊園ですから、8店舗すべてが地方の「書店過疎地域」への出店になります。
何らかの理由で(ほとんどが採算面から)、地域から書店が撤退するか営業をやめてしまっているケースです。本屋がなくなってしまった場所です。ローソンが書店のない不便さを補う役割をしているわけです。これからできる本屋併設店には、図書館と協業していく役割を担う店(富山県の立山店)もあるようです。
先週は、東京から新幹線で、前日は神戸の息子のところに行ってました。そこで、兵庫県内の店舗の位置を調べてみると、リストに上がっている本屋さんがある場所は、JR須磨駅の近くでした(実際は、駅から離れた山の中でした)。乗換駅のJR住吉駅からなら、1時間圏内です。
京都の仕事が夕方からだったので、午前中にローソン神戸ジェームス山店に立ち寄ることにしました。地図で見ると、海岸線からかなり内陸に入ったところにあります。京都駅の集合時間が、夕方19時でした。JR神戸線の須磨駅からは、それでも時間がないのでタクシーに行くことにしました。
タクシーにしたのは、ラッキーでした。塩屋という次の駅から歩くと、ものすごい坂を荷物をもって(キャリーを引いて)登って行くことになったからです。店名は、ローソン神戸ジェームス山店。店名の由来は、外国人(ジェームスさん?)が住んでいたからのようです。タクシーの運転手さんによると、須磨の海岸沿いからある丘にかけては、神戸市内に勤務している外資系企業のお偉いさんの別荘地だったようです。
というわけで、ジェームス山店を訪問して、書店とコンビニが併設されている「マチの本屋さん」の店内を視察しました。
コンビニ部門のスペースは、35坪強。ドラッグの併設店でもあり、薬も置いてあります。床のタイルを見ながら歩幅(一歩60センチ)で測定すると、本の売り場は18坪(9歩×16歩=5M×10M=50㎡)。
コンビニ部分もそうですが、床がピカピカでした。一番大きなスペースが、雑誌とコミックに割り当てられています。その後、インタビューで、平野さんに尋ねたのとほぼ類似した割り当てなっていました。わたしがいた午前中の10分間で、本の売り場への滞留客は、年配の男性がひとり。コミックの棚を見ていました。
標準的なターゲット客は、子供さんがいるお母さん、わたしが店舗で見たシニアの男性など。場所によっては、学生さん(向ケ丘遊園店は、専修大学の学生さん)なども有力な顧客のようです。
さて、5月15日午後のインタビューでは、事前につぎのような質問項目を用意しておきました。リスト化して、内容を紹介しておきます。
<平野彰宏さんへの質問項目>
1.ローソンでのキャリア,入社の動機
2.平野さんの読書傾向
3.エンタメ部門が長いようですが、本に関わるようになった経緯?
→ コミックや絵本など、エンタメに近い分野,品揃え?
4.ローソンで「マチの本屋さん」の事業発議はどこから?
誰が、どのような狙いで始めたのか?
5.朝日新聞デジタルの記事について
①コンビニ商品と本の買あわせ効果は、なぜ起こるのか?
素朴な疑問、その構造は? 雑誌と本の売れ行きの違い?
②日販と組んでいることのメリットは?
③品揃えの構成
一般には,雑誌4、コミック4、文庫・単行本が2となっているが、
特色のある立地,店舗はあるのか? あるとしたら、その要因は?
④都心部の「書店過疎地域」の話
前回の「無印良品の空白地域」の話とよく似た話。
学生や女性のニーズが絡んでいる?
6.紙の書籍の流通構造(わたしの意見)
①その昔、わたしは秋田の田舎では数少ない「つけ」で本が買える中学生だった。
もしかすると、店舗ピックアップ(OMO)などは,現代版のかけ売りの形態ではないのか?
そこにビジネスチャンスがあるように思う。
②一般書店の品揃え
消えて行った書店は、地域のニーズに寄り添わなくなったからではないか?
コンビニも同じで,全国一律の品揃えの限界を突破した店は成功している。
→ 全国のまちの本屋さんで、ユニークな取り組みをしている店を紹介してください。
7.出版物を手に取ってもらえる環境を残す
①この言葉の意味をもう少し詳しく、、、
②紙の本の存在をどのようにみているのか?
③「おおうち仮説」(小川のブログ記事)についての見解を!
紙の書籍がなくならない8番目の理由
コンビニ併設の新しいタイプの書籍売り場に、平野さんは挑戦中でした。
近々で、10店舗を追加出店。将来的には(2024年まで)、全国100店舗を目指すそうです。
上記の質問に対する詳しい返答は、別の機会に譲りますが、印象に残った話をいくつか紹介します。
<記憶に残ったお話>
1. ロングテールの流通方式(5-②)
日販さんと組んだことの意味は、書籍の取り扱いについて慣れていないローソンにとっての品揃えの補完になります。日販には、「HonyaClub」という受注配送サービスがあるので、OMO(オンラインとオフラインの統合販売システム)の業務ができることになります。スマホで注文/店舗でピックアップ(BIPOS)が、日販さんと組んだことで可能になりました。
とはいえ、なかなかビジネスとしては難しいらしく、コンビニへの導入には時間がかかるとのこと。わたしが思うに、100店舗になれば普及するのでないのか?
2. 特徴ある店舗(6ー②)
・狭山南入曽店は、店に近くに自衛隊の基地がある。ここでは、ミリタリー物(戦争・軍隊関連本)がよく売れる。
・向ケ丘遊園店は、近くに本屋がなく、専修大学がある。学生さんが主要顧客なので、就活本や資格本の品揃えが豊富。
・富山県立山町では、図書館とのコラボ店が誕生するようです。
3. 本好きの店員さん募集
名古屋の店舗(碧南相生店)では、本屋との併設なので、募集時に本好きのパート店員さんを採用したようです。
最後に、余談です。
4日前のInstagram(https://www.instagram.com/p/CsKPBj0SNDD/?utm_source=ig_web_copy_link&igshid=MzRlODBiNWFlZA==)で、ローソン神戸ジェームス山店の写真(店内含む)を投稿したところ、北鎌倉に住んでいる方から、近くに本や併設のローソンがあるとの情報がありました。
調べたところ、マチの本屋さんの業態ではないですが、ローソン・スリーエフ鎌倉台店でした。むかしから、スリーエフ(横浜ベース)は、本屋チェーンの文教堂さんと組んでいて、雑誌や書籍を置いておくノウハウをお持ちのようでした。北鎌倉の当該エリアは、本屋のない場所でした。鎌倉台店の存在には、重宝していますとのフォロワーさんからのコメントがありました。
いろんな意味で、マチの本屋さんは、ローソンらしい業態と思います。本や併設のコンビニは、マチをキーワードにしているローソンの将来性を感じる話でした。