オオハクチョウいまだ飛来せず@清水口調整池には二羽のみ

 今年の3月11日、大震災直後に調整池を飛び立った白鳥23羽のうち、4羽が11月末に飛来した。しかし、第一陣は一夜でどこか別の場所に移動したらしい。現在は、その後に飛来したオオハクチョウ2羽のみが、池の南側で住民の古米などを食べて過ごしている。



 オオハクチョウの生態は、小型無線発信機などの近代的な測定道具を使って、次第に解明され始めている。日本各地の湖沼で越冬する白鳥の故郷は、北極海にちかいシベリアのツンドラ地帯であることが判明してきている。
 わたしたちが住んでいる千葉県あたりから、直接シベリアに飛ぶことはなく、北海道の沼地などの中継地点で短期間過ごしていることも分かっている。何週間かかるのかはわからないが、長い旅路の途中では、食料不足や嵐に見舞われることもあるのだろう。
 だから、3月11日の天変地異に驚いて、例年よりも早く、急きょ飛び立っていった白鳥たちの旅程が心配だった。一年坊主の産毛が残ったグレーの白鳥たちは、旅立ちには準備不足だったのではないかなど。いつもは、滑空の練習をはじめて、しばらくしてから北に帰っていくものだ。

 3月11日以降は、途中で、福島の上空を通っていったに違いない。三陸の海岸線も飛んで行ったかもしれない。想像をはばたかせると、いつもより北帰行が困難だったことを予想させる。
 とりあえず4羽が、11月に帰ってきたときは、安堵の胸をなでおろしたものだが。23羽からマイナス6羽。17羽のいまが心配である。この10年間で、最も遅いオオハクチョウの飛来は、12月10日だったように記憶している。調整池の掲示板をもう一度、確認しに行ってみよう。

 「白鳥の会」のメンバーも、古米をあげる相手がいなくて、なんなく手持ち無沙汰にしている。
 いつもは数千羽は群れているようにみえるマガモも、今年は数がすくないようだ。くず米のおこぼれに預かれないからである。主役の白鳥がいないので、振る舞われる餌の量も勢い少なくなる。波を立てる鳥たちがいないので、調整池の水面は、鏡のように静かだ。
 くぉー!くぉー! 池の方から、甲高い白鳥の鳴き声は今日も聞こえてこない。