【柴又日誌】#77:金井進一さん(寿司ダイニングすすむ、店主)をインタビュー

 「寿司ダイニングすすむ」は、高砂に引っ越してからすぐに、ネットで検索して見つけた「回らないお寿司屋さん」である。12坪の店舗は、高砂駅南口のヨーカ堂から歩いて3分のところにある。高砂地区でもっとも繁華な通り沿いにあって、常連さんを中心にいつもお客さんで賑わっている。

 

 高砂駅の北口と南口は、「開かずの踏切」で分断されている。北口で電車を降りるわたしたちのような「北口の人」が、南口の店に行くことはめったない。南口にある高砂地区センターで期日前投票をするなど、特別な用事でもなければ、踏切のせいで「南下すること」はありえないのである。

 にもかかわらず、寿司ダイニングすすむさんへは、月に2~3回の頻度で途切れなく訪店している。コロナ禍でも、わが家の行動に変化はなかった。それどころか、緊急事態宣言やマンボーのときでも、ビアリー(アルコール0.5%)を飲みながら、すすむさんのお寿司をつまみに通っていたほどである。

 店主の本名が「金井進一さん」であることを知ったのは、最初の来店からずいぶんと時間が経ってからのことである。名前を知った以降でも、常連さんたちのように「しんちゃん」と声がけはせず、わたしは変わらず店名で「すすむさん」と呼んでいる。

 

 あるとき何気のない会話から、すすむさんが「寿司屋の開業本」を出版したいと考えていることを知った。そこで、それまでも私自身が何冊か出版実績があった知り合いの編集者を紹介した。出版の案件を契機に、わたしたちはそれまで以上に親しくなった。

 最近になって、常連さんたちの何人と一緒に、すすむさんが前から所属している葛飾区消防団に入団することになった。わが動機は、せっかくだから地域貢献のためと思ったからである。すすむさんから聞いた実情はと言えば、消防団の団員になり手が少ないことに危機感を抱いたことが、わたしたちを消防団に勧誘した真の理由だったらしい。

 

 わたしは、かなり以前から、下町の商売人の話を連作で小説にしようと思っていた。定年退職後に余裕の時間ができたので、書き溜めていたブログの原稿を再編集して、短編集をまとめようと思っていた。そこに今週の月曜日になって、「かつしか文学賞」という葛飾区が募集主体の文学賞があることを知った。

 募集要項を見ると、長さはワード原稿(1200字)で10枚から100枚の間である。この際、自作の短い話を編集しなおして、『柴又日記 閉店(みせじまい)』でまとめてみることにした。既存の原稿で4編が準備済みである。それ以外に、3~4篇を新たに書き下ろす必要がある。全体を構成する上では、ボリューム的に少なくとは50頁(7~10篇)はないと見栄えが悪そうだった。

 

 というわけで、昨日はランチ後の14時から2時間ほど、すすむさん(43歳)に話を伺った。原稿の元になるプロットを仕込むためである。インタビューでは、店内のカウンター越しに、進一さんが悪ガキのころからはじまり、米国留学から帰って鮨やを開業するまでの話を伺った。詳しい話は、ショートストリーが完成してから読者の皆さんに紹介することになるだろう。