今月号では、能代沖にできる洋上風力発電のことにからめて、米国の風力発電事情について紹介してみました。留学中に見た殺伐とした風車の風景が、わたしの最初の風力発電所体験です。30歳の時でした。それから40年弱が経過して、世界中で再生エネルギーの切り札として、風力発電は脚光を浴びています。
「風車のある風景」『北羽新報』2019年11月26日号
文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授) V3:20191126
文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授) V3:20191126
アメリカ映画の巨匠、ヒッチコック監督の作品に「鳥」というスリラー映画があります。たくさんの鳥が出てくる薄気味の悪い映像をいまでも覚えています。撮影現場は、米国西海岸のボデガベイ。サンフランシスコから2時間ほど車で走ったところにある小さな漁港で、周囲の海外線は殺伐とした風景の砂丘地帯になっています。冬の寒い日、五能線の車窓から眺める日本海の海岸線を髣髴とさせます。
1982年の秋、ワインの産地ナパバレーに行く途中、映画の映像を確認するために立ち寄りました。帰国後に知ったのですが、1958年に原子力発電所がこの場所に建設する計画が発表されました。しかし、住民たちの反対運動で6年後には原発の建設が中止になります。
米国留学の2年目、家族とヨセミテ国立公園に行く途中で、大きな風車群に遭遇しました。アルタモント峠風力発電所です。1980年にカリフォルニア州が風力発電に対して租税の還付を始め、開発が中断されていが原発の代替エネルギー源として建設されたものです。現在、大小約3000基の風車が設置され、いまでは世界最大規模の風力発電所になっています。
科学雑誌『National Geographic』(2014年5月1日号)によると、代替エネルギーとして有望視されている風力発電ですが、最大の課題のひとつは、風力タービンが年間数千羽の鳥やコウモリを殺してしまっているという実態だそうです。アルタモント風力発電所では、鳥の被害を克服するために様々な実験が試みられています。風車の羽根の形を工夫したり、デザインを変更するなどの努力をしているようですが、決定的な衝突回避策は見つかっていないようです。
1982年の秋、ワインの産地ナパバレーに行く途中、映画の映像を確認するために立ち寄りました。帰国後に知ったのですが、1958年に原子力発電所がこの場所に建設する計画が発表されました。しかし、住民たちの反対運動で6年後には原発の建設が中止になります。
米国留学の2年目、家族とヨセミテ国立公園に行く途中で、大きな風車群に遭遇しました。アルタモント峠風力発電所です。1980年にカリフォルニア州が風力発電に対して租税の還付を始め、開発が中断されていが原発の代替エネルギー源として建設されたものです。現在、大小約3000基の風車が設置され、いまでは世界最大規模の風力発電所になっています。
科学雑誌『National Geographic』(2014年5月1日号)によると、代替エネルギーとして有望視されている風力発電ですが、最大の課題のひとつは、風力タービンが年間数千羽の鳥やコウモリを殺してしまっているという実態だそうです。アルタモント風力発電所では、鳥の被害を克服するために様々な実験が試みられています。風車の羽根の形を工夫したり、デザインを変更するなどの努力をしているようですが、決定的な衝突回避策は見つかっていないようです。
* * *
カリフォルニアの風力発電所のことを書いたのは、最近になって秋田県沖の洋上に風力発電所を建設する計画がメディアを賑わすようになったからです。東京に住んでいる筆者にも頻繁に情報が届くくらいですので、地元の様子が気になりました。
秋田県庁が出している「環境アセスメント情報」(美の国あきたネット、2019年11月08日)によると、現在計画中の洋上風力発電所は、「秋田北部洋上風力発電事業」「八峰能代沖洋上発電所事業」「能代・三種・男鹿沖洋上風力発電事業」(すべて仮称)など6件。このほかに、陸上の風力発電事業案件が12件と目白押しです。事業主体を見ると、電力会社や建設会社、商社などが合弁事業の形で風力発電事業に関わっています。
風力発電が盛んなデンマークや米国では、3つの側面から環境への影響が評価されています。①渡り鳥の衝突被害、②低周波発生による住民の健康被害、③自然景観の破壊の3点です。国土の広い米国では、風力発電所は住民がほとんど住んでいない場所に建設されていますから、②と③はほぼ問題にならないようです。
秋田県庁が出している「環境アセスメント情報」(美の国あきたネット、2019年11月08日)によると、現在計画中の洋上風力発電所は、「秋田北部洋上風力発電事業」「八峰能代沖洋上発電所事業」「能代・三種・男鹿沖洋上風力発電事業」(すべて仮称)など6件。このほかに、陸上の風力発電事業案件が12件と目白押しです。事業主体を見ると、電力会社や建設会社、商社などが合弁事業の形で風力発電事業に関わっています。
風力発電が盛んなデンマークや米国では、3つの側面から環境への影響が評価されています。①渡り鳥の衝突被害、②低周波発生による住民の健康被害、③自然景観の破壊の3点です。国土の広い米国では、風力発電所は住民がほとんど住んでいない場所に建設されていますから、②と③はほぼ問題にならないようです。
わたしの友人で、1990年代の後半にアルタモント風力発電所を、建築家の安藤忠雄氏と一緒に視察した経営者がいます。総菜メーカーのロック・フィールド(本社:神戸市)の岩田弘三会長です。岩田会長は、風力発電による再生エネルギー活用という考えに感銘を受け、同社の静岡工場を増築するにあたって、3基の風車とビオトープを工場の構内に設置しました。いまや工場の電力はすべて風車からの再生エネルギーで賄われています。なお、工場は住宅地から5キロほど離れていますが、付近の住民や従業員の健康被害は報告されていないようです。
先日の『北羽新報』(11月17日号)に、「能代山本洋上風力を考える会」の記事が掲載されていました。地元住民を中心に、今後は3つの視点から環境アセスメントすることが必要になると思います。その際に、風力発電所建設のプラスの側面も強調しておきたいと思います。それは、①再生エネルギーの供給効果、②地元の雇用創出効果、そして③観光資源の開発効果です。
先日の『北羽新報』(11月17日号)に、「能代山本洋上風力を考える会」の記事が掲載されていました。地元住民を中心に、今後は3つの視点から環境アセスメントすることが必要になると思います。その際に、風力発電所建設のプラスの側面も強調しておきたいと思います。それは、①再生エネルギーの供給効果、②地元の雇用創出効果、そして③観光資源の開発効果です。
紙幅が尽きてしまいました。3つのプラス効果については、別の機会に議論してみたいと思います。