大曲の花火大会を見るために、8月末に秋田に旅行することになった。ところが、かみさんが旅先の岩手県雫石町で腹痛を起こして、救急病院を探すことになる。結局、検査でも原因不明で下剤と腹痛の調整剤でホテルに戻ることになったが、みなさん親切だった。
「東北の人は、やっぱり親切だった!」『北羽新報』2024年9月22日号
文・小川孔輔(法政大学名誉教授、JFMA会長)
3年連続で「大曲の花火大会」(8月31日開催・大仙市)に招待されました。秋田市のダリアの育種家で友人の鷲澤幸治さんからのお誘いです。「しぇんしぇ(先生)、今年こそ奥さんを連れてきてくださいね」が鷲澤さんからかみさんへの伝言でした。
観覧席への招待は、皆がうらやましがる升席のプレミアムチケットです。2年前にわたしが撮った花火の動画はかみさんも見ています。それでも、連れ合いは重い腰を上げてくれません。語学が達者な下町の元お嬢さんは、秋田弁を完璧に聞き取ることができます。
ところが、秋田での初体験(汲み取り式トイレ)には大きなショックを受けたようです。その後も、秋田への帰省は気が進まない様子でした。ところが、花火当日の「休暇村。岩手網張温泉」のホテルが運よく予約できました。さらに、友人が「大曲の花火、見たいです」と同行を応諾してくれました。連れ合いも「友人が行くなら」と花火を観る気になったようです。
当日は、大宮から新幹線で盛岡まで。駅レンタカーを借りて、網張温泉ホテルに到着。ところが、チェックイン後にかみさんが急に腹痛に襲われました。様子を見ていると、冷や汗がたらたらで、立っていられない状態です。本人は「しばらく横になっていたい」と苦しそうでした。
さすがに様子がおかしいと思ったので、フロントに掛け合って、「近くでかみさんを診てくれる病院はないか?」と病院を探してもらいました。土曜日ですから、近くの病院は休みでした。ところが、親切なフロントの方が粘り強く交渉してくれて、「繋温泉病院」を手配してくれました。
休暇村から繋温泉までは車で約40分。到着すると、診察室にはベテランの看護師さんがひとり。問診の後に、若い先生が駆けつけてくれました。異例のことだと思います。問診だけでは病因がわからず。腹部のレントゲンを撮る必要があります。休日出勤でレントゲン技師の先生を呼び出してもらいました。かみさんの腹痛は収まりません。
「花火大会、大丈夫でしょうか?」と看護師さん。時刻は15時半を回っています。薬の処方などで会場に向かえるのは17時ごろ。道路の混雑を考えると、打ち上げ開始時刻までに会場到着は困難と判断しました。体調が悪化したら打つ手がありません。
診察後に整腸剤と下剤を処方してもらい、ホテルに引き返すことにしました。土曜日なので会計係がおらず、現金5千円を置いて治療代は週明け精算することにしてもらいました。網張温泉のお風呂に浸かって、フロントでいったんは断った夕食を復活させてもらいました。なんと!網張温泉ホテルは、復活した夕食の料金を全額免除してくれました。
部屋に戻って、NHKのBSで花火大会を観覧して、早めの就寝となりました。かみさんも友人も、楽しみにしていた花火は来年に持ち越しになりました。花火こそ見られませんでしたが、今度の旅行では、東北の人たちの親切に助けられました。
網張温泉ホテルでも繋温泉病院でも、皆さんがイレギュラーな事態に嫌な顔をせずに対応してくれました。二日目の十和田ホテル(小坂町)の接遇も素晴らしかったです。
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