庭の植物と昆虫で四季を楽しむため、しばらくは白井の家を売却しないことに

 32年間住み慣れた白井の家を離れて、葛飾区高砂に移り住むつもりでいる。昨年末に葛飾区に土地を購入。京成高砂駅から歩いて4分のところに、新築で三階建ての二世帯住宅を建てている。完成まであと一カ月弱。引っ越しが楽になったのは、自宅を売らないことにしたからだ。それには深いわけがある。

 しばらくこの家を売らないことにしたのは、庭と植物への愛着のためだ。わが家は、20年くらい前から、玄関に朝顔を植えている。というか、夏が近くなると、前年の種子が自然に芽を出してくる。つる性の植物だから、伸びたいだけ茎を延ばして、勝手にベランダを這い上がって、玄関ポーチに植えた植物に絡みつく。
 隣の家との境界の垣根や金網にも腕を伸ばす。夏が終わる今頃になると、そこかしこにきれいな花を咲かせる。自然淘汰を免れた朝顔は、どうやら三種類。花の大きさと花色で品種のちがいがわかる。濃い紫いろと通常の青色の朝顔は、通常の大きさ。薄い水色の朝顔は、小ぶりで可憐な花を咲かせる。
 時期が来ると勝手に種子をつけて、晩秋にはじけたタネが土に戻っていく。そんなわけで、最近ではタネを買ったことがない。
 そういえば、「野放し球根」(千葉県白子町に住んでいた斎藤さんの命名)も、おなじように毎春になると花を咲かせる。庭の隅っこから、ムスカリやスイセンが自然に芽を出して花を咲かせる。水仙は二種類。小柄な黄色と中背のクリーム色。
 そうそう、ミョウガやドクダミも、この庭のどこかの地中に根を張っているらしい。何かのお祝いで、あるいはお歳暮でいただアジサイは、いまや子孫も種族も増えて、南の庭を占拠している。テッセン(クレマチス)やどうだんつつじは、アジサイの生命力にはとうてい太刀打ちができない。主力は隅田の花火だが、梅雨の時期になると、その他の二種類も負けじと繁茂している。
 小さい庭だが、植物には楽園のようだ。わたしは虫害を気にしないから、農薬をいっさい散布しない。無農薬ガーデンだから、グレープフルーツの葉を食べた芋虫が、アゲハ蝶に羽化して飛んでくる。シャボン玉を飛ばしている孫娘のさらが、アゲハチョウとシャボンを吹いて競争している。
 裏庭では、セミの抜け殻が、ふつうに地面に落ちている。そのうえを、トカゲやヘビがちょこちょこ動き回るので、少しびっくりすることもある。もちろんカタツムリもナメクジもダンゴムシも、ふつうに地面をはいずりまわっている。彼らは、安納芋の葉っぱに穴をあけるのだが、それは気にしない。虫の食料になっているのだから、目をつむっている。
 ともかく、夏休みに孫たちが遊びに来ると、そうした庭の虫たちをみて大喜びをする。うちの孫たちは、全く虫を嫌がらない。そんなわけで、しばらくはこの家を売らないことにした。長年住んだ家の庭と植物への愛着のためである。
 いつかのブログで、ミョウガやアジサイの引っ越しについて、読者からアドバイスをいただいた。その後も、メールに返信していない。親切な読者には、とても申しわけないことをしてしまっている。引っ越しをとりやめたので、植物の移住プランを立てる必要がなくなってしまったからだ。
 そう決意したので、しばらくは高砂(ウイークデー)と白井(週末)の二重生活になる。わたしは、マラソンの長距離コースが確保されているため、かみさんは、土日の朝歩きのため。たぶん、夏休みの期間も、ここで過ごすことになるだろう。
 とはいえ、かみさんはうれしいそうだ。一カ月先には、40年ぶりで東京都民へ復帰できる。生まれ故郷の葛飾音頭が歌える?念願の通勤時間で30分の短縮が可能になる。体が弱ってきた年寄りには、大いなる朗報だろう。