「ローソン、無印良品販売 良品計画と提携、PB共同開発も」という記事が、メディアで大々的に報道されていた。日経をはじめ各紙に取り上げられていた記事には、早速、SNSでコメントがたくさんついている。両社の業務提携の狙いを考えてみたい。報道によると、「ローソンの都内直営3店舗で、無印良品の肌着や化粧品、文具などを販売する」となっている。
この提携で良品計画の側からは、失うものは何もない。販路が広がるわけだから、ウエルカムに決まっている。とくに無印良品は地方にほぼ店舗がないので、新たに販路が拡張できるだけでもかなりのメリットになる。ただし、MUJIがローソンで売れたらの話ではある。実験の結果は、ローソンと無印の相性にかかっていると考える。
ところで、そもそも無印良品の加工食品や日用雑貨などは、旧セゾングループのファミリーマートで売られていた。伊藤忠傘下になってから、商品回転率がよくないことから、無印のPBラインはファミマでは1年ほど前に終売になっている。SNSでも書き込みがあったように、ファミマの棚に置かれていたMUJIの文房具や雑貨類は、たしかにほこりを被っていたものもあった。
それでは、無印のPB商品を、同じコンビニの競合であるローソンが扱って売れるものだろうのだろうか? コンビニでの販売で結果がでてしまったMUJIを再登板させて、勝算はあるのだろうか?
MUJIのPB(化粧品、下着、文房具、雑貨など)に陳列棚を用意する実験店舗は、東京都内の直営店3店となっている。3500アイテム中の500アイテムを無印で置き換えるらしい。当面はテスト販売になるのだろうが、ローソン側からその狙いと実験の勝算を推論してみたい。
業務提携の背後に、現状のローソンの品揃えで日用雑貨の販売効率がよくないことがあると容易に推測できる。セブン‐イレブンとの比較では、しばしば食品カテゴリー(弁当やファストフード)が話題に上ることが多い。しかし、雑貨関連の棚の状態を子細に観察してみるとわかるが、セブンと比べて、ローソンの陳列棚の商品は鮮度がよくないように見える。商品回転率がよくないので、商品がくすんで見えることがある。
皮肉なことに、終売になる直前のファミリーマートのMUJIの棚がそうだった。それでは、セブンと二社とはどこがちがうだろうか? 結論をいえば、セブンの店舗のほうが、住宅街立地で来店動機がスーパーやドラッグに近いことである。洗剤や化粧品でも、セブンの来店客は当用買い(間に合わせ購買)ではない。
かつてのファミマは、無印良品の商品(加工食品を含む)を「無印の店舗」に置いてあるようには処遇しなかった。プレゼンテーションが、当用買いに向けていたのが敗因だとわたしは解釈している。主張をもった素敵な商品として、ポジショニングしてあがられなかったことが原因である。
ローソンが実験的に扱う場合でも、プレゼンテーション(売り出し方)が重要になる。”間に合わせ”のための洗剤や家庭用や文房具であれば、イオンの「まいばすけっと」に置かれているトップバリュの扱いと同じである。しかも、トップバリュとMUJIでは、価格訴求力(お値頃感)が決定的にちがっている。
MUJIのブランドとしての良さは、ライフスタイルに関して自己主張がはっきりしている。それゆえ、価値ある商品として店頭でプレゼンテーションできないかぎり、この提携はファミマでのMUJIの販売と同じ末路をたどるだろう。MUJIを活かすポイントは、いまや青ローソンの棚におかれている「ナチュラルローソン」や「成城石井」の開発商品と同じようにMUJIを扱うことができるかどうかにかかっている。
この問題は、先日来、SNSやYouTubeで話題になっている「ローソンセレクト」(PB)の新パッケージ問題と関連している。コンビニの商品開発という視点からみれば、現状のMUJIは、開発の方針が異なる他社商品である。グループ内のナチュラルローソンや成城石井とは、セレクトして調整できる商品とは個性がちがっている。
結論である。ローソンがMUJIと提携するのであれば、MUJIをセレクトショップの中の優良なブランドとして位置づけることである。いまからはじまる取り組みでは、ナチュラルローソンや成城石井と同格で、なおかつその他ナショナルブランドとは役割分担が異なる自社ブランドに近い仲間として遇することである。
換言すると、ローソンがセレクトショップのように運営されるきっかけを、MUJIが与えるかもしれない。MUJIの雑貨や化粧品を、ナチュラルローソンの品揃えを青ローソンに横展開するように展開することである。そして、ナチュラルローソンとMUJIを、雑貨部門に関して融合させることだろう。NLとMUJIの共同ブランドとするアプローチも可能性としてあるように思う。
なお、ローソンがセレクトショップを志向するならば、店内にMUJIの棚を設置することにわたしは反対である。MUJIブランドが、ローソンの棚にちりばめられる「分散型の陳列」を推奨する。MUJIがローソンの棚に埋没するのではない。陳列棚へ静かな溶融するのである。