日本の森林が荒廃している。その現状を未然に防ぐ手立ては?

 先日のブログ記事(11月24日)に対して、多くの方から「ワサビの危機は由々しき事態」との心配をいただきました。二日間で約300人の方にごらんいただきましたが、そのうちの何人かからは、「ワサビが危ない理由として、日本の森林が荒れ放題なことが原因」「それを防ぐことがまずは先決ではないか」というご意見をいただいています。

 以下は、大学院生たちとのLINE上でのやり取りです。
 
 <わたしからの問題提起と説明>
 森が荒れ放題になっているのは、いくつか理由があります。全国的な状況としては、イノシシとサルの被害がかなり大きくなっていることが挙げられます。いわゆる、全国的に「獣害サミット」が毎年開かれているくらい、獣害は深刻になっているのですが、ワサビの危機もその影響によるものです。
 根本的な問題として、わたしは森林の保全に問題があると思ってます。民有林のスギなど間伐ができていなかったり、山を荒らしたままになっているので、鹿や猪が餌を無くして里に降りてくるからです。 
 今度の台風15号と19号で、房総の杉林は壊滅的な打撃を受けました。農産物でないので、あまり表にはでないですが、日本の山の荒廃が進むと、最終的には河川の保水力を通して平野部と海に影響が出ます。河川の氾濫とプランクトンの増殖で、海と川は森の影響を受けます。
 
 国土交通省も農水省、林野庁もこのメカニズムは知ってますが、予算的に何ともならないのです。公的な助成では問題は解決しないと思います。民間の知恵が必要なのは、わさび問題で明らかです。
 長くなってしまっていますが、ご参考まで。物事を複雑にしているのは、森林の大部分を占める民有林の所有者がわからなくなっていることなのです。間伐も手入れも、山の集積などもできないのです。
 実は、わたしの母がなくなって(4月1日)、秋田の山に四ヶ所、親父の頃から森林を所有していたことが判明しました。それでも、兄弟姉妹の誰もそれを相続しようとは言わず。結局、他の不動産を相続した弟が相続することになりました。経済的には殆ど価値のない原野と山林です。
 私たち世代がこうですから、これから両親をなくす世代ならば尚更です。山が荒れるのは、相続と所有に対して、法律と行政の施策が遅れているからです。すいません、長々と。
 <養鶏場でマネージャーをしている学生から>
 なるほど、勉強になります。
実感として我々養鶏業をやっていると、よく隣接地の買収をしたりもするのですが、山林の所有者がよくわからないというケースは多いです。
 そして、養鶏場でも立たない限り売れないような土地なので、えらい高い値段を言ってくる方も多いそうで。
 <もう一人別の学生から>
 針葉樹と広葉樹を日本本来の比率にすれば野生動物の餌問題だけではなく、花粉症にもなるのではと思っていたんですけど、そもそも一般の人が山の土地を所有していたりする関係上色々ハードルがありそうですね。
 山林の土地は、国が買い取って管理すれば良いのにと思うんですけど、予算的に厳しいんですかね。
今でも赤字垂れ流してますし。
 <わたし>
 農地と林野の所有を共産圏のロシアや中国のように、期間限定にすれば、かなりの問題が解決します。オランダなども、実質的には国土の70%が干拓地だったこともあり、国有で99年間の賃貸契約になります。
 
 <学生>
 そうすれば、耕作放棄地も所有者がわからない原野という状況もなくなります。先祖代々の土地という概念が嘘っぽいのですよ。
せめて所有者が分からない土地は、国の所有物になるという法律ができれば良いんですけどね。
 <別の学生>
 そうすれば空き家問題も進展しそうです。
 <わたし>
 はい、これは法制度を変えれば、割りに簡単に解決しそうです。法改正が最近になって行われましたよね。もっとドラスティックでもいいと思います。地目が山林や原野など。空き店舗も、商業活動停止の案件には特別な措置を!
 事態は、実はかなり進行なのだとわかります。