オンラインでの院生プロジェクト発表会の会場(仮想空間)から

 休日の午前中は、大学院のプロジェクト報告会で司会を担当していた。いまは昼休みで13時半まで休憩に入っている。院生のひとりが途中でzoomから落ちてしまったり、多少のトラブルがあるものの、おおむね発表会はスムーズに進行している。いつもは新一口坂校舎の2つの教室を使用しているが、本日にかぎり4つの教室(仮想の小部屋)で実施されている。

 

 アブストラクト(発表の要約)は、事前にメール配布されている。ふだんあまりきちんと読まないわたしでも、オンライン会議では事前に勉強をしておくことになる。そうしていないと質問がすぐにできないからだ。たぶん他の先生も予習をきちんとしているのではないだろうか。その点では、オンラインでの発表会のほうが効率は高い。

 オンライン発表会の負の側面は、相手の表情がよく見えないことだ。コメントしている先生のほうも、顔の表情もよくわからない。司会者の立場からは、院生や教員の表情が読めないので差配(会話の振り方)をむずかしくなる。教室での発表では、自然に場の空気が流れている。現場が息遣いがわかるので、司会者として場を盛り上げたり、笑顔でコメントができる。

 このあたりがオンラインのむずかしさだろう。言葉だけで伝わらない微妙なニュアンスが、学生にきちんと伝わったのかに確信が持てないはわたしだけだろうか?

 

 午前中は2セッションで、わたしの担当の院生3人を含む、8人が発表を終えた。金子さん、松井さん、松井さん。全員できはまずまずだった。午後からは、あと三人だけが残されている。

 イノベーションマネジメント研究科の大学院生にとっては、卒業プロジェクトは、絶対に落とせない単位のひとつである。彼ら彼女らが研究に投入する時間も長い。そして、正式には今回が教員の前で初めての発表になる。オンラインでの10分間の発表後に、4人の先生たちからコメントをもらう。

 若かりし頃のわたしも、先輩や先生の前で発表するときは、どきどきものだった。これは経験である。場数を踏みながら、研究者として、あるいは実務家として成長していく第一関門に本日、彼らはいる。その場面が、オンラインだとは1月までは誰も想像できなかった。

 

 さてさて、午後の発表者3人(他の3三チームを合わせると13人)は、落ち着かずに自分の順番を待っているだろう。わたしは、発表前の緊張で、食事がのどを通らなかったこともある。そうそう、自意識は午後の発表に集中していた。食欲減退、頭が痛くなったものだ。

 それが、いまや学生にコメントする面接側に回っている。この歳になると、すべてから解放されてきわめて自由に感じる。でも、コメントするために通勤はあってもいいと思う。オンラインでの質問、アドバイスはやや寂しい気持ちになる。

 一緒の空気を感じて、学生の発表を聴いてみたかった。わたし以外の先生たちも、同じ心境なのではなかろうか?場の雰囲気が、人間の気持ちに与える効果は、やはり馬鹿にならないように思う。