インスタグラムで紹介したバラの花束のことを、地元紙の連載でも紹介することにした。ファションセンターしまむらの創業者、島村恒俊さんの誕生日は、3月8日の「ミモザの日」。10年間、個人的にこの日にバラを贈り続けてきた。電話口に出られて現在95歳の創業者は、体力・気力ともに元気だった。
「ミモザの日:うれしい出来事」『北羽新報』2021年3月24日号
文・小川孔輔(法政大学経営大学院教授)
3月8日は、「ミモザの日」です。国際的には、「女性の日」として知られています。1975年(国際婦人年)の3月8日に、国連がこの日を「国際婦人デー」と定め、国際連合事務総長が女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に対して呼びかける日となっています(「ウイキペディア」より)。
この時期、ヨーロッパを旅行すると、街角に咲いている黄色い花がミモザです。ミモザはは、黄色い房状の花を咲かせるマメ科アカシア属の総称です。日本でも春の花として、ミモザがブームになっています。日本人には聞きなれない物日かもしれなせんが、ヨーロッパの国々で、男性から女性へ花を贈るのがこの日です。
同じ欧州でも、フランスやイギリスでは、2月14日のバレンタインデーに、男性から女性にバラを贈る習慣があります。多くの国では、翌月の「女性の日」は、あらゆる種類の花をプレゼントし合うのですが、発祥の地であるイタリアでは、伝統的にミモザでこの日を祝います。男性から女性にミモザの束、またはミモザが入った花束をプレゼントするのです。
欧州は昨年から、日本以上に厳しいコロナ禍の1年を経験してきました。しかし、今年に入って、ミモザのブーケの取り扱い数は9%ほど増加しているそうです。困難な時ほど、花が癒しになるのだろうと思います。
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とはいえ、わが国ではまだあまり知られていない「ミモザの日」です。偶然なのですが、わたしは10年ほど前から、この日が誕生日のある方に花を贈り続けてきました。秋田県内には、「ファッションセンターしまむら」がたくさん出店していると思います。調べてみましたら、能代市の字下野に、「しまむら能代店」があることがわかりました。
実は、しまむらの創業者、島村恒俊(のぶとし)オーナーの誕生日が、ミモザの日なのです。今年は、誕生日の翌々日に、お礼の電話がかかってきました。ご本人から直接でした。今年95歳だそうです。
電話口からしっかりした声で、「いつも、ありがとうございます。埼玉県吉見町の“し・ま・む・ら”です。100歳まで生きますよ!」と。ご自身を「し・ま・む・ら」と歯切れよく話されました。はじめてお会いした時と変わりなく、お元気そうでびっくりしました。
2011年に、『しまむらとヤオコー』(小学館)を出版してから、3月8日の誕生日にバラの花束を贈り続けてきました。インタビューのため、ご自宅に3度ほどお伺いしたことがあります。埼玉県吉見町の池のほとりにご自宅があります。手入れが行き届いた立派なお庭には、多種多様なバラが植えられていました。バラがとてもお好きな方なのです。
今回は、わたしが都内に引っ越したこともあり、ブーケにメッセージカードを添えました。「島村恒俊様 お誕生日おめでとうございます。またコロナが明けたら、笑顔でお会いしましょう。わが家の住所が変わりました。小川より」。新しい住所と携帯の番号を書き加えておきました。
そうしたところ、携帯に電話が来たのでした。いつもは奥様から連絡がきます。お元気で長生きしてらっしゃいます。人生100年の時代ですね。大きな仕事を終えられた方は、やはり気力も体力も違う気がします。