今月号は、千葉の房総半島を襲った台風15号の被害について書きました。地球温暖化は、わたしたちの生活に深刻な影響をもたらし始めています。これはほんの始まりのように思います。関連記事としては、エイキング博士の研究(9月 日ブログ)をご覧ください。温暖化の真因は、飽食と動物性タンパク質の過剰摂取にあります。
「千葉の台風被害と地球温暖化」『北羽新報』2019年9月24日号
文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)
文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)
9月19日の『日本経済新聞』に、「温暖化で海面上昇、最大1メートル超 国連報告案」という記事が、掲載されていました。内容は、おおむね次のようなものでした。
「温暖化で北極の氷が解け、海面上昇が起きると考えられている。地球温暖化がもたらす影響についてまとめたIPCCの報告書(原案)が判明した。温暖化ガスの排出削減が進まないと、北極の氷が解けるなどして今世紀末までに海面が最大1メートルを超えて上昇すると予測した。高潮や洪水によって世界の10億人が危機にさらされ、2億8000万人以上が家を失う」。
温暖化対策に真剣に取り組まないと、南太平洋に浮かぶ島々は海面下に没する危険があります。日本にとっても他人事ではありません。例えば、わたしが住んでいる葛飾区は海抜ゼロメートル地帯です。関東大震災クラスの地震が来れば、東京湾から数メートルの高さの津波が江戸川を逆流してきます。堤防の決壊で一瞬にしてわが家は水面下に没します。
水没のリスクは、世界の大都市も同じです。ニューヨークやサンフランシス、シドニーなどは、美しい海外線に沿って町がひらけています。台風やハリケーンや地震など、空と海と陸から押し寄せる自然災害は、わたしたちの生活インフラに甚大な被害をもたらします。
「温暖化で北極の氷が解け、海面上昇が起きると考えられている。地球温暖化がもたらす影響についてまとめたIPCCの報告書(原案)が判明した。温暖化ガスの排出削減が進まないと、北極の氷が解けるなどして今世紀末までに海面が最大1メートルを超えて上昇すると予測した。高潮や洪水によって世界の10億人が危機にさらされ、2億8000万人以上が家を失う」。
温暖化対策に真剣に取り組まないと、南太平洋に浮かぶ島々は海面下に没する危険があります。日本にとっても他人事ではありません。例えば、わたしが住んでいる葛飾区は海抜ゼロメートル地帯です。関東大震災クラスの地震が来れば、東京湾から数メートルの高さの津波が江戸川を逆流してきます。堤防の決壊で一瞬にしてわが家は水面下に没します。
水没のリスクは、世界の大都市も同じです。ニューヨークやサンフランシス、シドニーなどは、美しい海外線に沿って町がひらけています。台風やハリケーンや地震など、空と海と陸から押し寄せる自然災害は、わたしたちの生活インフラに甚大な被害をもたらします。
戦後すぐに生まれたわたしたち世代は、「世界の平均気温は産業革命前からすでに約1度上がっている」というIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の報告を、肌感覚として実感しています。今年の夏も各地で異常気象が続き、考えられない暑さと雨風に苦しまされました。
温暖化を原因とする異常気象が、わたしたちの生活に与える影響で長期的に深刻なのは、農産物への影響です。先週、千葉を襲った台風15号の被害は、50年前に作られた送電線インフラが弱っていることを明らかにしました。しかし、真剣に考えなければいけないのは、日本の農業の中心が、かつてのような露地栽培ではなく、施設園芸に移っていることです。
友人や知人の多くが、千葉県で花や野菜の生産者に従事しています。日本の農業界を代表するような大規模農家です。今度の台風で、彼らの温室が甚大な被害を受けました。その具体的な被害状況を紹介します。
台風が襲来する1週間前に取材で訪問した南房総の青木園芸は、日本最大のアジサイの生産者です。2代目経営者の青木良平さん(42歳)は、2004年から温室の規模を2.5haまで拡大してきました。商売は順調でしたが、今回の台風でビニールが飛ぶなどで温室の約半分が被害を受けました。深刻なのは、今も続いている停電です。
青木園芸のアジサイはブライダル向けに栽培されています。9月末から10月が需要期にあたります。台風の被害で館山道が寸断されていますから、アジサイやカラーなどを都内の花店や結婚式場に運ぶことができません。また、球根切り花の扱いが中心なので、冷蔵設備が必要です。停電のままですので、知り合いが急遽ドライアイスを持ち込んで協力してくれています。しかし、来季の球根は使い物にならない状態のようです。
温暖化を原因とする異常気象が、わたしたちの生活に与える影響で長期的に深刻なのは、農産物への影響です。先週、千葉を襲った台風15号の被害は、50年前に作られた送電線インフラが弱っていることを明らかにしました。しかし、真剣に考えなければいけないのは、日本の農業の中心が、かつてのような露地栽培ではなく、施設園芸に移っていることです。
友人や知人の多くが、千葉県で花や野菜の生産者に従事しています。日本の農業界を代表するような大規模農家です。今度の台風で、彼らの温室が甚大な被害を受けました。その具体的な被害状況を紹介します。
台風が襲来する1週間前に取材で訪問した南房総の青木園芸は、日本最大のアジサイの生産者です。2代目経営者の青木良平さん(42歳)は、2004年から温室の規模を2.5haまで拡大してきました。商売は順調でしたが、今回の台風でビニールが飛ぶなどで温室の約半分が被害を受けました。深刻なのは、今も続いている停電です。
青木園芸のアジサイはブライダル向けに栽培されています。9月末から10月が需要期にあたります。台風の被害で館山道が寸断されていますから、アジサイやカラーなどを都内の花店や結婚式場に運ぶことができません。また、球根切り花の扱いが中心なので、冷蔵設備が必要です。停電のままですので、知り合いが急遽ドライアイスを持ち込んで協力してくれています。しかし、来季の球根は使い物にならない状態のようです。
全国21か所のローソンファーム(ローソンが15%出資)で、社長会の代表を務める篠塚利彦さん(34歳)は、ローソンファーム千葉と香取プロセスセンター(加工会社)の社長を兼務しています。
台風襲来の2日後に、篠塚さんの携帯にメールを送りました。篠塚さんからの返信は、「台風の被害は人生で最も大きなものでした。ハウスも何棟か倒壊し、作物は雨にうたれ復活の目処がない状態です。停電もまだ続いています」でした。篠塚さんによると、「ハウスには一部保険をかけてはいますが、全体の被害が大きすぎます。作物もそうですが停電で冷蔵庫内にある原料(キャベツ、人参、大根など)の損金が大きいです」。
気がつけば、日本の農業も温室や冷蔵庫、加工設備に投資をして大規模化しています。設備産業ですから、温室や冷蔵庫を冷やしたり、収穫機械や洗浄設備を動かすためには電気が必要になります。今回は関東の千葉エリアでしたが、昨年は九州と北海道が災害地域に指定されています。農業の未来を考えるとき、経済的な生産性も大切ですが、災害のリスクを社会的に避けるための工夫が必要だと切実に感じました。
気がつけば、日本の農業も温室や冷蔵庫、加工設備に投資をして大規模化しています。設備産業ですから、温室や冷蔵庫を冷やしたり、収穫機械や洗浄設備を動かすためには電気が必要になります。今回は関東の千葉エリアでしたが、昨年は九州と北海道が災害地域に指定されています。農業の未来を考えるとき、経済的な生産性も大切ですが、災害のリスクを社会的に避けるための工夫が必要だと切実に感じました。